新バージョンのLightroomに搭載された、ガスった写真をすっきりさせてくれる“かすみの除去”機能。霧などを晴らすデモを見ていたので、主に風景写真に向いた機能かとおもっていたが、写真の味付けにも便利そうだったので、作例ともに紹介していきたい。
風景写真の場合
ガスった写真を現像でどうこうする場合、やり方は多々ある。筆者の場合、これまでは露光量、ハイライト、シャドウ、白レベル、黒レベル、自然な彩度でなんとかしていた。この部分をスライダー1発で補正してくれるのが“かすみの除去”機能といったところになる。
【元写真】軽くガスった写真。2014年の富士総合火力演習のもの。 |
【かすみの除去/適用後】とまぁ、これくらいのガスなら問題なしのレベルにまでもっていける。 |
【元写真】次にこの写真で、どこまで引っ張れるかのテストをしてみよう。 |
【かすみの除去+100】ノイズは増えているが、緑地がけっこう見えるようになった。また色飛びも極力抑えてくれている |
同機能は、感覚的にはハイライト、シャドウ、白レベル、黒レベル、自然な彩度を自動的に設定してくれるというもので、上記のように軽くガスった写真であれば、同パラメーターをプラスに傾けるだけでオーケーなことが多い。傾向としては、プラスとマイナスともに色の破綻が生じにくく、マイナスについては変化が激しい。
逆にプラス側は+20ほどしても大丈夫なことも多く、個人的には、あたりとして“かすみの除去”を使用することが増えている。また、“明瞭度”と用法的に似ているところもあるが、処理ベクトルは大きく異なる。この“かすみの除去”と、“明瞭度”を併用することによって、コテコテしてパキパキした写真に仕上げるのはとてもラクになった。とくに機械などを撮影して「重みが足りねぇ……」といったときに重宝する。
【元写真】現像前提でほぼフラットに撮ったもの。 |
【明瞭度+70、かすみの除去+70】大変よろしい。場所は軍艦島で、2013年に長崎県の特別な許可を得て、取材したときのもの。 |
【かすみの除去/適用後】また写真の構成によっては、HDRっぽくもなる。ただ、こちらは緑が破綻したので、最後にグリーン系の輝度と彩度を落とした。というように、本来の用途以外で活用してみると、再調整する手間がどうしても生じる。こちらの写真も2013年に長崎県の特別な許可を得て、取材したときのもの。 |
人物写真(ポートレート)の場合
ポートレートの場合は、露出補正と白レベルでふんわりさせることもあるが、何気にめんどうなパートになる。“かすみの除去”はマイナスにした場合に白むため、そういった処理との相性もいい。プラス 5~10 くらいであれば、写真の雰囲気がかなり変わるため、ポートレートにも適用可能だと判断している。パラメーター的には、よくあるコスプレの場合だと、色かぶり補正、明瞭度 −10 ~ −20、オレンジとイエローの彩度/輝度調整、かすみの除去 −5 ~+5 くらいで、だいたいカタチになりやすいだろうか。
【元写真】まずコスプレ方面から見てみよう。白くてふんわり2.5次元方向が強いわけだが、これは撮って出しデータ。おねえさまは柊雪乃さん。 |
【かすみの除去−7】ほどよくふんわり感が出た。なので、ポートレートの場合は、最終処理用として覚えておくといいかもしれない。というか、−3〜−5くらいに留めたほうが無難な印象もあるのだが。 |
【撮影環境が異なる場合の例】趣味レベルの変化だが、割とこのラインで悩むことは多いので、フィニッシュ付近で検討するときにもいい。左からかすみの除去−5、±0、+15。マイナスはごりっと変化するが、プラスの変化はゆるやか。露出補正ともベクトルが異なる処理だとわかるハズ。女の子は赤根京さん。 |
さらに、“かすみの除去”重点で処理してみたものをチェックしてみよう。
【元写真】気象条件はあまりいいときではなかった。 |
【明瞭度+30、かすみの除去+70に調整後、黒レベルを少しプラスした後】必要以上に“かすみの除去”をプラスにすると、HDRくさくなるため、雰囲気優先でいいかなぁといった場合にもいい。 |
【元写真】飯テロ用にも使える? |
【かすみの除去+100適用後】比較してみると、パンチ力が大きく上昇しており、大ダメージを期待できる感じになった。 |
【元写真】テキトーに弄ってみよう。 |
【かすみの除去0~-10程度を適用後】ちょっと霧がかったっぽい雰囲気にもできるケースもある。明瞭度を上げていると違和感が加速するので、0ないし、−10くらいがよさげ。 |
というわけで本来の用途以外でも使える、新“かすみの除去”機能。そもそも現像のクセによってはまったくお世話にならない機能かもしれないし、上記で掲載した写真例もフィニッシュ手前の状態だ。かすみの除去を調整したあと、そのままで行けるケースはいまのところ少なく、ハイライト、シャドウ、白レベル、黒レベル、輝度などを微調整している。とはいえ、煩雑な処理を簡素化してくれる可能性があるため、新機能確認がてらに、これまでの現像フローを見直すのもアリだろう。
ちなみにLightroomは、設定の上から順に操作していくことで比較的誰でもうまく現像できる、といった設計になっている。同機能は際下段に近い場所にあり、アドビシステムズ的には「最後のほうで使用してね」というわけだ。個人的には、この機能、もっと上段に近い位置にあってもいいような印象なのだが。
■関連サイト
Adobe Creative Cloud
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります