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成果発表会「IPAS2019 Demo Day」レポート

知財戦略の成果は?「IPAS」デモデイにスタートアップ11社登壇

2020年12月07日 09時00分更新

 特許庁は2020年9月18日、スタートアップの成長を事業と知財の両面で加速させる知財アクセラレーションプログラム「IPAS2019」の成果発表会「Demo Day」をオンラインにて開催した。IPAS2019では、応募総数111社の中からビジネスの将来性や知財支援の必要性等の観点で選ばれた15社に対し、3か月間のメンタリングを実施。Demo Dayは2部構成で、第1部は、支援先企業4社による成果発表、第2部は、支援にあたったメンター陣とスタートアップによる座談会が行なわれた。

 第1部の登壇企業は、LeapMind株式会社、株式会社ブレイゾン・セラピューティクス、メディギア・インターナショナル株式会社、BionicM株式会社の4社。司会進行は、特許庁 企画調査課の小金井 匠氏が務めた。

特許庁 企画調査課 小金井 匠氏

超低消費電力AI推論アクセラレータIP「EFFICIERA」のライセンスビジネスを支える知財の形成

 LeapMind株式会社は、小型、省エネ設計の組込み型ディープラーニングのソフトウェアおよびハードウェアを開発しているスタートアップ。独自の極小量子化技術を搭載した超消費電力AI推論アクセラレータIP「EFFICIERA」を4月に発表し、近日ライセンス供与を予定している。EFFICIERAのライセンスビジネスに向けて、現状の課題抽出と専門家による意見を求めるために2019年5月にIPASへ応募。

 メンタリングでは、自社技術の定義とビジネススキーム、ライセンスビジネスでの知財取得の重要性などのアドバイスが得られ、成果として、社内の知財体制の強化、ライセンスビジネスを支える知財形成、社内全体での知財意識の共有ができたとのこと。

 今後は、EFFICIERAのビジネスモデルに適した契約形態を構築し、独自技術を創出し続ける環境づくりに知財を活用していきたい、と意欲を述べた。

市川 茂氏(LeapMind株式会社)

製薬会社との共同研究・ライセンス提携における契約書と特許戦略を強化

 株式会社ブレイゾン・セラピューティクスは、東京大学および東京医科歯科大学の共同研究成果である脳内への薬剤デリバリー技術を、医療やライフサイエンス領域で実用化するために2015年に設立。同社は、薬剤デリバリー技術を製薬会社とのライセンス提携および共同研究により新薬を開発するビジネスモデルのため、契約書や特許の強化が課題だった。

 IPASでのメンタリングには、知財の担当者に加え、研究開発部長、臨床開発部長、ビジネスデベロップメントの担当者が参加。既存の取引先数社との契約書もチェックしてもらい、得られる特許料の相場観、特許に対する製薬会社の評価の視点についてのアドバイスが得られたという。

 代表取締役社長の戸須 眞理子氏は、メンターとのディスカッションで、知財だけでなく、ビジネスに対する視点が広がったのは大きな成果、と評価した。

戸須 眞理子氏(株式会社 ブレイゾン・セラピューティクス 代表取締役社長)

薬を使わずにがんを治療するナノデバイスの事業化へ向け、事業戦略に基づく知財を構築

 メディギア・インターナショナル株式会社は、日本初・世界初の薬剤なしでがんを治療するナノデバイス「腫瘍標的型低侵襲療法」を開発する東工大発スタートアップ。独自に開発した腫瘍封止ナノデバイス(MDX)で腫瘍の周囲を囲み、がん細胞の酸素と栄養を遮断することで抗腫瘍効果を得る療法だ。薬剤ではなく医療機器のため、認証までの期間が短く、比較的安価に提供できるのが特徴。

 現在の課題は、事業化へ向けて投資家からさらなる資金を獲得すること。IPASには、社内に知財担当が不在だったことから知財全般の相談を求めて応募した。競合調査、海外投資家への知財DDへ向けた知財戦略立案など幅広くアドバイスを受け、その成果として、顧問弁理士の確保、戦略的特許の見直し、基本特許の強化、PCT出願・各国移行を行なっているとのこと。

田中 武雄氏(メディギア・インターナショナル株式会社 代表取締役)

経営・研究開発・知財の3位一体で戦略を立案

 BionicM株式会社は、ロボット工学を応用し、さまざまなセンサーによって姿勢や動作を認識し、生体工学に基づいた制御でユーザーの動きをアシストする「パワード義足」を開発する東大発スタートアップ。

 IPASへの応募動機は、知財担当者がいなかったことと、中国での事業展開へ向けた知財リスクについて相談したかったため。IPASを通じて、知財戦略の立案、限られた資金での優先順位付けのサポート、中国への知財リスクに対しては、先行事例に基づく対策立案の支援を受けた。また、ニーズや長期計画に基づく戦略立案、事業計画や経営/開発と連動した知財戦略の立て方についてアドバイスを得て、シリーズAの資金調達に活かせたとのこと。

 ハードウェアスタートアップは、Jカーブが深く、初期コストがかかるため、効率よく資金を投資していくことが重要だ。経営戦略、研究開発戦略、知財戦略を統合的に進めることで、早期の黒字化や国内外との競争力の強化になる。スタートアップはできるだけ早い段階で知財戦略を構築することが大事だ、と語った。

関口 哲平氏(BionicM株式会社 取締役COO)

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