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「Mi Band 5」と新型コロナで私の生活はどう変わったか「ロケーション履歴」でわかったこと

2020年07月30日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

スマートリストバンド市場をけん引するXiaomiの最新モデル「Mi Smart Band 5」。

安い、はやい、小さい、技適も通っている

 スマートウォッチ(Apple Watchみたいな腕時計型)とスマートリストバンド(いわゆるリストバンド型)は、どちらが市場にたくさん流れているかご存じだろうか? だいたい同じくらいの数で推移しているのだが、2019年の伸び率では2対3でリストバンド型だった(IDCによるスマートウォッチが22.7%、リストバンドは37.4%の対前年比出荷数)。

 メーカー別では、Apple Watchのアップルが別格なのは変わらないだろう。シェアは40%を割ることもでてきたとはいえ内容とポジションは不動だ。単純に出荷数でみると、リストバンドに注力しているXiaomiが目立っている(canalysによるとウォッチとバンドを合わせた出荷数シェアで2019年3Qはアップルの15%に対してXiaomiが27%と逆転というデータもある=Xiaomiは70~80%がリストバンドで四半期に800~1000万台売っているという)。

 リストバンドが買われる理由は、ウォッチより小さいのでさりげなくスポーツやヘルスケアに使えるからだ。アップルの社内では「Apple Band」の発売が議論されているに違いない。ちょうど、00年代にiPodを出したあとiPod miniやshuffleやnanoを出したようにだ。実際、miniやnanoでよかった人も少なくなかった。Mi Band シリーズは2000~4000円台という手ごろさである。

 新型コロナ下での生活で必要が生じたものについては、「自宅リモートワークのためにデジタル機器を買う」でいちど書かせてもらった。その後、私がゲットして使いはじめているのがXiaomiの「Mi Smart Band 5」(以下Mi Band 5)というわけだ。国内発売は公式にはアナウンスされていないが、画面の奥を掘っていくと技適マークがあり、少なくとも国内で問題なく使える製品である。

Xiaomi のスマートバンドにして活動量計の「Mi Smart Band 5」の1.1インチで124×294ドットの画面は超小型コンピューターな気分満載だ。

 Mi Band 5だが、本体重量が12.1グラムしかない(バンド含まず)。今年1月に、新型コロナでニュースにも登場する愛知県にある藤田医科大学まで出掛けてカプセル内視鏡の誘導について取材させてもらった。そのとき見せてもらった360度カメラ付きカプセルは、11×31ミリ、重量は5グラムだった(イスラエル製)。そろそろ、ウェアラブルの次ですか? などと言いたくなってくる(Mi Band 5は5ATM防水)。

 私が、Mi Band 5でやりたいのは睡眠の記録である(歩数など活動量はもちろんだが)。睡眠に関してはいままでモバイルヘルスの草分けWithingsのGOやMoveなどのウォッチ型の活動量計を使って満足していた。Withingsのバッテリを交換することなく何カ月も持つというのは私のようなズボラな人間にはサイコーである。今回、Mi Band 5に手を出したのは14日間のバッテリ駆動でどこまで使えるか自分のほうを試してみたいというのがあった。

 睡眠のモニタリングに関してはスマホアプリもあるがベッドの上に置いて使うとなると「仮眠」が拾いにくい。Withingsは「昼寝」を割とちゃんと自動認識してくれたのを重宝していたのだが、そこはXiaomiのお手並み拝見というところだ(いまのところその効果は体験できていないのだが)。ほかには、Mi Band 5の面白い機能として、ストレスの計測、PI(適切な運動量の目安)、長時間椅子に座っているとアラートがくるなんてもある(椅子から立って伸びをするアニメーションが癒される)。

 Mi Band 5に期待したいのは、この種のデバイスでとても重要だと思う使い勝手がどこまで洗練されるかだ。要するにデバイスの操作、スマホに結果を取り込んだあとの閲覧・分析・アドバイスのわかりやすさだ。ここをいちばん分かっていたのは、まさにWithings やPebbleだと思うが、えてして世の中はそうでないほうを選びがちなのだ。

 Xiaomiのスマートフォンを使ったことのある人は、よくご存じだと思うが、同社のスマホはほどよくギークでそれでいて初心者にもわかる親切さがある。Mi Band 5と対応スマホアプリのMi Fitに関していえば、ことさら他よりよいわけではなく今後に期待という範囲だが、日本の家電製品と連携するアプリとはまるで違う分かりやすさだ(関係者の方々すいません=日本の製造業はこれで沈没すると私はまじめに思っている)。

 当然のことだが、WithingsもMi Bandも、Googleのスマホアプリである「Google Fit」と連携 できるようになっている。

Mi Bandと連携するアプリMi Fit。睡眠の状況は、他のユーザーと比較される。なんとなく「消灯」って感じで他のみんなと一緒に寝なさいと言われている気分になる。

体を動かすことに関しては、現実とイメージの間に想像以上のギャップがある

 このMi Smart Band 5を買ってみようと思ったのには具体的なきっかけがあった。私は、Withingsのスマート体重計を使って健康管理をしているのだが、3月後半にBMIや体組成の値がここ数年の中ではピークといえる値まで上がってしまっていた。プライベートなことなので詳しくは触れないが、これが「コロナ太り」なのか? たとえはよくないが、感染拡大のようになすすべもなく数字が上がっていく。

 たしかに2月くらいから外出が減っていた。出社してもそこから積極的に外出したり、帰る途中でどこかに寄るという行動パターンが少なくなった。そして、コロナが怖いので電車通勤から自転車に切り替えた。「文京シティサイクル」(ドコモのシェア自転車)なので、いわゆる電動アシストだが、往復で毎日1時間ほど体を動かしていたはずである。

 ところがどうだろう? その2月中旬から私のBMIと体組成はどんどん数値が上がっていくのである。もちろん、ひたすら食べはじめたというのでもなく、むしろ外食・会食は減っていてこれは納得がいかない。

 そこで、思い当たったのがGoogleの「ロケーション履歴」である。Androidで位置情報を使うアプリを使っている人は、これが「ON」になっていることが多いと思う。1日ごとのアクティビティ(徒歩、自転車、バス、地下鉄、電車、飛行機など)の所要時間や距離、それと地図上での移動状況が記録されている。ウェブブラウザからアカウントにログインした状態で《アクティビティを管理》にアクセスすると出てくるはずだ。

毎日の行動が移動ルートと立ち寄り地点で時系列に記録される「ロケーション履歴」。これぞライフログというべきものだが、交通費の清算などに重宝している人も多いでしょう。

 「ロケーション履歴」は、まとめてダウンロードすることができる(json形式)。訪問先も位置情報から特定できた場合は店名なども入る。自分で「このお店はナイルレストラン」などと画面上で修正して教え込ませることもできる。今年、3月に簡単なPythonプログラムを書いて「ロケーション履歴」を集計してみたばかりだったのだ。たとえば、2013年8月から2020年3月までの6年7カ月の間に、私が出かけた飲食店を集計したところ、次のような結果になった。

1.アジャンタ(麹町)221回
2.パンチマハル(神保町)176回
3.贊記茶餐廳(飯田橋)135回
4.海南鶏飯(水道橋)120回
5.デリー(御徒町)77回
次点.HINATA-YA(神保町)59回

 スマートフォンの位置情報データという性格上漏れがあることは十分に考えられる(GPSなど位置情報の取得をOFFにしていたり、スマホを持ってでかけるのを忘れたり)。1位のアジャンタは、79カ月の間に221回ということは、11日に1回行ったことになる。もっとも、1980年代から1990年代のなかばにかけては、お店で週3回、月刊アスキーの夜食では毎日のように食べていたのでだいぶペースが落ちたというのが私自身の感想なのではあるが。

 こんなふうに自分の《生態》がわかるロケーション履歴なので、今回は、私の健康にかかわることを調べようというわけだ。集計対象期間は2017年10月~2020年6月とする。とくに、新型コロナ以降、私のライフスタイルで大きく変化したのは《移動手段》なので、それについて集計してみる。その結果が、次のグラフである。

2017年10月~2020年6月の私のロケーション履歴集計結果。移動手段別の所要時間。

 ここでは、比較しやすい《所要時間》で集計したデータをご紹介する。徒歩、自転車、自動車、バス、地下鉄、列車/電車、飛行機の変化の具合を日々のデータを1カ月ごとで合算したものだ。まあ、自分では最初から分かっていたのだが、次のように取り出して強調するとハッキリ見える。

移動手段別の所要時間で公共交通はほぼゼロになったものも。

 リモートワークとなった4月以降、地下鉄、列車/電車、バスの利用がほぼゼロに近づく。具体的な数字では、3月の地下鉄が12分でたしかに3月12日(月)は雨のため自転車ではなく地下鉄で市ヶ谷のオフィスまで南北線で移動した。列車/電車は、3月16日につくば大学の青砥隆仁氏に「柔らかさを撮るカメラ」の取材にでかけたのが効いてほかと合計して313分といった具合だ。

 ふだんの足として地下鉄とは対照的に増えたのが《自動車》である。コロナ時代には自動車があることがとても重要な意味を持ってくる。知らない人との接触をできるだけ減らして移動するには乗用車のカプセル性は安心感がある。もっとも、ものすごく自動車に乗っていたのかというと、所要時間では数字的にコロナ以前より少し伸びている程度だった。これは、コロナの影響で自動車での移動範囲も小さくなったからだろう(たとえば夜中に六本木トーホーシネマズまで車で行って映画を見るなんてことがなくなった)。そして、興味深いのが次の《徒歩》と《自転車》と《自動車》の関係だ。

自分で移動する交通手段の変化。

 さきにもふれたとおり、2月、3月は、まだ出社していたのでシェアサイクルの電動アシスト自転車で市ヶ谷のオフィスに通うことにした。3月に《自転車》がニョッキリ伸びているのはそのためだ。ところが、4月になるとリモートワークになるのでこれも急激に減少することになる。

 見逃してならないのは、1月以降《徒歩》がどんどん減っていたことだろう。いろいろなことがジワジワと効いて、電車、地下鉄から自転車に切り替えたことでいよいよ歩かなくなっている。シェア自転車のポートが自宅や会社に近すぎるのだ。

 これはけして文京シティサイクルがわるいのではない。けれど、シェア自転車のアプリは「あなたは1日1万歩以上歩くべきだから家より少し手前の次のポートに自転車を返してそこから先は歩きなさい」とアドバイスしてくれてもよいかもしれない。ドコモは、モビリティとヘルスケアを一緒に考えてくれるとよいと思う(シェアサイクルに関してはもっと現実的なところでユーザーとして言いたいこともあるが)。

 3月後半の「コロナ太り」にショックを受けて、ひたすら歩いてたり軽いジョギングをはじめたのが4月である。1日1万歩を超える日も少なくないのだが、このグラフを見てまた驚いた。かなり一所懸命歩いているつもりなのに、コロナがはじまる1月以前よりも歩いていないのだ! 1月以前は、とくにたくさん歩こうとなどと意識していなかったのに、そのときよりも歩いていないなんて、現実とイメージの間に想像以上のギャップがある。

 結論をいえば、全体的に私の活動量が減ったということだということだ。私は、相対的に動かなくなっていたのだ。変温動物のように環境によって動かなくなっていた。これは、感染拡大を抑える意味では正しい。そうだとしたら、私は、活動量にあわせて摂取するエネルギーも落とすべきだったのか?

 たぶん個人に関してはそれが正しいとして、社会や経済や世の中全体の活動量としてみるとどういう結論になるのだろう。そもそも、1980年代以降の世界の繁栄は、単に我々が睡眠時間を減らして、多くのものを消費して、そのために地球を痛めつけて、ときには自分もよく分からない状態になりながら、ひたすら多くの時間働いていただけなのかとも思える。

接触確認アプリを入れよう‎

 Googleの「ロケーション履歴」について書いたので、誤解をまねかないよう厚生労働省が提供する「接触確認アプリ」(略称COCOA)について触れておきたい。これは、「ロケーション履歴」のように場所と時間を記録するものではない。同じ場所に一定時間いた人たちをあとから辿れるように紐づけだけしただけのものである。その人に「感染者と一緒にいましたよ」と知らせることはできるが、その人の個人情報的なものは一切とられていない。

 世界的にも利用されている感染確認アプリによって感染拡大がどれだけ抑えられたかのきちんとしたデータは見かけない。だから、これに頼りきるのはおかしい。しかし、この10年間に我々の生活を変えたスマホの力を過小評価すべきではないと思う。「感染者と一緒にいた」ことが分かるか分からないの差は大きい。感染したときに「ボク感染したけどキミも検査したほうがいいよ」というのは人の命を救うことにもなる

 アプリは人に勧められて入れることが多いから、隣にいる自分が大切にしたい人に勧めるとよいのではないか。せめてデジタル業界にいる我々はもう少しこのアプリのことをアピールしたいと思うのだがよい方法はないものか?

接触確認アプリは自分に安心を与え人の命を救う可能性がある。

 最後にアプリのサイトへのリンクを貼っておきます(新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Application)。


 

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667
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