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サービスに注力する方針

テレワークとGIGAスクール背景にレノボが躍進、決め手は調達力?

2021年03月29日 09時00分更新

今回のひとこと

「国内法人向けPC分野においては、レノボブランド単独で、シェアナンバーワンになった。これは、2005年にレノボ・ジャパンが誕生してから初めてのことである。誇らしく思う」

(レノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長)

法人中心となるPC市場で、シェアを拡大

 レノボ・ジャパンのPC事業が急拡大している。

 IDC Japanの調べによると、2020年4月~12月の9カ月間における国内PC市場において、レノボが首位を獲得。市場全体の7割を占める法人向けPC市場においてもトップシェアを獲得した。

 2020年通期(2020年1月~12月)の集計では、日本HPが上回ることになるのだが、2020年4月以降という9カ月間の数字を用いたのは、レノボ・ジャパンにとって都合がいい数字であるという側面で使用されたものではない。いわば、コロナ禍でのPCビジネスにおいて、最も成長したPCメーカーであることを示すものだと言えるからだ。

 とくに、第4四半期は(2020年10~12月)においては、レノボ・ジャパンが法人向けPC市場で前年同期比2倍という大幅な成長を遂げ、20%を超えるシェアを獲得した。法人向けPCの5台に1台がレノボブランドのPCということになったのだ。

 レノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長は、「グローバルで発表した2020年度第3四半期(2020年10~12月)の業績は、売上高、税引前利益、純利益ともにも、第3四半期としては過去最高を記録した」と前置きしながら、「グローバル同様に、日本市場でも好調であり、国内法人向けPC分野においては、2020年4月~12月までの期間で、レノボ・ジャパンがシェアナンバーワンになった。

 これは、同じレノボグループのNECパーソナルコンピュータや富士通クライアントコンピューティングの数字を含まない、レノボブランド単独のものである。2005年に、日本にレノボ・ジャパンが誕生してから初めてのことである。とても誇らしく思う」と語った。


キーワードはシンプルにテレワークとGIGAスクール

 レノボ・ジャパンが好調だった理由は、「テレワーク」と「GIGAスクール構想」の2つである。まさに、コロナ禍において生まれた新たな需要をしっかりと取り込んでいる。

 「テレワークについては、レノボ・ジャパン自らが先進的に取り組んでいたこともあり、その重要性を理解し、需要の高まりを予測し、それに向けて、製品を調達する準備ができていた」とベネット社長は語る。

 同社では、2015年から、無制限テレワーク制度を導入してきた経緯がある。これは、対象部門を限定したり、1週間や1カ月という期間内に、テレワークの実施回数を制限したりといったことを行わない仕組みだ。誰でもが、いつでも、テレワークを行える環境を用意していた。

 こうしたテレワークに取り組んできた実績は、コロナ禍ですぐに生かされた。

 通常でも約20%の社員がテレワークを行っていたというが、2020年2月27日時点では60%の社員がテレワークを実施。1回目の緊急事態宣言が発令されていた2020年5月12日の本社オフィスの出社率は2%、2回目の緊急事態宣言が発令されたあとの2021年1月12日には3%という出社率に留めることができたという。

 「先行してテレワークに取り組み、ノウハウを蓄積していた。これを多くの企業に活用してもらうために『テレワークスタートガイド』を無償で配布し、中小企業向けにテレワーク用ノートPCを無料でレンタルという社会貢献も行い、日本の企業をサポートしてきた。もともと、レノボ・ジャパンが、テレワークに取り組んできたのは、幸せな社員は、よりよいパフォーマンスを発揮するという考え方が理由。だが、テレワークがバンデミックの時に効果を発揮することも同時に証明された」とする。


綿密に準備してきたGIGAスクール構想

 もうひとつのGIGAスクール構想においては、ベネット社長自らが、事前に綿密な準備を進めてきた経緯がある。

 2020年1月30日に整備予算が成立すると、レノボ・ジャパンは、2020年3月3日には、会見を開き、GIGAスクール構想に対応した「GIGAスクールパック」の提供を開始することを、いち早く発表。

 Windows 10を搭載した「Lenovo ideapad D330」と、Chrome OSを搭載した「Lenovo 300e Chromebook 2nd Gen」を用意し、そこに、NTTコミュニケーションズのクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」、端末設定やセキュリティ管理を行なう「端末管理ツール」、東京書籍とレノボが共同開発した学校用プログラミング教材「みんなでプログラミング」、アドビシステムズのクリエイティブツール「Adobe Spark」をパッケージ化し、補助金内で収まる1台あたり4万4990円の価格設定とした。

 MM総研の調べによると、GIGAスクール構想によって導入されたWindowsおよびChrome OSを搭載したPCでは、レノボ・ジャパンが28.1%とトップシェアを獲得。調査では、Chromebook を109 自治体に、Windows を127 自治体に導入しており、神戸市や、札幌市、千葉市では、10 万台規模の導入実績があったという。

 「GIGAスクール向けには、WindowsおよびChromebookにおいてトップシェアを獲得している。レノボは、教育に力を入れているPCメーカーであることを知ってほしい」と、ベネット社長は力を込めた。


調達力の差がシェアの伸びを決めた

 実は、こうした施策の実行において、レノボ・ジャパンの調達力が大きく発揮された点が見逃せない。現在、世界的にPC需要が盛り上がっており、日本の市場に部品や完成品をどれだけ持ってこられるかが国内シェアに大きく影響している。2020年10~12月に日本HPやデルが失速したのに対して、レノボ・ジャパンが大きくシェアを伸ばしたのは、調達力の差があったといえる。

 2021年1月以降も、国内PC市場におけるレノボ・ジャパンの勢いは続いており、競合他社の動きや関係者の声を聞くと、同社は、2020年度(2020年4月~2021年3月)の年間トップシェアの座を、ほぼ手中に収めたといってよさそうだ。

 2021年4月からはじまる同社2021年度においても、ハードウェアビジネスは、同社にとって重要な意味を持つが、それに加えて、新たな一歩を踏み出そうとしている。

 ベネット社長は、「2020年度は、ハードウェア事業によって、新型コロナの影響で困っている企業や学校を支え、ビジネス成長を遂げた。2021年度は、ハードウェアに加えて、サービスの強化を図ることになる。本気でサービスに取り組む」と宣言する。

 具体的には、日本におけるサービス事業の売上げ比率を、2021年度に15%にまで高める。

 グローバルでは、同社2020年度第3四半期で、8%の実績であり、それを大きく上回ることになる。

 レノボサービスでは、「プロテクションサービス」、「生産拠点での設定サービス」、「開発部門と連携した計画サービス」、「国内対応による運用サポート」、「情報資産の廃棄とリカバリサービス」、「現用設備の保守と連動した新規展開サービス」の6つのサービスを用意。「PCの導入をスムーズに進めてもらうための購入前のサービスと、日々の運用を支える購入後のサポートで構成する」(ベネット社長)とする。

 たとえば、日本マイクロソフトのWindows Autopilotと、レノボ独自のRTP+(Ready to Provision Plus)を組み合わせて、製品出荷前に、利用者ごとの個別設定とともに、大容量のデータや、各種アプリケーションなどをあらかじめインストールし、IT部門の負担を軽減。設定されたPCを自宅に直接配送し、オフィスと同じセキュアな環境を届ける「ゼロタッチデプロイメント」を実現することを目指す。

 また、IT部門に変わって、ユーザー部門のヘルプデスクを提供するLenovo Premier Supportでは、24時間365日のサポートを実現。「デジタルに慣れていなかったり、活用が苦手だったりといった人たちが、隣の人に気軽に聞くような形での対応を実現している」(レノボ・ジャパン  執行役員 サービス事業部サービスセールス&マーケティング本部統括本部長の上村省吾氏)とする。

 さらに、2021年2月から、サービス事業の新たな拠点として、NECパーソナルコンピュータ群馬事業場内に、「レノボ・ジャパンカスタマー・フルフィルメント・サービス(CFS)」を稼働させており、ゼロタッチデプロイメントの実現や、個社プロファイルやOS情報の一元管理にも対応。タギングなどの物理キッティングへの個別要件への対応、予備機対応を含めて、ライフサイクル全体に渡るサービスを提供することになるという。

 ベネット社長は、「かつてない変化によって、企業のIT部門が取り組むべき課題が変わっている」と前置きし、「Z世代やミレニアル世代といった新たな働き手や、新たな環境でのニーズを把握することに加えて、これまで社内立案していたプランや利用されているITシステムが、リモートワーク環境においても、生産性を高め、信頼関係を深めるものになっているのかを再確認することが求められている。また、DXの導入や展開を加速させるために、多くのことを素早く判断することも求められている。そうしたIT部門が抱える課題を解決するためには、レノボがハードウェアを提供している企業のままではいけない。そこに、レノボがサービスに注力する背景がある」と説明した。

 レノボグループでは、2021年4月1日付で、組織を大幅に変更する予定だ。

 ここでは、PCなどを含むスマートIoTに注力する組織である「インテリジェント・デバイス・グループ(IDG)」のほかに、サーバー製品などを担当する旧データセンター・グループ(DCG)による「インフラストラクチャー・ソリューション・グループ(ISG)」を設置。さらに、3つ目の組織として、スマートバーティカルやサービスを担当する組織として、「ソリューション&サービス・グループ(SSG)」を新設する。

 SSGは、レノボグループ全体のサービスおよびソリューションを統合。スマートバーティカル、アタッチド・サービス、マネージドサービスを担当し、DaaSやTruscaleといったサブスクリプション型のas a Service事業も統合することになる。

 サービス事業を専門組織として独立させ、「サービス事業を3つめの柱に位置づけることになる」(ベネット社長)とする。そして、SSGのトップに就くケン・ウォン氏は、日本の市場にも精通した人物で、レノボ・ジャパンだけでなく、NECパーソナルコンピュータ、富士通クライアントコンピューティングとのジョイントベンチャーにも深く関与してきた。

 売上高の15%を目指すという日本でのサービス事業のドライブを、陰で支える人物として、その動きも注目される。日本におけるサービス事業の成長戦略の行方が、2021年度のレノボ・ジャパンの注目点となる。

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