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自動運転の基礎 その22

自動運転レベル3の自動車保険はどうなるのか?

2020年09月01日 10時00分更新

自動運転の進化とともに
周囲のビジネスも変わっていく

 自動運転技術の進化のステップで、現在のところ次に実用化すると見られるのがレベル3だ。レベル3の自動運転とは、定められた運転環境のもとで、システムがクルマの運転タスクのすべてを担当することを示す。このとき、人間のドライバーはハンドルやアクセル&ブレーキ操作だけでなく、周囲の監視からも解放されるのだ。しかし、何らかのトラブルや問題が発生して、システムがギブアップしたときは、すぐに人間のドライバーが運転操作に戻ることが求められる。

 レベル2の場合は、システムが運転タスクを実行していても、ドライバーは周囲の監視という仕事を続けなければならなかった。そして、その1つ上のステップとなるレベル3では、監視さえもしなくてよくなることを意味している。手放しできるレベル2が「ハンズオフ」であり、目をはなすことができるレベル3は「アイズオフ」とも呼ばれる。

自動運転のレベル一覧表

 そんなレベル3は、現在のところまだ実用化されていない。しかし、今年になって日本でもレベル3の車両のレギュレーションや事故の際の責任の所在(レベル3での走行中でも、責任はドライバーがとる)も定められた。あとは、実際にレベル3を実現できる技術を備えた量産車の登場を待つばかり。まさに、レベル3実用化直前と言える状況となっている。

 そこで登場したのが「レベル3に対応する自動車保険」だ。

 あいおいニッセイ同和損保は、2020年7月末に自動運転モードでの走行中(レベル3以上)に対応した保険を開発し、2021年1月以降保険開始契約分より提供すると発表した。それが同社の「タフ・つながるクルマの保険」だ。この保険は、日本初のテレマティクス自動車保険として2018年から、すでに発売されているもの。そのバリエーションとして、レベル3以上の自動運転に対応した保険を開発したというのだ。

 「タフ・つながるクルマの保険」は、クルマに搭載された通信機能を使って走行状況をモニターし、その内容次第で保険料が変わるというのが特徴だ。保険料は1年間不変の「基本保険料」と、月々の走行状況によって変化する「運転分保険料」の2つの合算となる。月々の走行距離が少なく、安全運転スコアが良いほど「運転分保険料」が安くなるという仕組みだ。保険料は毎月変動するため月々払いが基本となる。

「タフ・つながるクルマの保険」イメージ。あいおいニッセイ同和損保のサイトより

 この「タフ・つながるクルマの保険」は、テレマティクス機能を使ってクルマの走行状況を把握できるということで、そのまま自動運転モード(レベル3以上)で走っている距離や時間も割り出すことが可能だ。そして、その「運転走行分保険料」の中で自動運転モード(レベル3以上)の走行分を無料にするという。ちなみにベース料金となる「基本保険料」まで安くするものではない。つまり、自動運転モード(レベル3以上)の走行が増えるほどに、運転走行分保険料が安くなる。そして、あいおいニッセイ同和損保は、この方式をビジネスモデル特許として申請中だという。

あいおいニッセイ同和損保のリリースより

 ちなみにレベル3での自動運転モード中の交通事故の責任は、基本的にはドライバーのものとなる。そのため万一の事故の時は、ドライバーがかけている自動車保険が適用される。つまり、レベル3が実用化されようとも、従来の保険で十分にカバーできるのだ。しかし、それではユーザーにとっての保険の面でのメリットはない。そんなところに、「自動運転モードで走行した分だけ割り引く」という保険が登場した。これは、レベル3以上の自動運転が可能な車両のオーナーにとっては、非常に魅力的に見えるだろう。

あいおいニッセイ同和損保のリリースより

 そもそもレベル3の自動運転は、人間のドライバーよりも安全性が高くなくては実用されない。つまり、レベル3の自動運転で交通事故が減ると予想される。そうなれば保険会社の負担は減り、その分、保険料を安くすることが可能だ。安くできる分をユーザーに還元することで、保険会社は獲得数を伸ばすことができる。自動運転技術を上手に使った、誰もが損をしないビジネスだ。

 ただし、レベル3を実現した車両すべてに対応するというわけではないのが残念なところ。レベル3が実用化されれば、その安全性の高さを生かした、新たな自動車保険商品が登場することだろう。自動運転技術の進化にあわせて、周辺のビジネスも進化する。それが自動運転技術の特徴でもあるのだ。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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