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サービスに注力する方針

テレワークとGIGAスクール背景にレノボが躍進、決め手は調達力?

2021年03月29日 09時00分更新

調達力の差がシェアの伸びを決めた

 実は、こうした施策の実行において、レノボ・ジャパンの調達力が大きく発揮された点が見逃せない。現在、世界的にPC需要が盛り上がっており、日本の市場に部品や完成品をどれだけ持ってこられるかが国内シェアに大きく影響している。2020年10~12月に日本HPやデルが失速したのに対して、レノボ・ジャパンが大きくシェアを伸ばしたのは、調達力の差があったといえる。

 2021年1月以降も、国内PC市場におけるレノボ・ジャパンの勢いは続いており、競合他社の動きや関係者の声を聞くと、同社は、2020年度(2020年4月~2021年3月)の年間トップシェアの座を、ほぼ手中に収めたといってよさそうだ。

 2021年4月からはじまる同社2021年度においても、ハードウェアビジネスは、同社にとって重要な意味を持つが、それに加えて、新たな一歩を踏み出そうとしている。

 ベネット社長は、「2020年度は、ハードウェア事業によって、新型コロナの影響で困っている企業や学校を支え、ビジネス成長を遂げた。2021年度は、ハードウェアに加えて、サービスの強化を図ることになる。本気でサービスに取り組む」と宣言する。

 具体的には、日本におけるサービス事業の売上げ比率を、2021年度に15%にまで高める。

 グローバルでは、同社2020年度第3四半期で、8%の実績であり、それを大きく上回ることになる。

 レノボサービスでは、「プロテクションサービス」、「生産拠点での設定サービス」、「開発部門と連携した計画サービス」、「国内対応による運用サポート」、「情報資産の廃棄とリカバリサービス」、「現用設備の保守と連動した新規展開サービス」の6つのサービスを用意。「PCの導入をスムーズに進めてもらうための購入前のサービスと、日々の運用を支える購入後のサポートで構成する」(ベネット社長)とする。

 たとえば、日本マイクロソフトのWindows Autopilotと、レノボ独自のRTP+(Ready to Provision Plus)を組み合わせて、製品出荷前に、利用者ごとの個別設定とともに、大容量のデータや、各種アプリケーションなどをあらかじめインストールし、IT部門の負担を軽減。設定されたPCを自宅に直接配送し、オフィスと同じセキュアな環境を届ける「ゼロタッチデプロイメント」を実現することを目指す。

 また、IT部門に変わって、ユーザー部門のヘルプデスクを提供するLenovo Premier Supportでは、24時間365日のサポートを実現。「デジタルに慣れていなかったり、活用が苦手だったりといった人たちが、隣の人に気軽に聞くような形での対応を実現している」(レノボ・ジャパン  執行役員 サービス事業部サービスセールス&マーケティング本部統括本部長の上村省吾氏)とする。

 さらに、2021年2月から、サービス事業の新たな拠点として、NECパーソナルコンピュータ群馬事業場内に、「レノボ・ジャパンカスタマー・フルフィルメント・サービス(CFS)」を稼働させており、ゼロタッチデプロイメントの実現や、個社プロファイルやOS情報の一元管理にも対応。タギングなどの物理キッティングへの個別要件への対応、予備機対応を含めて、ライフサイクル全体に渡るサービスを提供することになるという。

 ベネット社長は、「かつてない変化によって、企業のIT部門が取り組むべき課題が変わっている」と前置きし、「Z世代やミレニアル世代といった新たな働き手や、新たな環境でのニーズを把握することに加えて、これまで社内立案していたプランや利用されているITシステムが、リモートワーク環境においても、生産性を高め、信頼関係を深めるものになっているのかを再確認することが求められている。また、DXの導入や展開を加速させるために、多くのことを素早く判断することも求められている。そうしたIT部門が抱える課題を解決するためには、レノボがハードウェアを提供している企業のままではいけない。そこに、レノボがサービスに注力する背景がある」と説明した。

 レノボグループでは、2021年4月1日付で、組織を大幅に変更する予定だ。

 ここでは、PCなどを含むスマートIoTに注力する組織である「インテリジェント・デバイス・グループ(IDG)」のほかに、サーバー製品などを担当する旧データセンター・グループ(DCG)による「インフラストラクチャー・ソリューション・グループ(ISG)」を設置。さらに、3つ目の組織として、スマートバーティカルやサービスを担当する組織として、「ソリューション&サービス・グループ(SSG)」を新設する。

 SSGは、レノボグループ全体のサービスおよびソリューションを統合。スマートバーティカル、アタッチド・サービス、マネージドサービスを担当し、DaaSやTruscaleといったサブスクリプション型のas a Service事業も統合することになる。

 サービス事業を専門組織として独立させ、「サービス事業を3つめの柱に位置づけることになる」(ベネット社長)とする。そして、SSGのトップに就くケン・ウォン氏は、日本の市場にも精通した人物で、レノボ・ジャパンだけでなく、NECパーソナルコンピュータ、富士通クライアントコンピューティングとのジョイントベンチャーにも深く関与してきた。

 売上高の15%を目指すという日本でのサービス事業のドライブを、陰で支える人物として、その動きも注目される。日本におけるサービス事業の成長戦略の行方が、2021年度のレノボ・ジャパンの注目点となる。

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