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50周年を迎える“アニソン界の女王”、堀江美都子さんに「アニソンの50年」を聞いた

2020年04月06日 15時00分更新

10曲それぞれに合わせた“10の声”で表現

── そんな、堀江美都子さんの50年の歴史を、オールタイムベスト「One Girl BEST」のアルバムで楽しめるわけですね。

堀江 ディスク2枚にギリギリいっぱい、50周年とも掛け合わせて全50曲が詰め込まれています。アルバム担当ディレクターが頑張ってくれて、とっておきの1枚となっていますので、皆さんにも是非、楽しんでいただけたらと思います。

One Girl BEST

One Voice

── 声優、お芝居のお仕事が、歌に役立った部分ってあるのでしょうか。

堀江 いろいろなキャラクターを演じたことによって、アニメソングを歌ううえではもちろんですが、歌手としての幅にも繋がってくれたと思います。ひとつの声で全ての歌を歌い上げることもアーティストの表現手段だと思うのですが、作品ごとに沿った歌を歌うのも、アニメソングの場合は大切だ思います。

── 「One Girl BEST」と同時リリースのカバー集「One Voice」がまさにそういった歌い方の集大成だと思いました。堀江美都子さんならではの、様々な声によって様々な曲調の歌が新たなアレンジで生まれ変わっていて、全ての曲が新鮮に感じます。同時に、アルバムとしての聴き応えもありました。

堀江 カバーアルバムというと、全曲通して声の調子を整えて1枚のアルバムとして完成させる、というのが一般的な手法なのかもしれませんが、「One Voice」は全く違うコンセプトで作られています。10曲それぞれ、10の声で10の表現になりました。私だからこそできるアルバムにしたい、という気持ちもありましたが、アレンジによって自然に歌が作れました。

敢えてアニソンは2001年以降からセレクト

── 楽曲は、劇場アニメの主題歌、劇中歌からですが、どういった方法で選曲したのでしょうか。

堀江 何度も会議をして、いろいろと相談したのですが、まずは私だからこそ“アニメソング”がメインでしょう、という大枠だけは決めました。しかしながら、アニメソングといっても無数にあります。そこで、次に21世紀になってからのアニメ映画の主題歌を中心にしよう、ということになりした。10曲のなかには、「ひまわりの約束」など、私がアニメソングだけに限定せず、定期的に行っているプライベートライブで歌っている曲や、チャレンジしてみたかった曲、というのもチョイスしています。

── どの曲もアレンジが印象的でした。

堀江 今回の「One Voice」では、作/編曲家、音楽プロデューサーとして活躍していらっしゃる武部聡志さんにアレンジとプロデュースをお願いしました。様々な若手アーティストのプロデュースを手がけるいっぽうで、松任谷由実さんのコンサートツアーの音楽監督や、「MUSIC FAIR」「FNS歌謡祭」の音楽監督も務められているので、アレンジに関してはもちろんのこと、幅広い曲調の楽曲が集まった今回のようなアルバムには、ピッタリの人にお願いできたと思います。

── 特に「星間飛行」はビックリしました。

堀江 もともとこの曲は、大学で生徒に教える際の、課題曲のひとつでもあったんです。いろいろと、学べる点のある素晴らしい曲ですので。そして、教えているうちに“自分だったらこう歌うな”“こういうアレンジにチャレンジしたいな”という気持ちになっていたんです。そういったタイミングの時にちょうど「One Voice」の曲選びが重なってきたので、私から「星間飛行」は入れようと、プッシュしました。

── ニューミュージック調のアレンジ、といってよろしいのでしょうか? 全く別の曲に感じました。

堀江 はい、ユーミンとかハイファイセットとか、ニューミュージックのアレンジを意識しています。そこで、いちばんの問題が例の“キラッ☆”でして(笑) オリジナル曲では、中島愛さんがキャッチーに“キラッ☆”と歌っていますが、今回のアレンジであれは合わないだろうと。でも、重要な歌詞なので外すこともしたくない。そこで、耳元でささやくような感じにしたらどうかな、と思い、ああいう歌い方になりました。

── オーリバルのアレンジも、印象的ですね。

堀江 この曲は、私が好きなので歌わせてください、といって選んだ曲です。ギタリストの遠山哲朗さんの素晴らしいギターに触発されて、最終的にああいった出来上がりになりました。オリジナルも凄く好きなんですけど、それとはちょっと違う、魅力ある曲になったと思います。そのほかにも、「One Voice」ではドラマーの平陸(たいらりく)くんなど、若手ミュージシャンも起用していたりします。ベテランと若手のコラボレーションにより、どの曲も印象的な楽曲になっています。

ハイレゾ版の豊かなニュアンスには、少し気恥ずかしさも

── 「One Voice」はハイレゾ版も発売されていますが、こちらはいかがですか?

堀江 ハイレゾ版に関しては、私も初めてということもあって、マスタリングにも立ち会わせていただいたのですが、音を聴いてびっくりしました。とても立体感がある、いい音ですね。ただ、歌い手としては、ことこまかなところまで聴こえてしまって(笑) 現代の楽曲は、技術が進んで、いくらでも修正できるようになっていますよね。けれども、私の歌の表現方法だと、部分的に修正すると変な感じになってしまうんです。声の出し方に流れがあるといいますか。そのために、部分的な直しはしていないので、自分が納得できていない部分が見えてしまって。ちょっと恥ずかしい思いをしています。

── いえいえ、そんなことありません。というか、どこが“恥ずかしい”ところなのか全く気がつきませんでした。

堀江 ありがとうございます。そう思っているのは自分だけなのかもしれませんね。いずれにしろ、全ての曲がオリジナルをリスペクトしつつ、全く違った印象になっていて、楽しいアルバムを作り上げることが出来ました。堀江美都子ならではの1枚となっていますので、是非聴いていただき、存分に楽しんでいただけたら嬉しいです。

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