インターネットとSORACOMプラットフォームをつなぐ「SORACOM Arc」
最後を締めたのはシアトルから登壇したソラコムCTOの安川健太氏。安川氏は、SORACOMプラットフォームの最新情報と新サービスを披露した。
ソラコムはこれまで6年に渡ってIoTのシステム構築に必要な通信とクラウドのサービスを拡充してきた。LTEや5GのセルラーやSigfoxのようなLPWAを用いたSORACOM AirでSORACOMのクラウドサービスにつなぎ込み、そこからユーザーシステムに閉域網でつないだり、パブリッククラウドにデータを送り込むことも可能になっている。また、データの保存や可視化、セキュアなリモートアクセス、パケットキャプチャなどを実現するサービスも提供している。これらのサービスはすでに18種類におよぶ。
しかし、これら便利なSORACOMのサービスを使っているユーザーからは、「WiFiや有線で接続しているデバイスでもリモートアクセスししたい」「普段はLTEだけど、WiFiを使ってデータ保存・蓄積したい」「LTE圏外のため、SORACOMクラウドサービスが使えない」といった声が上がっていたという。
これはSORACOMのクラウドサービスが、あくまでSORACOM Airという通信サービスを介して提供されているが故の課題だった。今まではSORACOM Air外からの通信は認証も通信路の安全性も保障されていなかったため、WiFiや有線のインターネット接続ではSORACOMのプラットフォームサービスは利用できなかったわけだ。
こうした課題を解消し、どんな通信回線上でもSORACOMプラットフォームにつながるセキュアなリンクを作れるのが新たに発表された「SORACOM Arc」だ。
気体放電現象であるアーク放電にちなんで付けられたSORACOM Arcは、ソラコム側から発行された仮想SIMをデバイスに設定することで「WireGuard」を用いたVPNを構築できるというサービスだ。仮想SIMはSORACOM SIMにひも付けることで、各種サービスを透過的に利用できる。たとえば、セルラー回線経由で行なっていたデータ通信をWiFiに変更しても、同一SIMの送信元として保存することができる。さらにSORACOM Kryptonというブートストラップサービスを活用することで、仮想SIMは自動発行とプロビジョニングにも対応する。すべてインターネット越しに利用でき、SIMにアクセスできればモデムのないデバイスでも利用できる。
安川氏はデモ動画を披露。soratun bootstrapというコマンドツールで仮想SIMを取得し、デバイスの接続をLTEからWiFiに切り替えても、同じSIM IDでデータが保存される様子が披露された。
SORACOM Arcの料金は初期費用が仮想SIM発行ごとに55円で、基本料は仮想SIMあたり月額88円(通信量1GBを含む)。SORACOM Air SIMにひも付けると、月額55円となる。データ通信料金は1GBあたり22円となっている。
SORACOM Arcは創業以来、セルラー中心のコネクティビティ基盤となっていたSORACOM Airと同じレイヤに位置する新しいサービスになる。やはりWiFiや有線、衛星通信でも、VPNを介してSORACOMプラットフォームを利用できるという点では接続性を選ばないというメリットが大きい。一方で、セキュリティを担保した接続の仕組みを用意することで、SORACOMプラットフォームがインターネット側に開放されたという言い方もできるため、かなりインパクトのあるサービスと言える。「2021年はソラコムがコネクティビティアグノスティックとなり、あらゆるネットワークから接続可能なIoTプラットフォームへと進化します」と安川氏はアピールした。
最後、玉川氏はオンラインでのSORACOMユーザーグループイベントを告知し、「日本から世界から、たくさんのIoTプレイヤーが生まれますように」というソラコムの願いを改めてアピールして、90分の基調講演を終えた。SORACOM Discovery 2021は24日も行なわれる。
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