週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

いよいよデジタル庁発足 キーマンに直撃1万字インタビュー

昭和の縦割りをレイヤー構造にする 村上敬亮統括官に聞いたデジタル庁の役割

2021年10月14日 10時00分更新

DXを進める日本企業はデジタル庁とどう付き合っていけばよいのか?

最後の質問は「われわれ民間企業はデジタル庁とどう付き合うべきなのか?」 官公庁や準公共と呼ばれるシステムがレイヤ構造化されるトランスフォーメーション、マイナンバーの整備や電子署名などのデジタル基盤の整備という話は理解できる。しかし、デジタル庁の掲げる「日本全体のDX」というのは、どのようなイメージなのだろうか? そして企業にとってデジタル庁はどんな存在になるのだろうか?

⼀言で言うと、「DXは⼀社ではできません。いっしょにやる相⼿を探しましょう」ということです。

こういう例がいいかなあ。兼業・副業って最近伸びていますよね。でも、兼業・副業が増えると、労務管理が困る。勤務時間をどうやって追いかけるか。労基署には誰が届け出を出すか。面倒な問題です。

今までは、終身雇用が主流だった。人口増加局面にあった昭和の時代では、良いものを作れば必ず普及するという信念に従って、がんばって三種の神器を作った。各家庭に普及した冷蔵庫を⾒て、「オレの人生も少しは社会に貢献できた」とつぶやきながら、一つの会社に奉仕するのが、昭和の生き方だった。それが当たり前だったから社会保険・雇用保険も、終身雇用を前提に、個人ではなく、企業がまとめて処理を代行しているわけです。

でも、兼業・副業で今は個人の動きがレイヤー化しているんです。そうなった瞬間に、縦割りの組織を前提とした人事管理システムがもはや機能しにくくなってくる。もはや大企業も、従業員の人生を一生面倒見るなんて言えない。そんな時代です。これは、米国の労働市場で1960~70年代に起きた変化と同じことです。

ここにDXの素地がある。労務管理のために会社同⼠が横でつながってもいいし、個人に伴⾛する新しい人材サービスが出てきてもいい。とにかく、いろんな可能性がある。こんなサービスを作るのはデジタル庁ではなく、もちろん市場だし、オーソライズするのは厚労省です。でも、こうした個人のレイヤー化を妨げるような社会や制度は変えなきゃいけないよね。その議論をリードし続けるのはデジタル庁の仕事だと思っています。

労働局だって、企業が個人の実務を代行することを前提に実務を組んでいるわけだから、いきなり組織をまたいだ複雑なオペレーションやれって言われても困ってしまう。他人に言われて失敗したら、まだ他人のせいだと言える。でも、⾃らそれを言い出して失敗したら、世の中から激しく非難されてしまう。行政官ってちゃんとやりきることに対して異常なまでに正義感を持っているので、とりあえずやってみようという話にはならない。

企業の労務管理だって同じです。兼業・副業が当たり前の時代になって、副業先の労務担当と組んだ方がいいのか、新しい人材サービスと組んだ方がいいのか、労務担当者レベルではわからない。だからDXの問題って、取引のデジタル化をとってみても、労務管理をとってみても、どのみち1社じゃ解決しないんです。「1社でできないのがDXです。誰と組んで、なにをしたいのか、ぜひデジタル庁にも今の悩みを教えてください」と。

僕らはその声を元に、この分野のDXがどの方向に進んでいくのか、所管省庁と一緒に必死に考え、対応の方向性が明らかになれば、どうすればいいかをしっかり発信していきたいと思います。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう