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国内唯一のNAND型フラッシュメモリー開発メーカー、キオクシアのSSDをレビュー!

国内初参入のキオクシア製SSD「EXCERIA PLUS SSD」「EXCERIA SSD」「EXCERIA SATA SSD」の実力を検証

2段階のサーマルスロットリングで急激な速度低下を防ぐ

 興味深い結果となったのが、EXCERIA PLUS SSDとEXCERIA SSDの速度と温度推移だ。両者はいずれもヒートシンクなしの状態で使用すると5分間のシーケンシャルライトによって最大温度が70度を超え、72度を超えたところからサーマルスロットリングによる速度低下が発生した。だが、注目したいのはそこではなく、EXCERIA PLUS SSDとEXCERIA SSDのサーマルスロットリング発動時の挙動に工夫が凝らされているところである。

 両者はともにサーマルスロットリングが発動した場合に、急激な速度変動によって温度調整を行なうのではなく、できるだけ速度を維持し、比較的緩やかに速度が落ちるように調整されているのだ。車に例えるなら、急ブレーキを行なって温度が下がったら、急加速を行なうのではなく、軽くブレーキを踏んで速度を落とし、余裕ができたら少し加速するといった感じの調整がなされている。

EXCERIA SSDの速度(左の縦軸)と温度(右の縦軸)の推移グラフ。ヒートシンクありで使用すると温度上昇が抑えられ、SLCキャッシュが切れた後も同じ速度で記録できている。このことから、ヒートシンクなしの状態でサーマルスロットリングが発生していることがわかる

EXCERIA PLUS SSDの速度(左の縦軸)と温度(右の縦軸)の推移グラフ。EXCERIA SSDと同様、ヒートシンクありで使用すると温度上昇が緩やかになり、SLCキャッシュが切れた後も同じ速度で記録できている

 この調整が特に顕著に出ているのが、EXCERIA SSDのグラフだろう。EXCERIA SSDは72度に達した段階から速度が比較的緩やかに低下していき、77度まではしばらく同じ速度でデータの記録を行なうといった挙動が見て取れる。このことから急ブレーキと急加速を行なうのではなく、できるだけ高い速度を維持できるように調整されているのがわかる。

 実はEXCERIA PLUS SSDとEXCERIA SSDはサーマルスロットリングの発動のしきい値となる温度が2段階設定されている。第1段の発動は72度。第2段は78度である。そして、第1段のサーマルスロットリングは比較的緩い温度調整が行なわれるようになっており、第2段はより強力な温度調整がなされるようになっていると見られる。もちろん、サーマルスロットリングによる温度調整は発動しないほうが良いに決まっているが、発動した場合でもできるだけ速度を維持するように調整されているのは、さすが老舗SSDメーカーと言ったところだ。

まとめ:さらに混戦状態となったSSD市場、キオクシアの今後に期待

 キオクシアは国内唯一のNANDフラッシュメモリーの開発製造メーカーであるだけでなく、東芝時代から含め、黎明期からSSDの開発製造を行なってきた老舗SSDメーカーでもある。さらに言うなら、同社はコンシューマーからエンタープライズまで全領域のSSDの開発・製造を手掛ける国内唯一の大手メーカーだ。そんな同社の国内市場初参入となる製品はこれまでの知見を存分に生かした、堅実で手堅い作りの製品に仕上がっている。

 EXCERIA PLUS SSDはPCI Express 3.0×4対応SSDの中ではトップクラスの性能を実現しているだけでなく、使用感も高いフラッグシップにふさわしい性能を備えている。また、メインストリーム向けのEXCERIA SSDは最速クラスの性能ではないものの、必要十分な性能を備える。コストパフォーマンスの高い本製品は海外でも定評があり、NVMe M.2 SSDの入門向けとして狙い目の製品と言えるだろう。

 エントリー向けのEXCERIA SATA SSDはDRAMレスと割り切った設計だが、HDDからのアップグレードやデータ保存用のSSDとしては導入しやすい価格設定だろう。また、寿命の推測やファームウェアアップグレード、Secure Eraseなどを行なうための同社製SSD専用ツール「SSD Utility」(同社のウェブサイトから入手可能)も用意されており、SSDを運用する上で便利な環境を整えられるのもポイントだ。

 現状の課題を挙げるとすれば、今回紹介した製品がAmazonでしか購入できないことであろう。「キオクシア」ブランドのSSDは製造をキオクシアが行ない、国内での販売及び製品のサポートは大手周辺機器メーカー「バッファロー」が行なっている。流通の改善を含め、今後のキオクシアの展開に期待したい。

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