PCゲームは今年さまざまな話題作が生まれたが、2020年終盤にリリースされた「Cyberpunk 2077」は“いろいろな意味で”話題を集めている。家庭用ゲーム機でもプレイできるが、スペックを盛りに盛れるPCでプレイするのが一番精神的に良いと筆者は考える。退廃的で煌びやかなナイトシティの凄さは、ぜひとも最高画質でプレイして戴きたいものだ。
しかし、Cyberpunk 2077は要求スペックもそれなりに高い。公式情報によれば、2020年に一躍シェアを拡大させたAMDの環境で最高の“ウルトラ”設定で遊ぶにはCPUが「Ryzen 5 3600」でビデオカードが「Radeon RX 6800 XT」、メインメモリーが16GBに指定されている。
そこで今回はベンチマークを通じて、AMD環境でCyberpunk 2077をウルトラ設定で快適に遊ぶためのスペックを考察してみたい。
CD PROJECT REDのサポートページから引用したCyberpunk 2077の動作環境。画質によって推奨スペックが分かれているが、なぜか画質と解像度がリンクしてしまっているので、フルHDでウルトラ設定で遊びたい場合の推奨スペックが分からない……
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Ryzen 3000/5000シリーズとRadeon RX 6000シリーズで検証
話を始める前に今回の検証環境を紹介しよう。CPUはRyzen 3000/5000シリーズ、GPUはRadeon RX 6000(RX 6000)シリーズ3モデルを揃えた。さらにGPUは比較対象として、RDNA世代のRadeon RX 5700(RX 5700)も準備している。
さらに、RX 6000シリーズのストロングポイントであるSAMこと「Smart Access Memory」だが、検証用マザーボードのBIOSを最新版(F31q)に更新したところ本来サポートされないはずのRyzen 3000シリーズでもResizable BARが有効化できることが分かったため、全CPU環境でSAMが活きている(どの程度効いているかはさておき……)。
「X570 AORUS MASTER」のBIOS F31q環境では、Ryzen 3000シリーズでもResizable BARの項目が出現。これを有効化することでRX 6000シリーズのSmart Access Memoryが利用可能になっている
| 【検証環境】 | |
|---|---|
| CPU | AMD「Ryzen 9 5950X」 (16C/32T、3.4~4.9GHz)、 AMD「Ryzen 9 5900X」 (12C/24T、3.7~4.8GHz)、 AMD「Ryzen 9 3900XT」 (12C/24T、3.8~4.7GHz)、 AMD「Ryzen 7 5800X」 (8C/16T、3.8~4.7GHz)、 AMD「Ryzen 7 3800XT」 (8C/16T、3.9~4.7GHz)、 AMD「Ryzen 5 5600X」 (6C/12T、3.7~4.6GHz) AMD「Ryzen 7 3600X」 (6C/12T、3.8~4.4GHz) |
| CPUクーラー | Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」 (簡易水冷、280mmラジエーター) |
| マザーボード | GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」 (AMD X570、BIOS F31q) |
| メモリー | G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」 (DDR4-3200、16GB×2)×2 |
| ビデオカード | AMD「Radeon RX 6900 XTリファレンスカード」、 AMD「Radeon RX 6800 XTリファレンスカード」、 AMD「Radeon RX 6800リファレンスカード」、 AMD「Radeon RX 5700リファレンスカード」 |
| ストレージ | GIGABYTE「AORUS GP-ASM2NE6200TTTD」 (NVMe M.2 SSD、2TB) +ウエスタンデジタル「WDS100T2X0C」 (NVMe M.2 SSD、1TB) |
| 電源ユニット | Super Flower「Leadex Platinum 2000W」 (80PLUS PLATINUM、2000W) |
| OS | Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」 (October 2020 Update) |
CPU負荷はかなり高め
描き込みの濃いゲームはCPU負荷も高い。この点はCyberpunk 2077も同じだ。そこで今回ベンチマークとして使用した移動シーンにおけるCPU負荷はいかほどかチェックしてみよう。以下のタスクマネージャのキャプチャーは、全てRX 6800 XT、解像度フルHD+画質“ウルトラ”設定でのものである。比較的車や通行人の少ないシーンでの計測なので、CPU占有率はさらに1~2割高くなる可能性もある。
Cyberpunk 2077のCPU負荷は非常に高く、6コア(C)/12スレッド(T)のRyzen 5 5600Xだとほぼフルロードに近い状態まで使われる。ゲームだけを遊ぶならこれでも問題ない感じだが、裏で何か別の処理(配信やDiscordなど)をさせるには厳しすぎる。何か並列で処理させたいならRyzen 7 5800Xより上のCPUが必要になるだろう。
また、8C/16Tより上のRyzen環境では、CPUの負荷に偏りがあることもわかる。タスクマネージャで確認すると、基本的に負荷が高いコア(グラフ)と低いコアが隣接していることから、Cyberpunk 2077の負荷は物理コア部分に集中し、SMTで増えた論理コアを避けているようだ。
ただ、いくつかの論理コアに関してはすぐ隣の物理コアと同程度の負荷がかかっているものもある。さらに言えば、2CCD構成のRyzen 9 5900Xと5950Xに関しては、タスクマネージャの上にあるコアの方が負荷が高い。
これはCPU負荷がRyzenの“Preferred Core”あるいは“Elite Core”と呼ばれるもの(平たくいえば“優秀なコア”)にかかると、論理コアも使われることと、CCDがCCD0とCCD1に分かれている場合は、CCD0が優先して使われるからである。
RyzenのPreferred Coreを確認するには「Ryzen Master」を使うのが一番だ。今回検証に利用したRyzen 9 5950Xの場合、CCD0はC 08とC 05、CCD1ではC 14とC 12に★と●が付けられている。これが付いたコアが優秀だと示されているのだ
全コアの順位を確認したい場合は「HWiNFO」を使うとよい。ここではCore 0~Core 7がCCD0、Core 8~Core 15までがCCD1となるが、最も優秀(perf #1/1)はCore 7(Ryzen Master上ではC 08)、2番目(perf #1/2)はCore 4(同じくC 05)となる。CCD1側のトップはCore 13と11だが、OSから見れば優先度の低いコアとなっている
Cyberpunk 2077は発売当初Ryzen環境におけるパフォーマンスチューニングの甘さが指摘され、Patch 1.05で挙動の改善が実装された。これによると6C/12Tでは顕著なパフォーマンス向上が確認されたようだ。ただ、8C/16T以上では効果がみられないようだが、Ryzen 7/9ではCPU側にかなりの余裕がみられるので、Ryzen 7/9で改善されなかったのは当然といえるだろう。
Cyberpunk 2077を遊ぶならRyzen 3000シリーズよりも5000シリーズ
まずはGPUを同じもの(RX 6800 XT)に固定した場合、CPUを変更することでフレームレートにどの程度の影響が出るかを試してみたい。画質は“ウルトラ”、解像度はフルHDである。特定のルートを車で移動した時のフレームレートを「CapFrameX」で測定しているが、手動計測であり、かつ通行人や車の出方がその都度違うので誤差は大きめなことはご容赦戴きたい。
Cyberpunk 2077のウルトラ設定ではフルHD環境においてもGPUバウンド(GPU側が圧倒的に律速)な状況になりやすいらしく、平均fpsで見るとCPUの違いはさほど大きくない。平均fpsトップのRyzen 5 5600Xと最下位のRyzen 5 3600 XTとRyzen 5 3600Xでは8%も差が付いていない。そしてRyzen 9 5950Xを筆頭としたRyzen 5000シリーズ内の性能差はほとんどなく、誤差と言い切れない部分もある。
しかし、最低fpsに目を向けてみると、CPUの世代差が実に大きいことがよく分かる。Ryzen 5 3600Xから見てRyzen 5 5600Xの最低fpsは17%も伸びており、大幅にIPCやレイテンシーを改善したRyzen 5000シリーズの長所が遺憾なく発揮された結果となった。6C/12TのRyzen 5 5600Xよりも12C/24TのRyzen 9 5900Xや16C/32TのRyzen 9 5950Xの方がさらに最低fpsが伸びているが、これはほぼ体感できないレベルといって良い。
ただ、Cyberpunk 2077を快適に遊ぶためには、前述のCPU占有率と合わせて考えるとRyzen 5000シリーズのうち、Ryzen 7以上が好ましいといえるだろう。
RDNA2アーキテクチャーが強い
CPUがある程度絞り込めたところで、GPU側の違いも検証してみよう。ここではCPUをRyzen 9 5950Xに固定し、Radeon RX 6000シリーズ3モデル&RX 5700の4GPUでどの程度フレームレートに差が出るかを検証する。検証方法は前のCPU編と同じ方法となる。
今回はRadeon RX 5000(RX 5000)シリーズは1モデルしか検証していないが、その理由は上のグラフに示されている。RDNA世代のRX 5700では、フルHDでも平均60fpsに遠く及ばないのだ。Radeon RX 5700 XTはRX 5700の約1割増しの性能(参考記事:https://ascii.jp/elem/000/001/891/1891292/)なので、上位モデルであっても平均60fps到達はかなり厳しい。
RX 5700とほぼ同等のRadeon RX 5600 XTや、エントリークラスのRadeon RX 5500 XTともなればさらにフレームレートが下がるのは当然。だがRDNA2世代のRX 6000シリーズならフレームレートが劇的に向上する(値段もそれなりに高いので当然ともいえるが)。
一番安価なRX 6800でもフルHDでなら60fpsをキープでき、平均92fpsにまで到達した。2021年に投入されるであろうRX 6000シリーズの下位モデル(RX 6700?)がフルHD&ウルトラ設定で60fpsプレイのボーダーラインになるだろう。
RX 6000シリーズの上位モデルに目を向けてみると、どの解像度設定でも型番通りのパフォーマンスが出ていることが分かる。RX 6900 XTに関しても、RX 6800 XTと比べてしっかりと差が出ている。ただ十分なフレームレートを出すにはWQHDが限界で、4Kになると30fps近くまで落ち込む。
ナイトシティ観光なら可能だが、バトルを伴った攻略プレイには厳しい。FidelityFX等の付加機能を上手く利用すればなんとかなりそうだが、今回は割愛する。
Ryzen 5000シリーズとRadeon RX 6000シリーズの組み合わせでフレームレートはどう変わる?
これまでの検証でCPUはRyzen 5000シリーズ、GPUはRX 6000シリーズが良いという至って当然の結果が出た。ではこの中のどれとどれを組み合わせるのが良いのだろうか? 例えばRX 6800 XTを使うのにRyzen 5 5600XはダメでRyazen 9 5900Xの方が良いというエビデンスは出せるのだろうか?
以下の表はフルHD~4Kまでの解像度において、Ryzen 5000シリーズとRX 6000シリーズを組み合わせた時に平均fpsがどう変わるかを調べたものだ。もちろん検証方法は前掲のものと同一となる。
今回の検証は同じ地点から地点へ移動した時のフレームレートを「CapFrameX」で計測したものだが、手動計測ゆえに誤差も含まれると解説した。今回CPU4種とGPU3種の総当たりで検証した結果は、GPUが同じならRyzen 5000のどのCPUを使っても極端にフレームレートに影響が出ないことが判明した。
まとめ:Radeon RX 6000シリーズとRyzen 5000シリーズの組み合わせならばどれでもOK?
今回はRadeon RX 6000シリーズの違いだけでなく、Ryzen 5000シリーズとの組み合わせについても考察した。全体の傾向的にはRyzen 7 5800Xが良い値を出しているように見えるが、誤差といっても良い程度の差でしかない。CPUに余力のないRyzen 5 5600Xでさえも、上位CPUと比べ明らかに不利であるというエビデンスは得られなかったつまり、最新のAMD製CPUとGPUで構成しておけば、Cyberpunk 2077は最高画質設定で快適に遊べるという、という結論になる。
ただし、Ryzen 5 5600Xに関しては裏で何も処理をさせず、ゲームのみに専念させた場合に限る、という注釈が付く。OBSやDiscordを並走させる場合は、最低でもRyzen 7 5800X、可能ならばRyzen 9 5900Xがベストとなるだろう。
ただ、Patch 1.06時点で未実装になっているRadeon向けのレイトレーシングに関してはまだ評価することはできない。これに関しては実装後に(機会があれば)再度検証してみたいところだ。
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