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いい音楽をさりげなく楽しめる、粋な組み合わせ

3万円で買えるHi-Fi、CAMBRIDGE AXC25/AXA25のさりげなさ

2021年05月26日 13時00分更新

このシステムでは余計なことは考えず、音楽だけを存分に楽しみたい

 少し話が逸れるが、昔ある人に「どうしたら音感がつけられるか」と聞いたら、「どちらか選ぶなら、絶対音感よりも歌心が欲しい」と返されたことがあった。ちょっと深い。歌は上手い/下手以前に、伝わるか/伝わらないかという価値基準があるように思う。

 その意味ではこのコンポには歌心がある。この曲をこんな風に鳴らせたらカッコいいだろうなぁという期待を1~2割増しで返してくれる感じがするのだ。それは、高域や低域の歪みが少ないとか、S/N比がいいといった性能の良さとは少し違う。生活している環境にうまくなじんだ、さりげない「いい音」を出してみたいと思わせる。コンパクトスピーカーと組み合わせて、あまり音量は上げずに知的で質のいい音楽を流せたら素敵だ。

フロントには3.5mmミニジャックがあり、携帯プレーヤなどを接続できる。

背面端子。下がCDで上がアンプ。右端にあるのはUSB端子で、携帯プレーヤーに給電するためのもののようだ。5V/500mA=2.5W出力となる。

よく見るとシルク印刷の文字は上側が反転している。上から覗き込んだ際にどの端子かが分かるようにしているのだろう。文字はもう少し大きい方が見やすいが、面白い配慮だ。

 ローエンド機ということで、スペックはかなり割り切っている。例えばCDプレーヤーは本当にCDを再生する機能しかない。デジタル出力やUSB再生機能などはもちろん、ヘッドホン端子もない。アンプのほうも4系統のアナログ入力とLINE OUT(懐かしくもREC OUTとある)があって、フロントにBASS/TREBLEやバランス(左右の音量)を調節するためのツマミを持つオーソドックスな構成。ヘッドホンアンプやフォノアンプなどはなく、リモコン操作すら不可だ。出力も25W(8Ω)と最近の水準からしたら控えめと言える。

 でも、それでいいと思う。もしこれ以上が欲しいというのなら、上位モデルもある。この製品を使うのは、リビングにも書斎にも違和感なく置けて、ほとんどの人が満足できちゃうような上質なサウンドを、ミニマムの出費で手に入れたいという人なのだ。この音がこの価格で聴けるという点に得がたい価値があると思う。

電源ケーブルは着脱可能、ブタバナ(メガネ型)の端子になっている。

 控えめな出力と書いたが、Royan Menuet II(4Ωで感度86dB)を鳴らす分には、9時ぐらいのボリューム位置でも十分すぎる音量だし、アナログボリュームを絞って使うと左右の音量差が気になる(ギャングエラーが出る)という面もある。個体差は多少あるかもしれないが、テスターで軽くはかってみたところ小音量(8~9時あたりに絞ったポジション)でも左右の電圧差はだいぶ抑えられている。聴感上もボーカルが中央にしっかりと定位していた。

この機種でオーディオを始められる人はうらやましい

 Hi-Fiコンポというと、ファイル再生が主流になっていて、いまさらCDだけでは……という人もいるかもしれない。ただ、オーディオ機器でいい音を求めること自体がマニアックな趣味になっている昨今、学生でも1ヵ月程度バイトすれば買えてしまう程度の価格で、ホンモノ感が得られる機種は貴重だ。こういう機種からオーディオの体験が始められる人は幸せだと思う。ふだんはポータブル再生が中心という人は、ヘッドホン出力からのアナログ接続にはなるが、ハイレゾプレーヤーとの組み合わせを検討してもいいだろう。

 たっぷりとしながら、高域が立ってクールさやクリアさを感じさせる表現は、最近珍しくなったWolfson DAC搭載機の持ち味とも言える。低域はおおらかで量感があり、中音域は滑らかだがよく分離して、音楽の聴きたい部分を曖昧にしない。使っているうちに、学生時代、プロの演奏をより詳しく確かめるためにCDやテープを聞き続けたときの記憶がよみがえってきた。せっかくコンポを買ったのに、残留ノイズやら歪みやらで細かいところが分からずに歯がゆい経験をした。その当時にこういう機種に出会えていたら……と考えると、うらやましい限りだ。

 AXC25/AXA25は、従来機の「Topaz AM5」「Topaz CD5」と比較して、価格が上がってしまってはいるが、依然として、音質と価格のバランスの秀逸さを感じる機種となっている。Hi-Fiオーディオの入り口に立つ人から、一周まわって大げさなものよりもシンプルなシステムで音楽を純粋に楽しみたいという人に広く勧められる機種だと思う。ケンブリッジオーディオ自身も、数万円と安価でコンパクトなスピーカーを出しているし、中古なども選択肢に入れれば10万円程度で本格的なサウンドを手に入れることも難しくないだろう。

 スピーカーもあまり気張らず、雰囲気や音色が自分に合っているものを選ぶといい。音楽を聴くことが好きで、肩ひじ張らずにその世界に浸りたいという人に合った、粋を感じるオーディオシステムだ。

[SPEC] AXA25●出力:25W(8Ω)、THD:0.015%未満(1kHz、定格出力の80%)、0.15%未満(20Hz~20kHz)、周波数特性(-3dB):10Hz~30kHz、S/N比:82dB(無負荷)、入力インピーダンス:32kΩ、ダンピングファクター:100未満、最大電力消費:180W、本体サイズ:幅430×奥行き340×高さ83mm、重さ:5.1㎏

[SPEC] AXC25●DAC:Wolfson WM8524、フィルター:双極性バターワースフィルター、周波数特性(±0.4dB):20Hz~20kHz、THD:0.006%未満(1kHz、0dBFs)0.015%未満(1kHz、-10dBFs)、S/N比:93dB以上(A加重特性)、クロストーク:-95dB以下(1kHz)、出力インピーダンス:50Ω未満、最大消費電力:15W、サイズ:幅430×奥行き305×高さ75mm、重さ:4.3㎏

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