週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

シャープ、マスク販売の抽選化で進めた4つの対策

2020年04月24日 18時05分更新

21日の受付開始直後からアクセス集中
結局、現時点で1箱も販売していない

 シャープは23日、4月27日(月)午前0時から、自社製不織布マスクの個人向け抽選販売を受け付けることを発表した。28日には抽選を行ない、1箱50枚入りの商品を3万箱(合計150万枚)を販売する。応募期間は、27日0時~23時59分までで、いつ申し込みをしても当選確率は同じとしている。当選者には29日までに順次メールを送る。そして28日13時~5月3日17時までの期間に、購入手続きをすることなる。

先着順から抽選に変更されたシャープのマスク販売

 元々は21日10時からの販売を予定していたが、サイトにアクセスが集中。直後からつながない状況が終日続き、さらに、シャープのAIoT家電の一部製品ではクラウドサービスが利用できなくなるという事態も招いた(「シャープマスク販売でIoT家電も落ちた、クラウド時代が抱える盲点」

21日時点のマスク販売ページの表示

 シャープは「4月21日(火)分の販売は終了しました」と表示。販売サイトの「COCORO STORE」でも「在庫切れ」と表示して、商品が売り切れになったようにしていたが、同社によると21日時点での販売実績はなく、その後も販売サイトを閉鎖しており、これまで1箱も売っていない状況だという。

 サイト上では「4月21日(火)、個人のお客様向けにマスクの販売を開始しましたところ、予想を大幅に上回るアクセスが集中したことにより、ご購入いただけない状況が発生いたしました。お客様に多大なるご迷惑をお掛けしましたことを、深くお詫び申し上げます」と陳謝。23日には「アクセス集中を緩和するため、販売方法を抽選方式に変更させていただくことといたしました。」とし、抽選方式を採用することを告知した。

抽選方式への変更のほか、会員登録を購入時に
CDNも活用して付加を軽減する

 仕切り直しとなった新たな個人向けマスク販売において、シャープでは、いくつかの対策を講じているという。

 1つ目は前述のように、販売方法を抽選方式に変更したことだ。

 同社は「4月21日の販売は、早い者勝ちという方式であったが、これを抽選方式とすることで、サイトへの一時的なアクセス集中を緩和することができる」と説明する。

 2つ目には、COCORO MENBERSへの登録をして、それから購入するという流れを止め、応募時点での会員登録は不要とし、当選した人が購入する際にする仕組みとした。

 販売前日からCOCORO MEMBERSのサイトで事前登録する人が殺到し、つながりにくい状況が発生。販売当日はサイトにもアクセスできない状況となっていたが、こうしたアクセス集中も緩和できると見ている。

 3つ目には、他のシステムとサーバーを分離して、そこに応募専用のサイトを構築した点だ。

 シャープでは、大阪・堺のグリーンフロント堺に自社データセンターを持ち、同社のサイトを運営したり、AIoT家電向けの各種クラウドサービスを提供している。マスク販売のサイトも、これらのサービスと同じプラットフォーム上に置かれていたため、同社サイトにつながりにくい状況を生んだほか、シャープのAIoT家電の一部製品でクラウドサービスが利用できなくなるという事態を招いたのだ。

堺に自社のデータセンターを持っている。ここへのアクセス集中が今回の事態を生んだ

 今回の対策では、応募専用のサイトを別のサーバーに構築することで、AIoT家電向けのクラウドサービスである「COCORO+」などへの影響がないようにしたというわけだ。

 4つ目は、外部のCDN(Content Delivery Network)を活用することを決定した点だ。これにより、抽選応募のために設置した専用サーバーへの負荷を軽減することができるとしている。

 シャープでは、「こうした対応を図ることで、応募の募集が開始されても、COCORO MEMBERSの新規会員登録や、AIoT家電向けのCOCORO+サービスへのアクセスがつながりにくいという状況がなくなると想定している」という。

 すでに現時点で、COCORO MEMBERSの新規会員登録のサイトにアクセスできるようになっている。

 そして、当初は3000箱としていたものを、今回の抽選販売では3万箱と、10倍の数を用意した点も見逃せない。同社では、21日から毎日3000箱ずつを販売するとしていたが、この数を単純計算しても27日まででは2万1000箱に留まり、それを上回る数が用意されたことになっている。また、抽選日や発送日の生産分を含めても、総数は当初計画を若干上回る計算だ。販売数量を増やしたことも同社がとった対策の1つといえるだろう。

 21日午前10時のトラブル発生後、23日午後5時40分過ぎには、こうした対策を発表することができたシャープ。新型コロナウイルスの感染拡大により、活動が制限されるなかでも、4月27日の再発売に向けて、56時間以内という短時間で対策を施したことになる。

 だが、応募期間が24時間に限定していることで、ここにアクセスが集中する懸念も残っているのは確かだ。もう少し長く応募期間をとってもよかったかもしれない。

 こうした募集サイトは、開始時点と終了間際にアクセスが集中する傾向があるが、応募側もそうした時間を避けて応募することが望ましいだろう。

 一方、シャープにとっては、今回のマスク販売を通じて、COCORO MEMBERSの会員拡大につなげるといった思惑があったといえるが、すべての応募者を会員の対象にすることはできなくなった点は残念だろう。だが、社会貢献という点で、いち早く、マスクの生産、販売に乗り出したシャープの取り組みは大きく評価されていい。

 まずは、4月27日の抽選販売への応募が順調に進むことを見守りたい。

 
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう