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MISIA、浅丘めぐみのアルバムなども

New Years Concertが“超速”でリリース、ビビッドな音に感動!【麻倉特薦ハイレゾ音源】

2020年02月11日 15時00分更新

 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめ度に応じて「特薦」「推薦」のマークもつけています。優秀録音をまとめていますので、e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『Neujahrskonzert 2020 / New Year's Concert 2020
/ Concert du Nouvel An 2020』

Andris Nelsons、Wiener Philharmoniker

特選

 元旦恒例のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは毎年、超スピードでハイレゾがリリースされる。今年のアンドリス・ネルソンスの回も素晴らしい。ネルソンスのウィーン・フィルとウィーン音楽に対する尊敬と愛情が、色濃く感じられる演奏であった。麗しさと美的なウィーンらしさ、チャーミングさという点では、近年のベストなニューイヤー・コンサートではないか。オーケストラ全体と細部とのバランス、ソノリティと直接音のバランスも、上等だ。ウィーン・フィルならではの暖かさと、ネルソンスのヴィヴットな音作り……が、見事な融合を聴かせている。歌いが叙情的で愉しい!

 ワルツの三拍子がウィーン風でエレガント。歌いの優しさと、節回しの軽妙さ、チャーミングさ、軽快なグロッシーさ……。ネルソンスは、そんなこのオーケストラの特性を美しく引き出している。「19.An der schonen blauen Donau, Walzer, Op. 314「美しき青きドナウ」のウィーン風の溜がひじょうに効いているのも、ネルソンズのウィーンへの尊敬の現れだろう。

 音はムジークフェライン・ザールの華麗で深いソノリティを基本にし、グロッシーな音色が見事に捉えられている。2020年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング

FLAC:96kHz/24bit
Sony Classical、e-onkyo music

『MISIA SOUL JAZZ BEST 2020』
MISIA

特選

 SOUL JAZZをコンセプトに制作されたMISIAの最新アルバムで、約7年ぶりのベストアルバムだ。

 すごくキレがあり、伸びやかで、カラフルなサウンドだ。ニューヨークのジャズクラブで聴いているような雰囲気。天下一品のMISIAの歌唱力は、東京でもニューヨークでもどこでもリッチな音楽性を発揮する。「1.Everything」は、トランぺッターの黒田卓也のアレンジによるもの。音楽専門サイト「音楽ナタリー」のインタビューから引用する。MISIAのコメントだ。

 「『歌の最中はコードは変えてもいいけど、オリジナルに近いコードで、間奏などで黒田節が出てくるようなバランスでやりたい』と<お願いしました。バラードって、聴いてくださる方が『ここはちょっと不思議だな』と感じる瞬間があると、なかなか入り込めないと思うんですよ。なので歌中のコードに関しては、なるべく原曲に近いほうがいいかなと。特に「Everything」は、もともとのメロディとそれを生かすアレンジが素晴らしいですからね。逆に言えばメロディを動かしづらい曲なんですけど、今回アレンジではメロディを好きに動かせるコード進行になっているので、いろいろな歌い方やアドリブも引き出させてもらえて。歌っていて楽しかったですね」。

 決してジャズアレンジではなく、従来からのよく知ったEverything的だが、やはりジャズバンドと共に歌う意味合いも濃い。節々に入るバンドとの即興的な言い合いが面白い。「13.つつみ込むように・・・」はディキシージャズ的な乗りと進行だ。flac 44.1kHz/24bitだが、ひじょうにクリヤーで、ヴォーカルの音調も濃い。ヴォーカル音像はセンターに、かなり大きなサイズで定位する。楽団のベース、ドラムス、キーボード、ギター、ブラスなどの楽器の音像も明瞭だ。

FLAC:44.1kHz/24bit
Sony Music Labeles、e-onkyo music

『Beethoven: Complete Piano Sonatas』
Fazil Say

特選

 鬼才ピアニスト、ファジル・サイが、ベートーヴェン生誕250年企画として新録音したピアノ・ソナタ全集。まさに鬼才のベートーヴェンだ。何回もファジル・サイのコンサートに通って、あまりのハイテクに感心するばかりであったが、今回の演奏も素晴らしい。

 ファジル・サイはこう語っている(e-onkyo musicサイトでの文章)。「今回、私以外には成しえないベートーヴェンが表現できたと思います。まるでオーケストラを聴くように、私自身の心の中の声も含め“指揮をするつもり、また過去の優れた指揮者の音を再現するかのように”全ての音を表現しました」。

 ひじょうにドラマティックだ。ベートーヴェンの音楽はこれほどの抑揚とロマンがあるのだと、ピアノを通じて語りかけている。「ロマン性と演出性」は古典の典型の第1番でも感じられることだが、ロマンの典型の「第8番「悲愴」は、まさに得手に帆を揚げた、ロマンティシズム。第2楽章の静謐な思い、第3楽章の軽妙な哀しみ……と表情が濃い。23番「熱情」のまさに熱き熱情に溢れた演奏も聴き物だ。録音はそんなメッセージ性と記号性の多いファジル・サイのピアノを、生成り的に素直に捉えている。ザルツブルク・モーツァルテウムで録音。

FLAC:96kHz/24bit、44.1kHz/24bit、MQA Studio:96kHz/24bit
Warner Classics、e-onkyo music

『ベートーヴェン: 序曲集』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヘルベルト・フォン・カラヤン

特選

 ベートーヴェン生誕250周年記念企画。これまでハイレゾでは未発売だった、カラヤン指揮によるベートーヴェン序曲集。50年前のベートーヴェン生誕200周年に合わせて録音された全11曲、CD2枚分だ。SACDシングルレイヤーとの同時発売。

 60年代中期から後期への、まさにベルリン・フィルを完全に手中にし、完璧にコントロールした時代の世界遺産的な貴重な記録。カラヤンの意志力が演奏のすみずみにまで透徹し、ベルリン・フィルの低音力をたっぷりに演じさせたマッシブで、まさにフルボディのサウンドが文字通り、堪能できる。

 「8.《エグモント》 序曲」の実にダイナミックなクレシェンド、「9.《コリオラン》序曲」の2」の冒頭のトゥッテイの高剛性で豪放なな切れ味、「3.《レオノーレ》序曲 第3番」のフィナーレの凄まじいダイナミクス。まさに曲の本質を掴み、その意味合いを満天下に問う、カラヤンの音楽的演出の巧みさが、聴ける大傑作だ。1965年、1969年録音。 独Emil Berliner Studiosで2019年制作のDSDマスター。

DSF:2.8MHz/1bit
Universal Music、e-onkyo music

『Premium BEST』
麻丘めぐみ

特選

 愉しい、懐かしい、楽しい……、麻丘めぐみのハイレゾが出るとは!オリジナルのアナログテープを96kHz/24bitに変換した「オリジナリテイ」重視の姿勢が嬉しい。録音とミキシングは、この年代の歌謡曲の典型的なカーブだが、それが歴史性を物語っている。「1.わたしの彼は左きき」は1番のコーラスはダブルトラックで、「あなたにあわせて」からシングルになることがハイレゾで初めて解った。エコーはそれほど多くない。一方、「2.芽ばえ」はひじょうに多い。響きの中で歌っているような、歌謡曲タッチだ。「33.夢みるシャンソン人形」は、時代性を感じさせるハモリのダブルトラック。新曲「20.フォーエバー・スマイル」は、音程が低いが、経験豊かなバラード歌手のような味わいがある。アレンジや音調が、以前のそれをフォローしているのは、アルバムとしてのコンセプト重視の姿勢だ。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
VICTOR STUDIO HD-sound.、e-onkyo music

『Tenderly』
菅原花月

特選

 福岡を中心に活動するジャズボーカリスト菅原花月のデビューアルバム。テイスティで、耳触りがとても心地好く、英語が上手く、乗りが快適な新星ジャズヴォーカルだ。声にフックがあり、安定感と俊敏感も。この歌手は、きっと伸びるだろうと思わせる。ボサノバの名曲「2.Desafinado」も擦れ的に歌わず、ひじょうに輪郭がはっきりとした明確、明瞭な歌いがクリヤーだ。アレンジャーにはカナダでも今人気のボーカリストDiana PantonやEmillie Clair BarlowのギタリストであるReg Schwagerを招いて、シンプルながらカナダらしい優しく美しいサウンドを繰り広げる。音も明瞭で、ヴォーカルの力感と甘さのミックス感が良い。44.1kHz/24bitだが96kHz/24bit以上のパラメーターで聴いてみたい。

FLAC:44.1kHz/24bit、WAV:44.1kHz/24bit
──、e-onkyo music

『ベートーヴェン: 劇音楽《エグモント》』
《ウェリントンの勝利》 大フーガ』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヘルベルト・フォン・カラヤン

推薦

 ベートーヴェン生誕250周年企画。《エグモント》《ウェリントンの勝利》は、前述の序曲集と共に1969年1月に録音。同年8月にサンモリッツで録音された弦楽合奏による《大フーガ》が収録されている。

 DSDのサウンドはオーケストラの各パート、ソロ、そして合奏の音が、いかに録音会場のすみずみに広く拡散し、深い音場感を作りだしているかが、よく分かる。ステレオ効果が高く、左右の分離だけでなく、センター音像も厚く、くっきりと再現されている。右側のホルンの奥行き感、距離感はまさにDSD的な音場の聴きどころだ。カラヤンのベートーヴェン音楽の密度の高さ、剛性感、細部までの丁寧な解釈が、たっぷり聴ける。

「1.《エグモント》序曲」のフィナーレの追い込みの高揚感は、カラヤンならでは演出力だ。「2. クレールヒェンのリート 第1番:「太鼓をうならせよ」」のグンドラ・ヤノビッツの名唱も素晴らしい。歌とオーケストラのバランスも上等だ。ソプラノとオーケストラが同じ旋律をやりとりする部分のスリリングさ。1969年、ベルリンのイエス・キリスト教会、サンモリッツのフランス教会で録音。ドイツ・グラモフォンのオリジナル・マスターから独Emil Berliner Studiosで制作したDSDマスターを使用。

DSF:2.8MHz/1bit
Universal Music、e-onkyo music

『oar』
角銅真実

推薦

 東京藝術大学打楽器専攻を卒業した打楽器奏者/シンガー・ソングライター、角銅真実のメジャー・ファースト・アルバム。「1.13-Dec」ヴォーカルも、バックのコントラバス、ベース、クラリネット……のすべての音像が大きく、なかでもオンマイクなヴォーカルが、儚げなウィスパーボイスで、はかなげ。「2.Lullaby」はハーモニーを持ったダブルトラックで、不思議な体験を歌う。「3.Lark」は、角銅の囁くような声の魅力が聴ける。「4.21-Nov」は絢爛なワルツ。ダブルトラックだ。「8.25-Oct」はギターのアルペジォに乗って、心模様がとつとつと語られる。音像が大きいオンマイクのヴォーカルを味わうアルバムだ。

FLAC:48kHz/24bit、MQA:48kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music

『ラヴェル:ボレロ 他 ~フランス管弦楽の色彩~』
飯森範親、横山幸雄、日本センチュリー交響楽団

推薦

 マイスターミュージックの録音には、いつも私は注目している。音そのものにも音楽への愛情と愛着が感じられるレーベルだ。最近、同レーベルのオーケストラ作品を聴く機会が多いが、共通しているのはソノリティへの愛情だ。各楽器、各パートを微視的に録るのではなく、客席からその場で聴いているようなホールの雰囲気とオーケストラの各音が佳くバランスする、心地好い音であり、特等席のような臨場感だ。大オーケストラのセッション録音を敢行すること自体が最近の貴重だ。2019年7月18日 ザ・シンフォニーホールにて384kHz/24bitのライヴレコーディング。

FLAC:192kHz/24bit、96kHz/24bit
WAV:384kHz/24bit、192kHz/24bit、96kHz/24bit
DSF:11.2MHz/1bit
マイスターミュージック、e-onkyo music

『ショパン:ワルツ集(全曲)』
カール=アンドレアス・コリー

推薦

 マイスターミュージック作品だ。10年前に収録した作品の蔵出しである。スイスの教育者(チューリッヒ国立音楽大学大学院教授)でピアニストのカール=アンドレアス・コリーのショパン・ワルツ集。e-onkyo musicによるとショパンのワルツはハイレゾでは売れ筋という。横須賀芸術劇場の小ホールにて96kHz/24bitで収録されていた音源を、商品化した。録音時は、ドイツはハンブルグで修業をした調律師がショパン用のブリリアントな音色調整(3本の弦のバランスを変える)を施したという。ひじょうに響きが多い。ピアノの直接音より、響きの方が多いと言っても過言ではない。ピアノ演奏はオーソドックスなものだが、この響きがショバンの華麗さをよりブリリアントに演出している。サロンでのショバン像が彷彿されるような演奏であり、録音だ。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit、DSF:5.6MHz/1bit
マイスターミュージック、e-onkyo music

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