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廃校や寺、城、無人島まで、あらゆる場所を15分単位で借りられるSPACEMARKET

2021年02月18日 09時00分更新

今回のひとこと

「一般住宅や会議室、飲食店、スポーツ施設、結婚式場のほか、廃校や寺、城、無人島まで、47都道府県、1万4000以上のスペースが登録されている。テレビ局やYouTuberの使用のほか、最近ではテレワークでの活用も増えている」

(スペースマーケットの重松大輔社長)

 スペースマーケットは、あらゆるスペースを、15分単位で、簡単に貸し借りできるWebプラットフォーム「SPACEMARKET」を提供。2020年8月からは、働くシーンに特化したスペースを貸し借りできる「SPACEMARKET WORK」の提供を開始している。

 スペースマーケットの重松大輔社長は、「当社のミッションは、スペースシェアリングをあたりまえの選択肢にすること。これにより、人々の発想を広げ、多様なチャレンジを生み出し、世の中を面白くしたいと考えている」とする。

 スペースマーケットに掲載しているスペースは、全国47都道府県、1万4000以上にのぼり、「一般住宅や会議室、飲食店、スポーツ施設、スタジオ、結婚式場のほか、廃校や古民家、寺、城、無人島といったユニークな場所まで登録されている」とする。

 会議室が足りない場合にも、会社の近くのスペースをすぐ予約できたり、ママ友が集まるためにスペースを貸し切りにすることで、子供が安心していられるといった使い方のほか、大きなスクリーンでスポーツを観戦したり、「映えする」写真の撮影のためにスペースを借りたりといった利用もあるという。

 「テレビ番組のロケや収録、ミュージックビデオの撮影、YouTuberの使用、コスプレイヤーの利用も増えている。スポーツ施設は、ヨガ教室やスポーツ、フィットネスのなどの個別レッスンの用途や、企業の運動会などにも使用されている。自治体の登録もあり、利用されていない公共施設を貸し出すことで、新たな収入源を得たり、維持費の捻出に困っていた古民家や空き家の存続にも貢献している」という。

 奈良県宇陀市の廃校は、築100年以上の木造校舎という特徴もあり、年間200件以上の利用があるという。古民家を維持できないために駐車場になってしまうといった課題を解決したり、取り壊し予定で借り手がつかないオフィスビルも、取り壊しの日まで活用できるといった用途に、スペースマーケットは利用できる。

 スペースを提供するホストは、初期費用や登録費用は無償であり、利用されることで収益を得られる。「情報を入力し、審査後、サイトに掲載される。ハードルが低いプラットフォームであり、登録すればなにかしらの利用が想定される。最近では、テレワークやサテライトオフィスとしての利用が急増している」という。

飲食店の空席をテレワークスペースとして提供

 そうしたなか、スペースマーケットは、神戸市と共同で、飲食店の稼働していない空席を、テレワークに利用できる実証事業「KOBE Work Space Share」を、3月31日まで実施している。

(右から)神戸市企画調整局つなぐラボ 特命係長の長井伸晃氏、スペースマーケット 代表取締役社長の重松大輔氏、神戸市経済観光局担当部長(商業流通担当)の古泉泰彦氏

 店舗内の稼働していない空席を有効活用したい飲食店と、テレワークできる場所を探している就労者をマッチングさせ、飲食店をワークスペースとして活用する機会を創出する取り組みだ。自治体がスペースシェア事業者との連携により、飲食店支援を行うのは全国で初めてのことになる。

 スペースマーケットの重松社長は、「神戸市内の飲食店の活性化、地域の活性化という観点からも貢献したい」と語る。

 「KOBE Work Space Share」対象店を、「SPACEMARKET WORK」の特集ページに掲載。利用者者は飲食店の空席1席を、テレワークスペースとして、1時間100円で利用できる。

 神戸市では、神戸市内にある中小企業基本法第2条に規定する中小企業者(中小規模飲食店)のうち、インターネット環境を提供できる店舗に対象に参加企業を募集。利用者に対しては飲食の提供も可能としている。

 たとえば、小規模飲食店では、ランチタイムは通常営業、ディナータイムは午後8時までの時短営業をする一方、仕込み時間などにあたる午前と夕方の時間帯をワークスペースとして貸し出し、必要に応じて、ワークスペース提供中に、ドリンクや軽食を提供することができる。

 また、店舗面積が広く席数が多かったり、個室があったりする中規模飲食店では、基本的には飲食も提供。個室や2階スペースなどの一部エリアをまとめた形で、ワークスペースとして提供する。

 これらはモデルケースであり、時間帯やサービス内容については、各店舗で自由に設定できる。

 スペースマーケットの仕組みでは、通常、飲食店は利用料の70%を得られるが、今回の実証事業では、残りのサービス手数料の30%のうち、15%を神戸市とスペースマーケットが補助するため、あわせて85%の収入が得られる。
一方で、利用者は、居住地や勤務先を問わずに利用でき、KOBE Work Space Shareのサイトから、店舗を検索して、空席状況を確認して予約する。サイト上で決済も行え、利用後の領収書の発行も可能だ。また、対象店舗で利用できる5%割引クーポンを、KOBE Work Space Shareのサイトで配布する。飲食の持ち込みは、水およびお茶に限定。1人での利用を前提とし、感染症対策の徹底も呼びかける。

 神戸市経済観光局担当部長(商業流通担当)の古泉泰彦氏は、「厳しい状況にある神戸市内の飲食店にとって、今回の仕組みが少しでも活性化につながればいいと考えている。商店街の活性化という点でも活用してもらいたい」とする。

 また、神戸市企画調整局つなぐラボ 特命係長の長井伸晃氏は、「飲食店にとっては、ワークスペース利用に伴う飲食での収益や、新規客や新たな固定客の確保といったことでも効果が期待できる。神戸市の食文化を守ることにもつながるだろう。飲食店を応援するという意味でも、個人や企業の方々に利用してもらいたい」とする。

 オフィスワーカーは、在宅勤務が進むものの、自宅で仕事をするスペースがなかったり、共働きの場合には、お互いに配慮しながら在宅勤務をするという状況もある。また、緊急事態宣言によって、家から一歩も外出しないため、働くモチベーションがあがらないという人もいるだろう。

ワールドワンが展開する居酒屋の店内の様子

 「居酒屋では、掘りごたつの席を利用できるなど、気分転換にもつながる。また、喫茶店でテレワークをしていても、コーヒー1杯で長時間いるのがはばかられるという人も、事前に予約をして、決められた時間内で、周りを気にせず利用できるという安心感がある」(神戸市の長井氏)とする。

飲食店からも期待の声

 神戸市内の飲食店からも期待の声があがる。

 神戸市内で喫茶店を展開するカフェ英國屋の小川嘉之氏では、「外出自粛要請により、売上げの減少は致命的なほどである。テイクアウトもあるが、お客様に来ていたただいて空間を利用してもらうのが喫茶店の基本。KOBE Work Space Shareによって、空間を貸し出し、空間を使ってもらうことにつながる。やりたかったと思っていたことが形になった。この仕組みを活用していきたい」とコメント。神戸を中心に居酒屋を展開するワールドワンの羽場洋介氏は、「夜の営業が中心となる居酒屋は、時短要請が売上げに大きく響いている。居酒屋は大きなスペースがあり、その有効活用を模索し、テレワークの利用提案も行ってきたが、居酒屋で仕事をするということが、イメージとして受け入れられにくい。しかし、神戸市の仕組みのなかでやれば、利用者の印象も変わる」とし、「飲み会や宴会がなくなってしまい、居酒屋で飲むことが忘れられてしまうことを最も恐れている。どんな形でもいい。儲けがなくてもいいので、昼間にちょっとでも来てもらって、『また今度、ここで飲みたいなぁ』と思ってもらえれば幸せである」と語った。

カフェ英國屋

 神戸市は、営業時間の短縮要請によって影響を受けている飲食店などを対象に、家賃の半額を助成する支援策を新たに実施するなど、独自の取り組みを開始している。兵庫県は緊急事態宣言が実施され、協力金として1日6万円が支給されるが、それに、上乗せする形で支援するものだ。今回のテレワーク利用提案も神戸市独自の施策になる。神戸の飲食店の灯を消さないための施策としても、今回のKOBE Work Space Shareの成果を期待したい。

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