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ソナーで車が自動で止まる! 先進安全装備「ICS」とは?

2020年03月10日 16時00分更新

 「トランプだけで稼げて身軽でいいねぇ」なんて、冗談半分に言われることがあります。しかし、見えないところで苦労があるのは、他の仕事と同じです。もちろん、トランプも仕事には使いますが、スーツ代もかかるし、R&D(Research & Development、研究開発)などにも経費だけでなく、時間がかかります。

 仕事の大切な道具の一つに、自動車があります。これは、田舎に住んで、都会で仕事……というパーソナルな事情なのかもしれません。もしかしたら、アメリカでこの仕事をスタートさせた影響もあるのでしょう。アメリカは鉄道も少ないし、一人につき自動車1台は当たり前だったし、その頃はUberもありませんでした……。

 そんなわけで、この連載でも車関連の回も多めです(「車とITのマリアージュ、スマートオペレーションの現状は?」「デジタル インナー ミラー自腹+DIYレポ/AUTO-VOX X1PROのスペック」など)。

最新のカーテクノロジー事情とショービジネスの関係

 メディアなどでは「自動運転」が目立って取り上げられる傾向にありますが、筆者が注目しているのは、どちらかというと予防安全技術のほうです。

 というのも、テレビの特番などによく出演していた頃は、放映日が近くなると「事件や事故に巻き込まれて放映中止に……」なんてことにならないように、「遊びに出かけない」や「運転しない」などが、出演者としてのリスクマネージメントの一つになりました。

 そういえば、子供の頃、バーチャン(祖母)に「トモヒロは小心者だから」と心配されたこともありましたが、今にして思えば、そんなバーチャンのほうが心配性だった気がしないてもありません……(笑)。

 このコラムもそうですが、「小心者」だけでなく、「偉そうにITを語るなら自腹で買ってから」がプリンシプル(原則)の筆者。まぁ、今回はプリンシプルと言いたかっただけですが……。

先進安全機能「ICS」とは?

 話を戻すと、筆者の車、トヨタ クラウン ハイブリッド(AZSH20)にはICS(インテリジェントクリアランスソナー)と呼ばれる装備が搭載されています。

 これは8つのソナーが前後方向の障害物を感知し、被害軽減のための自動ブレーキをかけるシステムのこと。アクセルとブレーキの「踏み間違い」や「駐車時のアクセルの踏み込みすぎ」、シフトレバーのドライブ(前進)とリバース(後進)の「入れ間違い」などによる衝突防止をサポートしてくれます。

前後バンパーに8つある、1センチほどの丸いくぼみがICSのソナー(センサー)

 こうした装備は年配のドライバー向けの機能だと思われがちかもしれません。しかし、この車に乗って1年ほどの筆者ですが、もう2〜3回もICSのお世話になってます。ただし、踏み間違いや入れ間違いではなく、自宅の駐車スペースの壁の近さが原因です。「もう、筆者も年配ドライバーの仲間入りをしているのでは?」と言われてしまえば、まあ、それまでですが……。

 そんなICSの作動の瞬間を写真に撮って、記事にしようと常々思っておりましたが、この機能、予期せぬときに現れるものですし、先日の法改正で運転中にカメラやスマホを取り出すのも取り締まりの対象になったのは、ご存知の通りです……。

ICSが障害物を検知するとオレンジ色の線で警告する

やっぱり、「知る」と「体験する」は別次元

 「それなら!」と一肌脱いでくれたのが、神奈川トヨタ自動車の原田昇さん。インテリジェントクリアランスソナーライセンスも持っている原田さんに、ICSのデモンストレーションを見せてもらいました。

車関連のライセンス証は、なぜかやっぱりカッコいい

 筆者は、ICSのことはカタログや実体験などで知っていましたが、実際にあらためて機能を体験してみると「21世紀なんだなぁ……」としみじみと実感します。

 今回実験してくれたのは、下の2つの状況です。

1)パーキングスペースでのシフトレバー入れ間違いを想定した加速抑制制御の実験

2)渋滞時や信号待ちなどで前方不注意を想定した追突防止の実験

 「1)パーキングスペースでのシフトレバー入れ間違いを想定した加速抑制制御の実験」は、コンビニなどに駐車し、再発進するときにシフトレバーの前進と後進を間違え、さらにアクセルを強く踏んでしまった場合を想定しました。前方に壁やガラスがあるケースでの実験です。

 結果は、車は車止めから前進せず、「ブレーキ!」の赤い警告が表示されます。今回は実験なので冷静でいられますが、ほんとにそんな状況になればかなり慌てるはず。こんなテクノロジーは大歓迎!

自動停止時に現れる「ブレーキ!」の表示

 「2)渋滞時や信号待ちなどで前方不注意を想定した追突防止の実験」は、さらに細かく状況を説明するまでもないと思います。5〜10km/hの速度でさえ、自動ブレーキによる体のサプライズと「しっかり止まってくれた! 良かった!」という安堵感のギャップが新鮮です。

 想定した前方不注意の中には、ルームミラーやサイドミラーによる後方確認も含むので、「いつも、ちゃんと前を見て運転してるぞ!」と主張するドライバーにも必要な機能のはず。

今回の車両による自動停止間隔は30センチほど

ソナーの特性を知っておく

 ICSに使われるのは、「ソナー」という名前の通り、超音波を使った技術です。それによってガラスや暗闇でも作動する反面、フェンスや布など、超音波を吸収、透過する障害物は苦手。

 筆者の車には、それを補うために、単眼カメラ、ミリ波レーダー/レーザーレーダーなどで複合的に予防安全技術が使われています。先進の予防安全技術により「約9割の追突事故が低減」などのデータもあるほど、確立したテクノロジーになりつつあります。

※プリウスを対象としたICSとToyota Safety Senseの搭載車と非搭載車との比較(2015年12月〜2016年12月)(トヨタ自動車が算出)。

 それでも、100%の事故を防止できるテクノロジーは存在しないのは、当然のことです。それは、絶対に失敗しないマジックが存在しないのと同じことかもしれません。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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