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「第15回 横浜ベンチャーピッチ」レポート

手洗いの3D画像認識など、コロナ禍における食・健康を支える新技術

2020年10月13日 09時00分更新

 2020年8月27日、横浜市経済局は、横浜市・関内のベンチャー企業成長支援拠点YOXO BOXにてピッチイベント「第15回 横浜ベンチャーピッチ」をオンライン開催した。横浜ベンチャーピッチとは、スタートアップ企業がベンチャーキャピタルや金融機関、事業会社等に対して、自社の事業計画やビジネスモデルをプレゼンする機会を提供し、資金調達や事業マッチングを促進させ、更なる成長・発展に繋げることを目的としたもの。通算15回目を迎える今回は、「コロナ禍における食・健康に関する分野」をテーマに、5社のスタートアップが登壇した。

 横浜市では、2019年1月に「イノベーション都市・横浜」を宣言し、オープンイノベーションやスタートアップ支援に力を入れている。2020年7月には、国の「グローバル拠点都市」にも選定され、横浜ならではのスタートアップ・エコシステムの構築を目指している。横浜ベンチャーピッチは成長・発展を目指すベンチャー企業への、さらなる事業の拡大の機会提供を目的としたもので、今年度は8月、12月、2011年2月の計3回開催される予定だ。

 今回のテーマは、「コロナ禍における食・健康に関する分野」をテーマに、プレイライフ株式会社株式会社アルファメイル株式会社Acculusジャパンエナジーフード合同会社Creation City Lab株式会社の5社による各7分のプレゼンテーションが実施された。

テレワーク時代のオンライン体験型サービス「バヅクリ」

 プレイライフ株式会社は、テレワークで社内のコミュニケーションやつながりが低下している会社向けに、オンラインで体験できる遊び・学びでつながれるプログラム「バヅクリ」を提案。アナウンサーが教えるプレゼンのワークショップ、焚火を囲んで語り合うチームビルディング、寿司職人が教える寿司握り体験、理解力や表現力を上げるグラフィックレコーディングなど、約100種類のプログラムをZoomやMicrosoft Teamsでオンライン開催している。

 社員やチームのメンバーが一緒にオンラインのワークショップや講座に参加することで、テレワークによるコミュニケーション不足を補い、生産性の低下の防止にもなる。7月1日から開始したばかりだが、すでに約40社がプログラムに参加し、内定者のフォローや中途・新卒社員のオンボーディング、コロナ疲れのストレスケアとしても活用されているそうだ。料金は会員権制で、月額19万8000円(ライトプラン、半年最大7回開催)~。企業におけるコロナ禍での福利厚生プログラムとしても期待が持てる。

プレイライフ株式会社 代表 佐藤 タイチ氏(上から2番目)

科学的根拠に基づく男性向け高機能サプリメントを開発

 株式会社アルファメイルは、周りに相談できない男性の性機能の悩みを改善するハイエンドサプリメントを開発・販売している。日本人男性の3人に1人、50歳以上は過半数がEDと言われており、少子高齢化や生活の質にも影響のある深刻な問題だ。その社会課題解決を図るため、2018年にCamelback株式会社を設立し、性の悩みを解決するメディア「STERON」を運営しているが、既存のサプリは怪しげなモノばかりだったことから、D2C事業として新たに株式会社アルファメイルを設立。成分には、海外の臨床試験でエビデンスがある成分のみを厳選した処方で、一酸化窒素分泌による血流促進やテストステロンの上昇、小腸活性化による吸収率アップといったメカニズムのある成分を採用している。

 2020年2月より第1弾の「スパルトT5」を発売し、半年間で1日平均41万円、利益率58%を達成しているとのこと。今後は、年内に第2弾の商品を発売し、来期以降は資金調達を経て、商品ラインアップを増やしていく計画だ。

株式会社アルファメイル 代表取締役社長 渡邉 洋樹氏(上から3番目)

ウイルス対策に欠かせない手洗いをカメラで画像認識

 人物の動作を認識する画像解析AIと応用製品を開発する株式会社Acculusは、手洗いをカメラで認識する技術について発表した。ウイルス対策として手洗いが励行されているが、手の甲や指先に洗い残しが起こりやすい。2020年6月に施行された改正食品衛生法では、食品を扱う事業者では、食品を製造する手順の見える化・記録するHACCP(ハサップ)が義務化され、手洗いを客観的に評価するためのニーズが高まっている。しかし、従来のカメラを用いて手の動きを認識する製品では、両手が重なる手洗いの動きは検出が難しく、正確には判定できていない。

 同社は、両手の3次元位置・形状を深層学習技術を用いて復元し、手洗いの動きを判別する技術を開発。手洗い中には洗い残しを3次元で判定し、CGでディスプレイに表示する仕組み。現在は開発中で、実用化へ向けて、共同開発や協業企業を募集している。

株式会社Acculus 代表取締役CEO 笹尾 幸良氏(上から3番目)

甘くなくて手軽に食べられる玄米×味噌シリアルバー

 江戸時代の庶民が食べていた和食は、玄米と味噌が中心。玄米は、食物繊維とミネラルを豊富に含み、大豆を発酵した味噌には、必須アミノ酸とビタミン、イソフラボンが含まれており、非常に栄養バランスがいい。加工食品を企画・販売するジャパンエナジーフード合同会社は、こうした和食の良さを間食として手軽に取り入れられる「玄米×味噌シリアルバー」を開発。「やさしい味噌」、「さっぱり梅かつお」、「しっかりカレー」の3種類を1本275円で発売している。シリアルバーのバリエーションとして、オフィス向けのコンパクトタイプを今秋発売予定で、非常食向けのロングライフ、ビーガンやハラル向けも開発中だ。新製品としては、アスリート向けの栄養補給ゼリー、抹茶エナジードリンク、和の完全食などの開発にも取り組んでいる。

ジャパンエナジーフード合同会社 代表社員 相澤 和宏氏(上から3番目)

企業の課題をクリアすると報酬がもらえる「temite」

 日本の広告費は延年増加傾向にあるが、実際に集客やPRにつながっているのか十分な効果検証ができていない。Creation City Lab 株式会社が開発する「temite(テミテ)」は、課題と報酬による問題解決プラットフォーム。企業は、SNS投稿やアンケートへの回答、商品の試用といったタスクを設定してアプリで募集、一般消費者は商品を購入してタスクをクリアすると、amazonギフト券やLINE Payなどの電子マネーで報酬がもらえる仕組み。一般消費者は店頭価格で商品を購入するため、クーポンや割引とは異なり、商品価値を毀損しない。サービスの利用料や報酬はタスクをすべてクリアした人数に対してのみ発生するので、費用に対するSNS投稿やアンケート回収率は100%だ。広告宣伝だけでなく、賞味期限の短い商品の購入をタスクに設定すれば、店頭で値下げをしなくても購入を促すことができ、食品ロスの削減にも役立ちそうだ。現在はスマホ用アプリとして提供しているが、ウェブ化に向けて開発を進めている。

Creation City Lab 株式会社 代表取締役 小野 慎太郎氏(上から3番目)

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