大ヒットスピーカー「エアパルスA80」の上位モデル「A100 BT5.0」は、文句ナシに「超イイ感じ!」
2021年03月25日 12時00分更新
2020年、日本上陸をはたしたコンパクトなパワードスピーカー「A80」が人気を博しているAIRPULSE(エアパルス)。その兄弟機にして上位モデルである「A100 BT5.0」が4月初めに発売予定! A80の音の良さに惚れている筆者は、一足お先にA100 BT5.0を借りることができましたので、A100 BT5.0の魅力とA80との違いをリポートしたいと思います。
新型ウーファーを搭載した
大ヒットモデルA80の上位機
エアパルスは、伝説的スピーカーエンジニアのフィル・ジョーンズ氏が興したブランド。ロンドン生まれのジョーンズ氏の名が広まったのは、1987年に自ら興したブランド「アコースティックエナジー」のニアフィールドモニター「AE1」から。AE1の音の良さはプロの世界に認められ、フュージョン/アダルト・コンテンポラリーの有名レーベルGRPレコードや、名門アビー・ロード・スタジオなどが採用。そのような話が一気に広まり、日本でもAE1は高い人気を誇りました。ジョーンズ氏はその後、紆余曲折を経て2004年にプラチナム・オーディオ・システム・カンパニーに参加。自らもベーシストとして活躍しながら、エアパルスブランドを設立。オーディオ機材を作り続けてきました。
A80は、そんなジョーンズ氏が設計した小型のパワードスピーカー。幅140×高さ255×奥行き240mmと、机の上にピッタリのコンパクトサイズのキャビネットに、11.5cmウーファーとリボンツイーターを各1基搭載。さらにUSB入力を備えたD/Aコンバーターも内蔵しているので、PCにつなげるだけでカンタンに192kHz/24bitまでのハイレゾサウンドを楽しめます。と書くと、あまたあるUSB入力対応D/Aコンバーター搭載パワードスピーカーと大差ないように見えますが、奏でるサウンドがすこぶるよく、聴いた誰もが「さすがフィル・ジョーンズ氏の作品」と納得するもの。しかもペアで実勢価格7万7000円(税抜)で手に入るというから、人気が出ないわけがありません。コロナ禍によるテレワーク化の波もあって、輸入元の想像を超えるほど売れたのだとか。
今回ご紹介するA100 BT5.0は、そんな大人気モデルA80のウーファーを11.5cmから12.7cmへと拡大。それに伴い、エンクロージュアが大型化。さらに、ピアノ仕上げとしたモデルです。「なんだ1.2cmしか変わらないのか」と思うかもしれませんが、いやいや違うんですヨ、これが……。
ウーファーの振動板は、A80と同様、硬質アルマイト処理を施したアルミニウム合金コーンを採用。注目はネオジム・マグネットを用いた磁気回路と、このクラスでは例を見ない35mm径アルミ・ボイスコイルが奢られたこと。ボイスコイルの大型化により、発熱を低く抑えることができ、結果としてパワーロスの低減が達成できるのだそうです。この強力なエンジンを支えるフレームはダイキャスト・マグネシウム合金製。こちらもボイスコイルの放熱に貢献しています。カンタンに言い換えるなら、パワーロスを減らすことで、よりリニアリティーの高いプレイバックができるようになったというわけです。
高域を受け持つのは、軽量なアルミニウム・リボン・ダイアフラムをネオジム磁石で駆動させるリボンツイーター。振動板が軽いため、素早い反応と透明度の高い再現だけでなく、ウーファーの振動板がアルミ合金であることから、音色の繋がりも良好なのはA80でも実証済み。
ピアノフィニッシュが施されたキャビネットは18mm厚のMDF製で、サイズは幅160×奥行き283×高さ255mm。A80と比べ幅2cm、奥行き4.3cm、高さ3cm大型化されています。これならギリギリ机の上に乗るサイズといえるでしょう。机の上などの接地時に、振動を吸収しながら仰角をつけて聴きやすくするウレタン製アングルベースが付属するのもうれしいところ。このような使い手のことも考えているのが、エアパルス製品のよいところといえるでしょう。
入力端子は右チャンネル側スピーカーに集約。2系統のアンバランス(RCA)アナログ入力のほか、光(TOS)とUSB(TYPE-B)、そしてBluetooth 5.0対応のデジタル入力(各1系統)と豊富。実はBluetooth 5.0に対応しているのも、このA100 BT5.0のウリの1つだったりします。このBluetoothですが、スマホはもちろんのこと、たとえばテレビの音声出力にBluetoothトランスミッターを接続すれば、ワイヤレスでA100 BT5.0と接続するという使い方も考えられます。
入力端子近傍には、ボリュームノブのほか、設置環境や好みによって音調バランスを整えるのに便利な低域・高域用のイコライザつまみも用意。そのほか、A100 BT5.0での映画鑑賞も視野に入れている方にはうれしいサブウーファー出力が設けているので、AVアンプなどを用意することなく、カンタンに2.1chシステムが構築できます。
USB入力は、最大でPCM 192kHz/24bitまでのフォーマットに対応しており、XMOS製チップセットを介して、デジタル領域のままClass D・パワーアンプ回路に送られます。ちなみにPWM制御を行なうClass Dアンプでは、パルス幅変調周期を決定するキャリア周波数が音楽再現性の鍵を握っています。というのも、キャリア周波数が高ければ高いほど、アナログのような正弦波に近づくから。一般的なClass Dアンプのキャリア周波数は384kHzですが、超高域まで伸びるリボンツイーターを搭載するエアパルスでは倍にあたる768kHzに設定。これもまた忠実度の高いプレイバックに貢献します。パワーアンプ出力は低域が40W×2、高域が10W×2と、必要にして十分なスペックを誇ります。
豪華な右チャンネル側に対し、左チャンネル側スピーカーは、右チャンネル側と接続するDINコネクターがあるだけと、いたってシンプル。リアパネルには内部配線材にアメリカのハイエンドケーブルブランド「トランスペアレント」の内部配線材が使われていることを誇る銘鈑プレートが取り付けられています。
エアパルスのスピーカーがよいのは、付属品が充実しているところ。別途ケーブルなどを買う必要がありません。そして電源を入れると、さりげなく入力セレクターのLEDが光ります。パワードスピーカーの中には、煌々とLEDが光るモデルがありますが、そういうのは暗い場所では目障りだったりします。それでは、A80とA100 BT5.0との違いも織り交ぜながら、期待高まる音に耳を傾けることにしましょう。
深みが増した質感表現
いぶし銀の名演を太く描き出す
筆者の机の上にA100 BT5.0を設置。普段の作業に使っているパソコンとUSB接続し、Amazon Music HDで様々な音源を楽しむことにしました。実は「A100 BT5.0を使って、サブスクでいい音を聴きながらテレワークのススメ」が本稿の裏テーマだったりします。ハイレゾ音源がサブスクで楽しめるなんて、ハイレゾが出始めた10年ほど前には考えられませんでした。
Macでは繋げてすぐに192kHz/24bitのハイレゾ音源が楽しめますが、Windows機を使われる方はエアパルスの本国サイトからドライバーをダウンロードし、インストールする必要があります。その後、サウンドコントロールパネルからA100のプロパティを開き、「詳細」からサンプリングレートを最大の設定にするのをお忘れなく。準備ができたら、あとは心ゆくまでハイレゾサウンドを楽しみましょう!
まずは低域の確認として、オーディオファイルがスピーカーの低域チェックによく用いるイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」を選択。Amazon Music HDには、2013年のリマスター版のハイレゾファイルが用意されています。ですが、表題曲のみ44.1kHz/16bitではありませんか!? 早くもAmazon Music HDでハイレゾファイルをストリーミングで聴く幸せという裏テーマが崩壊したので、A80の視聴で用いた1992年発売のDCC版リマスタリングCDでテストすることにします。
低域チェックによく使われるのは、Aメロに入る前に放たれる2発の強烈なタムドラムなのですが、それ以前に流れるギターの音色から、すでにA80とは傾向が違うではありませんか。A80と比べると、全体的に音色に深みが増し、質感はとても柔らかな。でありながら、肝心の2発は量感を増すだけでなく、押し出し強くプレイバック。一般的には出しえない音量でも試しましたが、ボトミングする前に苦情が来そうなくらいの大音量で再生ができました。新型ウーファーによって、今まで以上に音楽に品位を与えているようです。
深みが増したA100 BT5.0の質感表現はクラシックに好適。ピアニスト内田光子とニューヨークを拠点に活動するブレンターノ・カルテットのヴァイオリニスト、マーク・スタインバーグによる2004年の録音「モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ集第33番・第27番・第28番・第42番」(96kHz/24bit・FLAC)は、その静謐な空気を感じさせる中で、ビブラートをかけずに奏でるスタインバーグのヴァイオリンと、味わい深い内田光子のピアノの対比を見事に再現。そして、この2人は母子ほどの年の差があるのですが、無垢な子供を見守る母のような、そんな優しい空気がスピーカーから流れ出てきます。そのような深いニュアンスを、こんな小さなスピーカーが再現することに驚くほかありません。凄いぞフィル・ジョーンズ!
表現力の豊かさは、クラシックのみならず、ジャズでも感じ取れます。Amazon Music HDでジョン・コルトレーンの「クレッセント」(192kHz/24bit・FLAC)から、静寂のバラッドである4曲目「ロニーズ・ラメント」を聴いてみることに。主役であるコルトレーンとマッコイ・タイナー(ピアノ)の2名はもちろんですが、聴きどころはロングソロをフィーチャーされたジミー・ギャリソンによる、いぶし銀の名演。
A100 BT5.0は、そのコンパクトサイズから信じられないほどのボディー感を伴いながら、格調高く見事に再現するではありませんか。無限に続くかと思うほど長くて深いベースソロが明けてからの、コルトレーンのサックスとエルヴィン・ジョーンズのシンバルワークにいてっては、圧巻のひとこと。リボンツイーターというと、シャラシャラした音がしがちですが、見事な太さでジャジーに描き出します。やっぱり凄いぞ! フィル・ジョーンズ!
J-POPも「超イイ感じ!」
「脇目なんて振っている振ってるんじゃない!」
Amazon Music HDには、ジャズやクラシックのみならず、J-POPのハイレゾ音源も多数用意されています。そこでエイベックスが世界に照準を合わせて結成したアイドルグループ「わーすた」(The World Standard)が、昨年11月にリリースしたミニアルバム「What's "standard"!?」からリード曲「清濁あわせていただくにゃー」をセレクト。Amazon Music Unlimited(44.1kHz/16bit・非可逆圧縮音源)と、Amazon Music HD(48kHz/24bit・FLAC)の違いを確認してみることにしました。なぜ「わーすた」なのかって? それは筆者箱推しのアイドルグループだから。
「清濁あわせていただくにゃー」は、コロナ禍に襲われ悲喜こもごもの今を肯定し、次に進もうというステートメントを、ロックサウンドに乗って、力強く、可愛く、軽やかに歌いあげます。実に今の時代にピッタリではありませんか!
転げ落ちるようなドラムから始まる「清濁あわせていただくにゃー」は、うねるリズム隊に乗って、ギターとピアノが終始乱舞。さらにピアノやストリングスのカウンターが入るなど、音数が多いため分解能が低いと混濁しがち。案の定、44.1kHz/16bitの圧縮音源ではエッジが強調されて全体的に聴き取りづらい印象。これでは「NO NO NO NO NO NO NO NO NO でしょ!」です。それがAmazon Music HDで聴くと、音の分離がよくなるだけなく、音楽が一層グルーヴするではありませんか。
そのグルーヴの中を、三品瑠香さんによるハイトーンで攻撃的な歌声と、アイドル界随一の歌唱力と定評の廣川奈々聖さんの歌声が「超イイ感じ!!」に掛け合い、実に楽しそう。そのような「デリシャスだね」なサウンドに拍手喝さいで、つい「もういっちょ行く?」「いいねーっ!」とリピート再生が止まりません。
A100 BT5.0は、フォーマットの違いをキチンと出す分解能の高さだけでなく、楽曲の美味しいところを引き出す能力に長けているのです。オーディオでは、クラシック向き、ジャズ向きという言葉がありますが、本当によい機材はジャンルを選びません。なぜなら音楽に奉仕するから。パワーアンプ内蔵コンパクトスピーカーの「What's "standard"!?」かと言われたら、エアパルスであると断言します。
ASCII.jp的には、月イチの連載を持っているアイドルグループ「純情のアフィリア」についても触れなくてはなりません。最近自動車記事にも登場していますし。Amazon Music HDでファーストシングル「この世界に魔法なんてないよ/はじめてのSEASON」をチェックしたのですが、残念ながら提供しているのはCDクオリティーの44.1kHz/16bit・FLACのみ。ですが、配信音楽販売サイトのmoraやe-onkyo music storeに、96kHz/24bitのFLACファイルが販売されているではありませんか。
折角なのでAmazon Music HDと購入したハイレゾファイルを聴き比べてみることにしました。ハイレゾファイル再生のプレーヤーはFoober2000で、もちろんWASAPI排他モードです。
打ち込み系の楽曲なので、差はでないだろうと思っていたのですが……。声に別人といえるほどの違いが。エッジが立ちすぎ刺々しい44.1kHz/16bit版に対し、96kHz/24bit版は、実にしなやかで柔らかくて自然。この違いを聴いてしまうと、44.1kHz/16bit版は歌っている彼女達に失礼では? とさえ思えます。
【まとめ】エアパルスはハイレゾサブスク時代に向けた
フィル・ジョーンズからの贈り物だ
繰り返しになりますが、A100 BT5.0はレゾリューションの違いを見事に描き分ける高い分解能と、深みを伴いながら音楽の美味しいところを品位よく引き出す能力に長けた1台。一方、A80はA100 BT5.0と比べると解像度を際立たせたような表現をするといえそうです。いずれにせよ、これらが10万円以下で販売されているところに驚きを禁じえません。
約10万円のスピーカーと、月額1980円のサービスで、素晴らしい音世界が卓上体験できるとは。本当に凄い時代になりました。ハイレゾで聴くということは、アーティストが出したい本来の音に近づくことだと、改めて思った次第。何より好きな音楽はイイ音だと一層楽しい。そのような当たり前のようなことを、A100 BT5.0は改めて教えてくれたように思います。これは手に入れるしかありません。
ハイレゾファイルが存分に楽しめるというこの時代だからこそ、いいスピーカーで聴かなきゃもったいないというもの。エアパルスのコンパクトスピーカーは、この恵まれた時代にピッタリの、フィル・ジョーンズからの素敵な贈り物といえるでしょう。
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