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圧倒的な没入感が得られるというスピーカー「SA-Z1」を自宅で聞いてみた

2020年06月16日 17時00分更新

緻密な再現だが、一定のスケール感の中でという面も

 低域は51Hz(-10dB)までとのことだが、ワイドレンジなオーケストラ曲などを聴くと、低域の量感については少しもの足りなさがある。スピーカーで囲まれたバーチャルなステージ内でのバランスと割り切れば、適切なものに思えるが、スピーカー再生のような包み込まれる感覚を期待すると少々肩透かしを食らうかもしれない。

 SA-Z1は密閉型であるため、もともと低域は引き締まっているが、普通のスピーカーの感覚で聴くと、バランス的には少し腰高な感じがある。中域と高域の情報量が極めて豊富なため、より一層そう感じる面があるかもしれない。

 ここで一考。スピーカーの背面にボードを立てて、壁に見立ててみた。音作りの際に、壁や机の反射も考慮に入れているという開発者のコメントを思い出したためだが、これはなかなか効果があった。量感が少し改善される。オープンなスペースにポツンと置くよりも、壁際でかつ左右も多少囲った方がいい結果が出そうだ。

 また、気になる机からの反射については、布地を引いて抑えることにした。また、左右の間隔については、耳で聴いて適切なところを探るしかないが、ここも結構な差が出てくる印象だった。スピーカーの後方にステージが広く展開するタイプではないので、基本的には広めの間隔で置いた方が良さそうだ。間を詰めれば、音の密度感が高まるが、空間は狭くなる。

動作モードによる音の変化を楽しむ

 ……などと、設置の試行錯誤をしながら、雰囲気がつかめてきたところで、本体側の調整機能を試してみた。

 SA-Z1の左側スピーカー(標準時、設定で右にもできる)には4つのツマミが付いており、ツィーターやアシストウーファーの動作を変更でき、合計で2×2×3×3=36通りの動作モードが選べる。標準状態では、モニター的で解像感が高い、お手本のようなサウンド(生真面目な感じがする)だが、つまみをいじることで、ちょっとしたニュアンスが乗っていく。

 筆者の好みとしては、D.A. ASSISTをブレンデッド、A.WF MOTIONをACTIVE、A.W FREQ RANGEをSTANDARD、A.TW TIME ALIをDELAYにしたポジション。適度な柔らかさと、音の広がりがでて、リラックスして聴ける。

 また、ウォークマンでおなじみの「DDSE HX」や「DSDリマスタリングエンジン」も利用できる。DDSE HXは圧縮音源を高音質にする補間機能で、ハイレゾ音源を再生する場合は、切った方がストレートな鳴りとなるが、DSDリマスタリングエンジンはPCM音源にアナログ的な質感が乗って滑らかな再現になるので、好みによって使い分けるといいと思う。

スケール感は望めないが、緻密さと立体感という魅力がある

 以上、大雑把ではあるが、自分なりに何となく納得できたので、参考までにフロアスピーカーとの違いも試してみた。スピーカーまでの距離も違うし、ふだん使っているのは、カタログスペック的には22Hz(±3dB)まで出る密閉型スピーカーなので、低域再生能力に関してはやはり分が悪く、特にオーケストラ再生では、スピーカー特有の音に包みこまれる感じやスケール感にだいぶ差が出た。しかし、SA-Z1では、大型スピーカーでは埋もれてしまいがちな中域~高域の音がかなり際立って聞こえるのはメリットと言える。

 フロアスピーカーのほうも、素の情報量はかなり高い方だと思うが、楽器の数が増え、響きに複雑になってくると、やはり部屋の反響や距離の影響があって、解像感や明瞭度が落ちているのだと実感した。SA-Z1の「究極の解像感」といううたい文句も大げさではないだろう。

 また、SA-Z1の体験は、ブックシェルフ型など比較的小型のスピーカーやデスクトップ向けスピーカーとも体験の質が違う。自分の斜め下に空間を作るという感覚がより近いかもしれない。ある程度スケールダウンはするが、この空間の中に配置される音は分離感も立体感もディティール感も優れている。

 この緻密さに豊かな低域が加わったら、また違った雰囲気になるかもしれないが、SA-Z1はシステムとして机上で完成した音になっているので、変な小細工をせず、そのポテンシャルをどうすれば引き出せるかを考えた方がよさそうだ。

 その際には、微細な再生音がなるべく埋もれないように、静かな部屋(PCのファンなどは絶対排除して)で、不要な周囲の反響を抑え、直接音がストレートに耳に届く形にするのがいいだろう。

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