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メルカリ、LUUP、ライナフ、日本瓦斯のSORACOM活用とは?

ソラコムが最新事例を披露 新サービス「SORACOM Arc」の破壊力

2021年06月24日 11時00分更新

中核テクノロジーであるSIMはますます安く、ますます便利に

 続いてソラコムのグローバルプラットフォームについて玉川氏が語る。ガートナーのマジッククアドラントに入り、グローバルプレイヤーとしてスタートラインに立ったソラコムだが、創業時に掲げた5つの戦略はいまも変わらない。今回はこのうち「運用コストを削減して、顧客に還元」や「顧客のニーズに基づいた迅速なサービス開発」に沿った施策を披露した。

 現在、主力サービスとなるSORACOM Air forセルラーは、グローバル向けのIoT SIMと日本国内向けSIMが用意されており、後者はさらにNTTドコモ回線の「plan-D」、KDDI LTE回線の「plan-K」、KDDI LTE-M回線の「plan-KM1」などに分かれている。その他、約45円/月で使える小容量向けの「plan01s-LDV」やカメラ動画のアップロードなどに対応した「plan-DU」なども顧客の声に応える形で提供されている。

SORACOM Air for セルラーのラインナップ

 NTTドコモ回線を用いたplan-Dも毎年のように改善や初期費用の引き下げが行なわれてきたが、今回新たに「plan-D D-300MB」が発表された。サービス概要は、これまでのplan-Dと同じだが、基本料330円/月・回線(税込)にあらかじめ300MBのデータ通信量を込んでいる(それ以降は110円/500MB)。しかも、利用開始まで最大2ヶ月は無料。既存のplan-DユーザーもコンソールやAPIから変更できるという。

plan-D D-300MBを発表

 グローバル向けのSORACOM IoT SIMは現在147カ国、256キャリアまでカバレッジを拡大した。このうちLTEは138キャリアに対応。なお、日本ではNTTドコモに加え、ソフトバンクも対応しているという。IoT SIMを用いた事例も増えており、発電プラントの遠隔監視に利用しているIHI、アジアのエレベーターの環境情報取得に利用しているフジテックといった日本企業の海外事例のみならず、家族向けトラッカーのPebblebeeやコンクリートの最適化を行なうEXACT Technologiesなど海外顧客の事例も続々増えているという。

 昨年は無線経由でサブスクリプション(契約回線)を追加できるサブスクリプションコンテナ機能を追加。また、KDDIのフルMVNOに対応し、4G LTEと5Gに対応した日本向けのplanX2も発表した。今回、サブスクリプションコンテナでの基本料金を見直し、サブスクリプションを追加した場合には元々あったプライマリ回線の基本料金を非課金にした。

 同社のコアテクノロジーとも言えるAir SIMは年々進化を遂げている。最近は従来のIoT SIMの1/4となるエコIoT SIMを開発し、プラスチックや梱包資材を削減している。また、eSIMの次として期待されているiSIM(integrated SIM)への取り組みも進めている。iSIMはセルラーのSoC(System on Chip)の中にSIMの機能を搭載することで、SIMやeSIMと同じ機能とセキュリティをワンチップ化している。ソラコムはArmグループでiSIMのOSを開発しているKigenと、Altairブランドでチップセットを開発するソニーと連携し、iSIMの実証実験に成功しているという。

ソニー、Kigen、ソラコムの3社でiSIMの実証実験も成功

再配達問題を解消する「置き配」に挑むライナフの取り組み

 ソラコムの利用を支えるスタートアップコミュニティから登壇したのが、スマートロックを開発しているライナフ代表取締役の滝沢潔氏になる。

ライナフ 代表取締役 滝沢潔氏

 ライナフが解決を目指している課題は再配達問題だ。「宅配クライシス」という言葉が誌面をにぎわせて以降4年が立ったが、宅配便の取り扱い荷物の個数は順調に増え、今年は大台の50億個を超える可能性があるという。しかし、このうち再配達の割合は約2割。50億個で換算すると、10億個は一度の配達で届かないことになる。そして、年間約9万人分の労働力が再配達に消費されているという。

 この再配達の決め手となるのが、玄関の前など指定された場所に荷物を置いて届ける「置き配」だ。しかし、オートロック付きのマンションはそもそも玄関前にたどり着くことができない。もちろん宅配ボックスという選択肢もあるが、そもそも満杯になることが多く、設置率も5割を切っている。

オートロック付きのマンションでは玄関前にたどり着けない

 この課題に対してライナフは「NinjaEntrance」というスマートロックを後付けで設置することでこの問題を解決できるという。受け取り主が置き配を指定すると、宅配事業者には一時的な解錠情報が付与される。配達員はスマホで自らエントランスを解錠し、ドア前に荷物を配達できるという仕組みだ。この「置き配 with ライナフ」という取り組みを、工事費、デバイス代金、通信費、ランニングまで含めて、すべてを無料で提供するというのも興味深い。

ライナフが提供する置き配の仕組み

 置き配はメリットも大きい。入居者にとってみれば、非対面で荷物の受け渡しができ、宅配ボックスがいっぱいでも再配達にならない。配達でもっとも多い水のような重いモノも部屋の前まで届けてくれる。不動産の管理会社もオートロックを遠隔操作できるので、現地に鍵を置かずに済むし、予約システムと連携すれば内覧も可能になる。もちろん宅配事業者はコストのかかる再配達がなくなるため、サービスの原資を提供しても、十分な見返りを得られるという。

 利用のためにはAmazon専用の「Key for Business」とヤマト運輸に対応するNinjaEntranceの2台のデバイスの設置が必要になる。2017年から発売しているライナフのNinjaEntranceでは既存の物件のほぼ100%に取り付けでき、状態監視がやりやすく、セキュリティも強固なSORACOM Airを用いている。「Amazonとつないでくれたのも実はソラコムさん。モノとモノだけではなく、人や会社とつないでくれたのでとても感謝している」と滝沢氏は締めた。

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