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開発のTRIDENTが11兆円超を見こむ世界市場を視野に入れた資金調達を実施

500社超の企業が利用するモバイル・ウェブアプリ対応の国産AI自動テストツール「Magic Pod」

 複雑化するモバイル/ウェブアプリの開発において、バグチェックプロセスにかかる労力・時間の削減は、コスト面での課題のみならず、アプリケーションの品質向上においてクリティカルな課題となっている。

 株式会社TRIDENTは、そのような課題に対応したAI技術を活用した自動テストツール「Magic Pod」の開発・運営を行なっている。7月7日、同社は、STRIVEおよびAngel Bridgeを引受先とする第三者割当増資により3億円の資金調達を行なった。その目的やMagic Podの現状について、代表取締役である伊藤 望氏に話を伺った。

AI技術を活用したソフトウェアの自動テストツールMagic Pod

 TRIDENTは2012年に設立され、当初は他社製ソフトウェアを用いた自動テストのサポート業務を行なっていた。2017年から自社開発をした自動テストツールMagic Podの提供を開始し、すでに500社を超える企業に利用されている。

 同サービスの特徴は、ウェブだけでなく技術難易度の高いモバイルアプリにも適用可能な点だ。特にモバイル・ウェブ両方にサービスを展開している有力企業から高い評価を受けている。自動テストスクリプトがノーコードで作成でき、アップデート時のテストスクリプトのメンテナンスも支援してくれる点も、他社製品と比べて大きなアドバンテージとなっているという。

 テスト環境はクラウドに用意されており、端末にテストツールをインストールする必要はない。多種の端末を用意して、そのそれぞれで同じテストを繰り返す必要もないため、現場の負担も大幅に軽減される。

 「ウェブアプリ向けの自動テストツールは以前からあったし、モバイルアプリ向けのツールもいくつか出始めてはいるが、OS改修のたびに動かなくなったり、特定の機種では動かないなど、まだまだ成熟しているツールは少ない。また、クラウド型ではなくて端末にインストールしなくてはならないものが多い。(クラウド型で)簡単にセットアップできてAIがテストスクリプトの作成やメンテナンスの支援をしてくれるもので、なおかつモバイルもウェブも両方対応しているというツールは世界でも我々がオンリーワンだと自負している」(伊藤氏)

モバイルアプリとウェブアプリを共通のプラットフォームでテスト可能

 Magic Podを使ってモバイルアプリの自動テストを行なうプロセスを簡単に紹介しよう。まずクラウドに用意されているMagic PodプラットフォームにApp/Aptファイルをアップロードする。続いてUIをテストする画面をキャプチャすると、AIが画像を解析して自動的に入力フィールドやボタンなどのUIコンポーネントを抽出する。

 抽出されたUIコンポーネントをスクリプトエリアにドロップすると、関連したスクリプトを組める。各コンポーネントへの操作(文字列の入力やボタンのタップなど)を指定して実行ボタンを押すと、クラウド上のエミュレータでスクリプトが実行され、正しく動くかどうかが判定される。

スキャンによって抽出したコンポーネントをドラッグアンドドロップでスクリプト作成

テスト結果

 アプリのバージョンアップの際には、たとえばボタンが「登録」から「この内容で登録」に変更されるなど、機能自体は変わらないが名称だけ変更される、といった小さな修正が数多く発生する。人手でテストスクリプトを作成していると、それらをひとつひとつ修正していかなくてはならないが、Magic Podではスクリプト作成時と実行時のUIツリーを比較して、類似度が高い要素があれば自動的にスクリプトを修正してくれる。

 もちろん、異なる種類のOSや端末に対して同時並行でのテスト実行もできる。設定したスケジュールに沿って繰返しテストもできるため、リリース前だけでなく本番環境の稼働監視にも応用可能だ。夜間、本番環境でMagic Podを自動実行させておけば、エラーが発生したときにメール等で担当者へ通知させるような使い方もある。

ソフトウェアテストの世界市場は拡大している

 モバイルアプリやウェブアプリのテスト自動化の市場規模は年々拡大の一途をたどっている。たとえば2017年にグローバルで3.2兆円、日本国内で1600億円だった市場が、2025年にはグローバルで11.6兆円、日本でも4900億円に成長するといわれている。ひとつにはビジネスサイクルの高速化によってサービスを毎月・毎週のように更新することが常態化したためだ。このような開発スタイルだと、リリースの度にテストを手作業でやることは難しくなる。

 また、コロナ禍によって加速した世界的なデジタルシフトも要因の1つとなっている。すべてをネット上で行なうようになると、その上で動くアプリの数が増大し、必然的にテストの量も増大する。伊藤氏によれば現在は開発されているアプリの90%が手作業によるテストを受けているとのことだが、もはやそのような開発スタイルではユーザーニーズに応えることはできなくなるだろう。

 TIRDENTは開発体制強化のために、今回合計3億円の資金調達を行なった。この資金はエンジニアやデザイナなど開発リソースの増強などに用いられるが、同時に広報やバックオフィス部門などの強化も狙っている。

 「資金調達をしたからにはIPOなども考えるが、まずMagic Podをグローバルに使えるツールにしていきたいと思っている。GitHubやSlackのような世界中のエンジニアが使って当たり前のインフラのようになっているものがある。そういったツールを日本からつくっていきたい。数年はユーザーフィードバックに対応して機能の拡大や成熟を図っていくが、その後はAIの強化などプラスアルファに力を入れていく。そうなればグローバルにも打って出やすいのではないかと思う」(伊藤氏)

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