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日本人の知らないシリコンバレー:CIAが運営するVC「In-Q-Tel」

2015年07月17日 17時30分更新

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写真:Normand Desjardins

CIA! CIA! サンフランシスコを拠点とするベンチャーキャピタル・Scrum Ventures(スクラムベンチャーズ)のブログが面白かったので、許可をいただき紹介させていただくことにした。普段は資金調達やM&A、IPOといったお堅めの情報を扱ってらっしゃるが、個人的にはこういう方面をもっと攻めていただきたい。

 最近、日に日にメインのハイウェイ「101」の渋滞がひどくなることを体感しているシリコンバレーですが、日本から視察で来られる方の人数も急速に増えています。

 先週も立て続けにいくつか、「日本がシリコンバレーにキャッチアップするには」というテーマで話を聞きたいという打ち合わせがありました。ほとんどの方は事前にかなり調査をされているのですが、それでもご存知ない話というのが結構あるので、何回かに分けて「日本人の知らないシリコンバレー」シリーズを書いてみようと思います。

 本日は「軍と諜報機関の役割」について。

 インターネットの前身ARPANETが、アメリカ国防総省の研究機関、今のDARPAからの資金で始まったことは有名な話ですが、最近のスタートアップシーンにおいても、軍の存在は非常に大きいです。先日のポストでも、DARPAが主催するロボットコンテストについて書きましたが、戦闘、戦争、サイバーテロという非常にシリアスな要件からスタートする様々な研究、コンテスト、投資などが、新しい技術の開発やスタートアップの発展に一役かっているのは間違いありません。

 さて、米国の諜報機関 CIA がVC、ベンチャーキャピタルを運営していることをご存知でしょうか?

 CIA直下で$170Mの資金を運用している「In-Q-Tel(以下、IQT)」は、対外諜報活動を通して世界中から集まる膨大な情報を解析するためには優れた技術が必要、ということで1999年に設立されました。「In-Q-Tel」という名前は、幅広い起業家に興味を持ってもらうために、Intel (Intelligenceの略)の間に、映画「007」の中に出てくるフィクションの英国諜報機関のR&D担当の名前「Q」を挟んだ、ということのようです。なかなかチャーミングですね。ちなみに、最初のCEOは、Gilman Louieというソビエトの技術者からテトリスのライセンスを最初に受けたことで知られるゲームのデベロッパーです。

 こちらが最近のIQTの投資先の一覧です。

 日本にも進出しているPalantirClouderaApigeeなどの有名企業が名を連ねています。地域はシリコンバレー周辺が多いですが、東海岸やその他の地域も含めて全米の企業に投資をしているようです。カテゴリー的にも、カメラ、バッテリー、地図、RFID、Predictive Analysis、ソーシャルネットワーク、ゲームなど多岐にわたっています。最近は、ウェアラブルソーシャルメディア解析などのスタートアップにも投資をしているようです。

 有名な投資の一つがあのKeyhole。2004年にGoogleに買収されGoogle Earthになった技術です。現在スマホなどに幅広く使われているタッチスクリーンの技術の多くも、IQTの投資から始まっているそうです。IQTのホームページには、現在の投資注目分野のレポートが多数アップされています。一つ先のトレンドを知るために活用してもいいかもしれません。

 そもそも、第二次大戦後、日本は70年以上諜報機関自体を持っていません。シリアでの事件などを受けて、首相肝いりで「日本版CIA」の設立がようやく動き始めているようですが、ぜひこうした「スタートアップの視点から見た軍、諜報機関の役割」という視点を入れて進めて欲しいなと思います。

 そしていつか「日本版In-Q-Tel」が立ち上がる日は来るでしょうか?

著者紹介──宮田拓弥(みやた たくや)

スクラムベンチャーズ(Scrum Ventures)ゼネラルパートナー。サンフランシスコで米国のテックスタートアップへの投資を行うVCを経営。合わせて日本やアジアの企業に対し戦略コンサルティングを行う。

■関連サイト
Scrum Ventures

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