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利用対象外の小学生が試みている場合も

子どもの死亡事故が多発、TikTokチャレンジ動画の危険性

2021年06月01日 09時00分更新

SNSへの投稿動画撮影で死亡事故

 2021年5月、TikTokに投稿しようと拳銃自殺の真似をする動画を撮影中、実弾入りと知らずに引き金を引いて頭を撃ち、パキスタンの男性(19)が死亡した。男性は8000人以上のフォロワーを抱え、600本以上の動画を投稿していたという。

 同じくパキスタンでは2021年1月に、線路でTikTokに投稿するための動画を撮影中、少年(18)が列車と衝突して死亡している。なぜTikTok動画撮影中にこのような死亡事故が続いているのだろうか。

SNSに投稿されるチャレンジ動画には危険行為も含まれている

人気集めのために無謀なチャレンジを試みる若者も

 「チャレンジ動画は楽しいし、挑戦しやすい。見てもらいやすいのもいい」と、ある女子中学生は言う。

 TikTokではもともと、「ハッシュタグチャレンジ」という文化がある。ハッシュタグチャレンジとは、TikTok側で用意した音楽や振り付けを使って動画を撮影し、特定のハッシュタグを付けて投稿する広告キャンペーンのことだ。

 それがいつしか、YouTubeなどでも流行した「チャレンジ系動画」(挑戦しがいのある行為を撮影した動画)と組み合わさってしまい、その結果、危険行為の撮影で死亡する事故が相次いでいるのだ。

 「ブラックアウトチャレンジ(失神チャレンジ)」と呼ばれる、気を失うまで自分の首を絞めて陶酔感を味わうチャレンジがある。このチャレンジ動画を撮影中、イタリア・パレルモの少女(10)が2021年1月に、米コロラド州の少年(12)は2021年4月にそれぞれ亡くなっている。

 2020年8月には、米オクラホマ州の少女(15)が、TikTokでベナドリルという市販薬を大量に飲んで幻覚を楽しむ「ベナドリルチャレンジ」に参加し、過剰摂取(オーバードーズ)により死亡している。

 TikTokでは、AIによってユーザーの好みに合う動画が表示されるようになっており、他のSNSよりも「いいね」やフォロワーが集めやすくなっている。そこで『もっと「いいね」やフォロワーを集めたい』という思いが募り、投稿動画が過激化していく傾向にある。結果、子どもが危険行為やチャレンジを試みて事故が増えてしまっているのだ。

 保護者は、子どもがこのような危険行為に手を出していないか見守り、指導する必要がある。また、TikTokの利用規約には「本サービスは、13歳以上の方のみが利用できるものとします」と記されているが、実際は日本の小学生の間でも流行中だ。

 また前述の通り、チャレンジ系動画にまつわる事故は対象年齢外の子どもが起こしている事例もあるため、対象年齢外の子どもが利用していないかも確認する必要があるだろう。

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著者紹介:高橋暁子
 ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki

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