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Honda eのドラッグレース仕様「e-DRAG」とN-ONE RSのヒルクライム仕様「K-CLIMB」に衝撃!

2021年04月19日 15時00分更新

ホンダアクセスがカスタマイズしたHonda eとN-ONE RS。いずれもレース参加を視野にいれて開発しているというから凄い!

 毎年1月に開催されている世界最大規模のカスタムカーの祭典「東京オートサロン」。残念ながら今年の東京オートサロンは集客イベントとしてのリアル会場開催は中止され、ネット開催のみで行なわれました。本来なら会場で展示される予定だったカスタムカーの中に興味深いクルマを見つけたので、取材しました!

オートサロンでコンセプトモデルを展示。その後、実際に販売に至ったS660 NeoClassic

 そのカスタムカーを制作したのは、Hondaの純正アクセサリーメーカーであるホンダアクセス。同社の展示は「S660 NeoClassic」や「S2000 20thAniversary」など、カスタマイズによってクルマに新しい価値を与えて、より魅力度を増したものばかりで、毎年多くの注目を集めています。

Honda e ドラッグレース仕様「e-DRAG」

ヒルクライム仕様へとカスタマイズされたN-ONE RS「K-CLIMB」

 当初、東京オートサロンに展示する予定だったクルマは、Honda eとN-ONE RSをベースにした2台。いずれもモータースポーツ参戦を真面目に見据えて開発(実は現在も開発中)しているというから、クルマ好きとしては興味を抱かずにはいられません。早速、企画担当者にお話を伺いました。

 「昨年のオートサロン2020で、私たちは昔のシビックをベースにしたコンセプトカーを出しました。評判は良かったのですが、走ることができない車両なので、残念に思われる方が多かったんです。ですので、今年はしっかり動く車両を作ろうというところからスタートしました。また、今までスポーツ系だけではなく、ファミリー向けなど幅広いクルマを展示していたのですが、オートサロンに足を運ばれる方は、スポーツやチューニングに目を向けられている方が多いので、その方に向けたクルマを仕立てようと考えました」とのこと。さすがホンダアクセス、わかっていらっしゃいます!

オートサロン2020の会場で行なわれたモータースポーツ体制発表会の様子

 「その中で、Honda側は例年オートサロンの会場でモータースポーツの体制発表会を行ない、F1やGTカーを展示するなど、サーキットでのモータースポーツ要素を全面に押し出しています。その中で、私たちが同じようにスポーツ系を出す場合、同じサーキット系を出しても面白くないと考えました。ですので、もう少しお客様に寄った草レース的なものでも、Hondaモータースポーツファンの方にも興味を持ってもらえるのではないか? と考えました」。夢あるコンセプトカーも魅力的ですが、このような消費者目線でちょっと頑張れば手が届くカスタマイズの提案は大歓迎! その車両を所有していなくても「こんなカスタムができるんだ」とわかるのはうれしいですし、それがホンダアクセスという純正用品メーカーが提案されるところに、大きな価値があると思うのは私だけでしょうか?

RR+モーター=ドラッグレース
「e-DRAG」

Honda eドラッグレース仕様「e-DRAG」

 そんな彼らが作ったHonda eをベースにしたe-DRAGから紹介します。こちらはドラッグレース参戦を目指して開発を進めている車両でし。実は、筆者はこの取材の直前に別の取材でHonda eの開発責任者である一瀬智史氏と会っていたのですが「この後、ホンダアクセスのHonda eの取材をするんですよ」と伝えたところ「あれ乗ってみたいんですよ! 担当の方に一瀬が乗りたがっていたと伝えてください」との言付けを頼まれていました。そんな開発責任者も気になるHonda eカスタムとは一体? 取材の道中、ずーっと気になっていました。

Honda eドラッグレース仕様「e-DRAG」

Honda eドラッグレース仕様「e-DRAG」

Honda eドラッグレース仕様「e-DRAG」

 パッと見たところ何も変わっていないのですが、開発者によると「Honda eはリアモーター・リアドライブというレイアウトと、モーター駆動ですから一瞬でトルクが立ち上がります。これはドラッグレースに向いていると思い開発を始めました」とのこと。にしても、ドラッグレースとは……。「実は個人的にドラッグレースに参加していまして」と自身の事を語りだしてから、ここまでは実にオトナの対応だった担当者は豹変。話を聞いているこちらが火傷するほど、彼らのクルマ好きが伝わってくる話が次から次へと出てくるではありませんか。

Honda eドラッグレース仕様「e-DRAG」のフロントカウルを取り外したところ

ドライカーボン製フロントマスク。ボンネットやリアバンパーを一体化されており、ここまでやるか?のクオリティに驚愕!

フロントカウルと車体とは、スナップで取り付けられる。写真はボディー側の取り付け部

フロントカウルを取り外すスタッフ達。一人で運べる位に軽量であるが、取り付けには慎重を期す

ウインドウは全てアクリル製に変更。リベット留めが実にレーシー

ドアの開閉機構部

天井もカーボン製に変更されている

ドアの取り付け部分からカーボン外装を見る。あまりの薄さに驚く

唯一カーボン化されていないCピラー部。レタリングはどこか電子回路基盤のパターンを思い起こさせる

 担当者のレース参戦経験から、こうした方が望ましいというポイントで、手を加えたとのこと。まず必須である軽量化は、Cピラーを除いて外装をフルカーボン化。窓もアクリル製に変えるなど、レーシングカーでよく見られる手法が取り入れられています。中でもフロントカウルはバンパーを含めてカーボン一体成型で、一人で運べる軽さ! コンセプトカーとはいえ、ここまでやるか? といい意味で呆れてしまいます。

Honda eドラッグレース仕様「e-DRAG」の室内。Honda eの特徴であるインパネ類はあえて残されている

後席の様子。内装は全て剥がされた上でロールゲージが取り付けられている

シャシーに直接取り付けられているシートベルト取り付け部

リアサスペンションの取り付け部

ドアはカーボン製で軽量

シートはKERKEY製で2座用意されていた

 室内は当然ドンガラで「Honda eは、とりあえずここまでドンガラにできるという参考になるのでは?」と担当者は笑います。内装をはぎ取るだけに飽き足らず、パワーステアリング機構を取り外して重ステに。低速状態で動かすのに相当苦労されていました。気になる軽量化の恩恵ですが、実際の計測はこれからになりますが、おそらく300kg近い軽量化を達成しているのでは? とのこと。もともと1500kgのクルマですので、1200kg台になったというわけです。

残された電動開閉式充電ポート

カメラミラーはそのまま活かされている

 興味深いのは、外装をフルカーボン化するほど手を加えていながら、電動で開閉する充電ポートやカメラミラーといった部分を残している点。理由を尋ねると「ここを取ってしまったら、Honda eらしさがなくなってしまいますからね」だそうで、室内のLCDまわりも、そのまま活かされています。

初代NSX TYPE Rがフロント側に採用していた17×7JJ鍛造アルミホイールを前後に装着

リアタイヤは、ドラッグレースの世界で定評のあるM&Hレースマスターのドラッグレーシング・スリックを装着。スタートの直前に前側のブレーキをロックし、リアタイヤを意図的にホイールスピンさせて温度を高め、路面との密着性を高めるためのラインロックも装備する

 カーボンの外観に目が惹かれますが、ホイールも純正とは異なるもの。これがなんと初代NSX TYPE Rのフロントホイールというから驚き。しかももともと白だったものをグレーへと変更。貴重なパーツなのにもったいないなぁと内心思ったのですが、「そこはHondaの部品でやりたかったですからね」と担当者はニヤリと笑います。

フロントサスペンションまわりの様子

旧型シビックのサスペンションを参考に、直進安定性を高めるため、ワンオフのサスペンションに変更

リアのサスペンションまわりの様子

アームはフルピロボール化されていた

 残念ながら動力関係には一切手を加えていないそうで、モーター出力はそのままなのですが、足はかなりモディファイが加えられ、なんとフルピロ化したほか、ロアーアームを新規設計するコダワリっぷり。HKSの車高調まで取り付けられていました。「開発にあたってHKSに協力いただきました」とのことなのですが、ホンダアクセスにはModuloブランドでサスペンションを販売しているのになぜ!?

 「僕たちは皆さまが思われているほど、他社のクルマやパーツに触れる機会が少ないんですよ。その一方で、実際の製品開発をする上で、他社の製品に触れるのは大切なことだと思っています。ですので今回は、交流も含めてHKSに協力をお願いしました」なのだそう。

 交流という意味では、コロナ禍によりコミュニケーションには苦労された様子。また車両の入手が予定より遅かったとのこと。Honda eは想像を超える人気があるらしく、メーカーだからといってすぐに手に入れることはできないようです。

 さて、実際に走行して何秒出たのか、というのが気になるところですが「実はいまだセッティングとかも出していない状態で。今後足回りのセッティングを兼ねた実走テストをし、結果がよければレースにも出たいと考えています」とのこと。もしレース参戦することがあれば、ぜひ応援しに行きたいと思います。「今回得た知見は、今後の商品開発にフィードバックできると思っています。ご期待ください」と、最後だけはオトナの対応の担当者。ですがすぐに「電動車って、トルクがすぐに立ち上がりますし、床面にバッテリーがある=重心が低いですから、自然とスポーツカーの要素が強くなるんですよね。今回改めてそのことを実感しました」と、すぐにクルマ好きの顔に戻られたのが印象的でした。

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