2021年6月1日、NVIDIAはCOMPUTEX 2021において(オンラインの)キーノートスピーチを開催した。発表内容の半分は同社が力を入れるエンタープライズ寄りのAI関連だったが、今この記事を見ている人が気になるのは、新たなGPUの方だろう。そこで本稿では、発表内容からGeForce関連の内容を抜粋しまとめてみることにしたい。
“ゲーマーの”フラッグシップGPU「GeForce RTX 3080 Ti」
今回NVIDIAは2種類のRTX 30シリーズに属するGeForceを投入した。いずれも既存のAmpereアーキテクチャーを採用したモデルだ。
まず1つめは“ゲーマーの”フラッグシップと評された「GeForce RTX 3080 Ti」だ。RTX 30シリーズのフラッグシップといえばRTX 3090だが、これは8Kゲーミングのほか、8K映像編集を志すクリエイター等にも向けたGPU。価格も浮世離れしていたことは確かだ(特に最近の値上がりではそれが顕著)。これに対しRTX 3080 Tiは、4Kゲーミングに照準を合わせた、より現実的なフラッグシップとなる。
発売は6月3日22時〜(実質6月4日以降)で、北米予想価格は1199ドル以上、NVIDIAによる国内予想価格は17万5800円「以上」となる。ただ昨今の情勢を考えると、この値段は単なる気休めでしかないことは明らかだろう。
RTX 3080 TiのスペックはCUDAコア数10240基(SM80基)、メモリーバス384bitでGDDR6Xを12GB搭載する。384bit幅という点から分かる通り、GA102ベースのRTX 3090をほんの少しスケールダウンしたものと考えてよいだろう。
人気のRTX 3070の上位版「RTX 3070 Ti」
そしてもう1つ、RTX 3070と3080の中間に位置するモデルとして「GeForce RTX 3070 Ti」も発表された。価格は北米予想価格で599ドル、国内予想価格は8万9980円となり、RTX 3080 Tiよりも1週間遅く6月10日22時(実質6月11日以降)に販売が解禁される。
RTX 3070 Tiの位置付けについては具体的なターゲットは示されたなかったが、RTX 3070よりも4%程度CUDAコアが増え、GDDR6Xメモリーで8GBが搭載される。WQHD〜4Kあたりでより高画質設定で遊びたいが、RTX 3070ではやや力不足かもと考える人向けの製品だ。
※掲載当初、GeForce RTX 3070 Tiの一部スペックを誤って記載していました。訂正してお詫びいたします。
気になる仮想通貨マイニング対策(ハッシュレートリミッター)の話題は出なかったが、RTX 3080〜3060 TiにLHR(Lite Hash Rate)版が出ていることを考えると、RTX 3080 Tiおよび3070 Tiもに何らかの対策が施されていることは確実だろう。
レイトレーシングやDLSS対応のゲームが拡大
NVIDIAはこうしたイベントがあるたびにレイトレーシングやDLSS対応のタイトルが増加したことをアピールしているが、今回はいくつか興味深いタイトルの話もしておこう。
一番の注目は「Rainbow Six Siege」がReflexに続きDLSSにも対応することだ。Rainbow Six Siegeのゲームエンジンは軽く、DLSSなんか必要ないだろうと思うかもしれない。事実RTX 3060であればフルHDで200fps以上は出てしまうゲームだが、GPUパワーの限られているゲーミングノートPCではDLSSが輝くだろう。あるいは、4Kでもシステムレイテンシーを低くキープしつつ、画質を保ちたいプレイヤー向けの施策といえる。
DLSSはさらに人気タイトル「Red Dead Redemption 2」にも採用された。これについても具体的な実装期日は明らかにされなかったが、描画が超絶に重いゲームだけに楽しみだ。
ただ、NVIDIAの発表のやや前にAMDが発表した「FidelityFX Super Resolution(FSR)」は、DLSSのようにTensorコアを必要としないアップスケーリング技術であり、DLSSの対抗馬と目されている。GTX 1060でも動作してしまうFSRが今後より広く受け入れられれば、DLSSの立ち位置も危うくなる。今後のNVIDIAの動きに注目したい。
気になるRTX 3080 TiやRTX 3070 Tiのレビューも、公開の許しが出次第ASCII.jpで公開する予定なので楽しみにして欲しい。