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経済産業省「出向起業等創出支援事業」

企業に在籍したままスタートアップに挑戦できる「出向起業」の支援策

2021年03月17日 15時00分更新

 新しいビジネスを興すには、起業、資金調達、PoC、量産、販路開拓……といくつもの壁がある。プロトタイプから先のフェーズに進まず、製品化や社会実装に至らないケースは多い。経済産業省は、新規事業の創出を支援する取り組みとして、大企業人材の起業を支援する「出向起業等創出支援事業」を実施している。

企業に在籍したまま、スタートアップに挑戦できる「出向起業」

 “出向起業”とは大企業社員が企業に在籍したまま起業し、自ら出向してフルタイムで新事業を開発すること。多くの大手企業が新規事業開発に取り組んでいるが、既存事業との兼ね合いや、売り上げが企業の規模に見合わない、といった社内事情から、せっかくの優れた企画や技術が世の中に出ることなく、眠ってしまっている。こうした社内で育てにくいシーズを事業化する手段のひとつが出向起業だ。

 出向起業のメリットは、大企業に籍を置いたままで起業するので、今のキャリアや収入を失うリスクがなく、事業創出にチャレンジできることだ。また、出向元の企業にとっても、いったん外部の事業とすることでスピーディーに新規事業創出が可能となり、また貴重な人材や知財の流出の回避、社員に起業や経営の機会を与えることで人材育成、既存社員のモチベーションのアップにもつながるなどメリットは大きい。

 出向起業等創出支援事業は、出向起業による新規事業開発にかかる経費の一部を補助する制度だ。次回公募(2021年4月頃〆切予定)では、プロトタイプ開発や実証実験の経費の2分の1(上限500~1000万円)が補助される。対象となる出向起業の条件は以下の3つだ。
(1)所属元の企業以外の資本を80%以上活用して会社を設立すること
(2)会社を設立した社員が自ら出向してフルタイムで経営者として従事すること
(3)一定期間経過後の出口として、そのまま独立するか、帰任、買い戻しといった選択肢が用意されていること

 出向起業創出支援事業のサイトでは、公募情報の詳細や出向起業をした起業家の事例が多数紹介されている。

SSI投資モデルで注目される「出向起業」

 これまで大企業の中で新規事業を立ち上げるには、既存事業とのシナジーや数百円規模の売り上げが求められる。社内では育てにくいビジネスアイデアを実現するには、会社を辞職して独立する方法がほとんどだった。

 そもそも既存事業の維持には効率性と確実性、新規事業の開発では創造性が重要で、求められる能力が異なり、大企業は体質的に新規事業開発には向いていない。そこで本体には向かないけれど、将来性のある新規事業を創出するための手段が出向起業の仕組みだ。

 2019年には、シリコンバレーと日本に拠点を置くVCのGlobal Catalyst Partners JapanがLP企業からの出向起業スタートアップに投資するStructured Spin-in(SSI)投資モデルを活用したファンドを組成し、ヤマハ発動機やNEC、SOMPOホールディングスなどが出資。NECの個体識別技術の研究部門から出向起業した株式会社GAZIRUなどの事例が生まれている(参考記事:NECの画像認識技術を応用 スマホで撮るだけの個体識別サービス「GAZIRU」)。

 出向起業等創出支援事業では、出向起業スタートアップに対して補助金交付や社内調整を支援することで、こうした先行事例を増やしていき、モデルケースを作ることを目的としている。

出向起業を始める前に知っておきたいTIPS集「出向起業の手引き」

 イレギュラーな起業形態だけに、出向起業に至ったきっかけはさまざまだ。例えば、不動産向けのDXを開発するTRUSTART株式会社は、三菱UFJ信託銀行から出向起業の社内公募を利用して起業したパターン(参考:https://co-hr-innovation.jp/entrepreneur/trustart/)。

 NTTコミュニケーションズからスピンアウトしたSpoLive Interactive株式会社のケースでは、当初は社内起業制度を利用して事業化に取り組んでいたが、既存の仕事との両立が難しくなり、出向起業を活用して独立することを選んだそうだ。SSI投資モデルが活用できる場合もあれば、自力で外部からの資金調達をするケースもある。

 こうしたさまざまな事例をもとに弁護士や会計士の監修のもとに、企業が出向起業を導入するために必要な社内制度、知財の扱いなどのポイントをまとめたものが「出向起業の手引き」と「出向モデル契約書」だ。出向起業に興味のある人、自社に導入したいときは「出向起業」サイトの「起業家紹介」の事例と併せて参考にしてほしい。

 2021年度も出向起業に係る補助金の公募が実施される予定なので、企業内イノベーターなどに出向起業制度を上手に活用してもらいたい。

「出向起業の手引き」

 ASCII STARTUPが主催する「JAPAN INNOVATION DAY 2021」(2021年3月19日開催)の、12時からのセッション「新しい起業のカタチ “出向起業”のススメ ~出向起業中の経営者と&弁護士による事例・Tips紹介~」では、上記の支援事業による取り組みの事例を紹介する。NTTコミュニケーションズから出向起業したSpoLive Interactive株式会社の岩田 裕平氏が登壇。出向起業の経緯や進める際の注意点などが紹介される予定だ。

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