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ハイレゾCDも採用するフォーマット

世界初のMQA対応ヘッドホンは、なぜゲーミングヘッドセットだったのか?

2020年09月14日 20時00分更新

 DAC ICとは書いたが、ESS TechnologyのES9281は分類すると、CODEC(コーデック) ICとなる。CODECは一般的に“圧縮・伸張アルゴリズム”のことを差すが、ここではA/DコンバーターとD/Aコンバーターの機能を兼ね備えたICのことだ。

 スマートフォンで主に用いられるが、これはマイク(A/D変換)とスピーカー(D/A変換)の両方が必要だからである。また、CODEC ICは、音声処理以外にも用いられるので、特に音声処理用に使うチップを“オーディオCODEC”とも呼ぶこともある。

 ES9281は、USBコントローラーとESSのSABRE(セイバー) DAC機能をもったCODEC ICということになるが、2.0Vrms出力と強力なヘッドホンアンプも内蔵している。こうしたワンチップソリーションは小型化が要求されるヘッドセットには最適だ。

 それに加えて、ES9281はMQA対応がなされている(MQAレンダラーを内蔵する)。これはAstell&Kernの「A&futura SE200」が採用した「ES9068」の流れをくむものだ。

 ただし、MQAレンダラーなので、単体ではMQA対応ができない。前段に「TIDAL」や、アリババの音楽ストリーミングサービスである「Xiami Music」用のストリーミングアプリ、もしくは「Audirvana」「Roon」など、MQAのソフトウェアデコードに対応した、PCソフトウェアを必要とする(MQAデコードの仕組みは過去記事を参照)。

 そのため、ゲーミング用途において、MQAの特性を活かすことは難しいかもしれない。

 おそらくASUSは、MQA対応をメインの特徴とするためにES9281を採用したのではなく、従来モデルのROG Deltaで「ES9218」を採用していたので、その進化版としてES9281を採用したのではないだろうか。このDACの特徴は4ch出力ができることで、その合算処理によって高いS/N比が得られる(低ノイズ化できる)。DeltaのES9218のS/N比は127dBだったが、最新のES9821Proであれば130dBもの高いS/N比が得られると言われている。

 これはASUSが解説しているが、FPSゲームで使うゲーミングヘッドセットにとって、S/N比は重要な仕様である。S/N比が高ければ、敵の足音から敵の位置を正確に把握したり、戦場での銃撃や爆発の場所を絞り込んだりしやすくなるという。

 以前紹介した、Audezのゲーミングヘッドセット「Penrose」では、敵の位置を把握するために、3Dサウンドを活かそうとしていたが、ASUSでは同じ目的を達成するためにS/N比を高めようとしたと考えられる。

 ゲーミングヘッドセットというと、音質だけでなく、デザイン性やPCと周辺機器でブランドを統一したいなど、さまざまな選び方があるが、こうした点もゲーミングヘッドセットを選びの際に、ちょっと頭をよぎらせてみると面白いのではないだろうか。

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