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データが貨幣のように流通する時代、信頼できる情報銀行のあり方は?

2021年07月19日 09時00分更新

今回のひとこと

「巨⼤IT企業は、ユーザーの性別、年齢、購買履歴などを、ユーザーの同意なく収集、分析し、広告などに利⽤して、収益をあげている。個人の同意なしに、パーソナルデータを収集すべきではない」

(三菱UFJ信託銀行の長島巌社長)

個人情報を企業に渡すことによる受益は?

 三菱UFJ信託銀行は、情報銀行サービス「Dprime」を開始した。情報銀行とは、パーソナルデータを管理、運用するサービスだ。

Dprime

 Dprimeでは、「本⼈情報」や「趣味、嗜好などのライフスタイル」、「⾏動履歴」、「資産情報」の4種類のパーソナルデータを集約して保管。個人ユーザーは、本⼈情報を預ける際には、免許証やパスポートによって本⼈確認を行い、情報の正確さを担保し、個人ユーザーの同意に基づき、オファーするデータ利用企業に提供する。

 個人ユーザーは、パーソナルデータ提供の対価として、企業から提供される新しい体験の機会や、自身に最適化された商品、サービスなどのギフトを受け取ることができる。

発表会の様子

 個人情報の取り扱いが厳格化されるなかで、金融機関が個人情報を、新たな価値として正しく扱う仕組みを提供。パーソナルデータを利用したい企業にとっては、個人が明確に同意した上で、安心してデータを利用できるようになる。

Dprimeの利用フロー

 三菱UFJ信託銀行の長島巌社長は、「インターネットやSNSの利用が当たり前になり、情報サービスを運営する巨⼤IT企業は、ユーザーの性別、年齢、購買履歴などを、ユーザーの同意なく収集、分析して、広告などに利⽤して、収益をあげている。個人の同意なしに、パーソナルデータを収集すべきではない」と断言。「Dprimeは、急速に進展するデジタル社会ならではの社会課題を解決すべく誕⽣したサービスである。パーソナルデータに関する様々な社会課題を解決できる」とする。

 その一方で、長島社長が指摘するのが、「現在の状況は、世の中にあふれるデータを、個⼈、企業の双⽅がうまく利活⽤できていない」という点だ。

 「個⼈は、自分のデータがどう活用されているのかという認識もなく、様々な形で利用されており、結果として、ターゲティング広告にへきえきしているという状況が生まれている。また、企業は、⾃社の商品、サービスが、必要なユーザーに的確にリーチできていないという課題を抱えている。とくに、優良な中小企業は、必要とされる大規模なプラットフォームを自ら構築できないため、大手ECサイトなどを利用し、そこにもコストが発生したり、ノウハウが活用できなかったりといった課題がある」

Dprimeのサービス概要

 Dprimeは、こうした課題の解決にもつながるという。

 「同意に基づいてパーソナルデータを企業に提供し、個人が新たな体験や自分に最適化した商品、サービスを受け取ることができる。情報の提供先を選んでコントロールしながら、最適な商品、サービスを受けたり、気に入った企業があれば、うまくマッチメイクして、商品やサービスの製造過程にも参加して、モノづくりに関わることも可能になると考えている」とする一方、「企業にとっては、真贋が怪しいデータを使うのではなく、しっかりとしたデータを活用できる。質の高いデータを使って、マーケティングができたり、ファンづくりにもつながる。ファンの声を集めたモノづくりも可能になる」とする。

 「Dprimeを通じて、個人と企業のマッチングの場づくりをしたい」といったように、情報銀行を起点にした新たな役割も担う考えだ。

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