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成果発表会「IPAS2019 Demo Day」レポート

知財戦略の成果は?「IPAS」デモデイにスタートアップ11社登壇

2020年12月07日 09時00分更新

第2部 座談会:IPASの応募動機とメンタリング内容

 第2部の座談会は、2会場に分かれて同時配信された。A会場は、パイクリスタル株式会社、株式会社坪田ラボ、UBiENCE株式会社、株式会社セツロテック、B会場は、株式会社メタジェン、株式会社エー・スター・クォンタム、株式会社エイシングが各メンター陣とともに参加し、それぞれIPASへの応募動機やメンタリング内容、IPAS事業への要望などを語った。

 パイクリスタル株式会社は、「大企業とスタートアップとの協業を成功させるための知財戦略」と題し、トークセッションを展開。同社は、東京大学で開発された有機半導体単結晶技術をコアとして、柔らかく、薄く、軽く、低コストな有機半導体集積回路の商用化を目指している。セッションでは、大企業との提携を成功させるためのポイントとして、相手の選び方、契約・社内規定等体制の整備、特許ポートフォリオの構築について説明した。

(左から)特許庁 企画調査課 進士千尋氏、伊藤 陽介氏(元パイクリスタル株式会社)、山口 冬樹氏(Abies Ventures株式会社 マネージング・パートナー)、髙野 芳徳氏(内田・鮫島法律事務所 弁護士・弁理士)

 株式会社坪田ラボは、近視、ドライアイ、老眼に革新的なソリューションを開発する慶應大学発ベンチャー。同社は、すでに40以上の特許を出願しており、これらの知財を事業に活用するためIPASに応募。メンタリングでは、ビジネス上の優先順位やどの国に出願するべきかといった取捨選択のアドバイスを得て、特許費用を大幅に削減できたとのこと。

(左から)近藤 眞一郎氏(株式会社坪田ラボ 取締役CTO)、知念 芳文氏(メリットパートナーズ法律事務所 弁理士・弁護士)、大坂 吉伸氏 (株式会社グローカリンク 代表取締役社長)

 UBiENCE株式会社は、癌・アンメットメディカルニーズを適応症とする標的タンパク質分解誘導薬を研究開発するユビキチン創薬ベンチャー。同社のビジネスモデルは、共同研究と自社プロジェクトのハイブリッドモデルで、自社で臨床試験を含めたビジネス展開を目指している。そのためには、既存のプラットフォーム特許だけでなく、パイプラインごとに特許を積み上げていく必要があることからIPASへ応募。

 メンタリングでは、シーズごとの物質特許を取っていくための戦略、周辺特許の調査、出願に必要なデータについてのアドバイスを得たそうだ。

(上から)武内 博文氏(UBiENCE株式会社 代表取締役社長)、馰谷 剛志氏(山本特許法律事務所 弁理士)

 株式会社セツロテックは、受精卵エレクトロポレーション法を用いた遺伝子改変マウスを作製・販売する徳島大学発ベンチャー。新たなビジネスとして、ブランド豚など高付加価値品種の開発、ゲノム編集技術を提供するプラットフォーム事業を展開していくために必要な契約、大学で出願された知財の扱いについて相談するためにIPASへ応募。

 徳島大学で出願された特許は他社も権利者に含まれる共有特許であったことから、特許権をスムーズに譲渡してもらうための交渉方法のアドバイスを受けた。アドバイスを踏まえ交渉した結果、徳島大学から権利の一部を譲渡してもらう形で国内では事実上独占的に使える状態にできたという。

(左から)竹澤 慎一郎氏(株式会社セツロテック 代表取締役社長)、福田 伸生氏(バイオ・サイト・キャピタル株式会社 専務取締役)、奥野 彰彦氏 (SK特許業務法人 弁理士 代表社員)

 株式会社メタジェンは、独自の腸内環境評価手法「メタボロゲノミクス」を用いて個人によって異なる腸内環境を適切に分類し、タイプに合わせたアプローチで健康維持・疾患予防をする層別化ヘルスケアサービスの開発に取り組んでいる。IPAS応募の動機は、個人向けの腸内環境評価・層別化サービス「MGNavi」の事業化へ向けて、大学発知財の活用や事業計画に基づく知財戦略を構築するためのアドバイスを得たかったから。

 同社は、製薬事業、企業との共同開発、大学・医療機関の支援、個人向けサービスなど、複数の事業アイデアがあった。そこでメンタリングでは、事業の関連性と優先順位を付けるようにアドバイスを受け、事業を整理し、それぞれのスケジュールを立てたうえで必要な特許と取得のタイミングを考えていった。

 IPASの成果としては、事業内容が整理され、計画的に事業と知財戦略を進めていく、という考え方が社内に浸透したことを挙げた。また、製薬事業はMetagen Therapeuticsとして子会社化し、メンターの内山氏には同社の顧問弁理士として引き続き支援を受けているとのこと。

(左から)村上 慎之介氏(株式会社メタジェン 執行役員COO)、櫻井 昭喜氏(特許庁 スタートアップ支援チーム)、内山 務氏(内山務知財戦略事務所 所長・弁理士)

 株式会社エー・スター・クォンタムは、量子コンピューターのプラットフォーム、共通ライブラリを開発する会社として2018年に設立。同社は、量子コンピューターの基盤技術の確立と、物流業界の課題解決への活用に取り組んでいる。量子コンピューターは歴史が浅く、知財関係の事例が少なかったことからIPASへ応募。

 メンタリングでは、データからアウトプットされる何かがなければ、処理技術だけでは知財化できないと指摘を受けたのが大きな気付きとなったそうだ。技術者はアルゴリズムを重視しがちだが、知財の観点では権利行使をするうえでは、入力や出力部分が重要。同時に、入出力部分はユーザーとの接点でもあるため、これを掘り下げていくことは顧客への訴求にもなる。IPASの成果としては、米国特許の調査も行ない、プラットフォーム化への計画がより具体的になったとのこと。

(左から)竹本 如洋氏(瑛彩知的財産事務所 代表弁理士・米国弁護士)、櫻井 昭喜氏(特許庁 スタートアップ支援チーム)、大浦 清氏 (株式会社エー・スター・クォンタム 取締役兼CMO)

 株式会社エイシングは機械制御特化した超高速エッジAIを研究開発するスタートアップ。機械への組み込み型のため、大手メーカーとの共同開発により、ライセンスを提供するのが同社のビジネスモデルだ。このライセンスビジネスを展開していくにあたり、国際出願の優先順位とビジネス戦略に基づく知財戦略へのアドバイスを求めてIPASに応募。

 ビジネスメンターの池岡氏からは、どこをターゲットにしていくのか、どの業界なのかといった質問を投げかけ、代表の出澤氏が自ら考えて答えを出していくスタイルの壁打ちメンタリングを実施。知財メンターの大石氏は、大企業とのライセンスにおける、瑕疵が生じた場合の責任の補償についての落としどころといった契約内容についてアドバイスした。

 IPASの成果として、知財を活かして最大限の利益を出すためのアイデアが考えとしてまとめられたことと、顧問弁理士とは違うセカンドオピニオンとしての客観的なアドバイスがもらえて、安心感が得られたことを挙げた。

(左から)出澤 純一氏(株式会社エイシング 代表取締役)、櫻井 昭喜氏(特許庁 スタートアップ支援チーム)、大石 幸雄氏(TMI総合法律事務所 パートナー(弁理士))、池岡 亮氏(株式会社BDスプリントパートナーズ シニアコンサルタント)

 スタートアップは特許技術を持っていても、どうすればそれを事業に活かせるのか判断が難しい。IPASに参加すると、ビジネスと知財の専門家からのアドバイスが受けられるだけでなく、競合調査なども無料で利用できる。知財に悩みのあるスタートアップは応募してみては。

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