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WantedlyがAPIを開放 メッセンジャー機能、日経新聞との取り組み開始

2015年06月19日 15時00分更新

Wantedly

 狙い目は”社外とコミュニケーションをする”こと。未開拓の分野を押さえられるかが勝負だ。

Wantedly
発表された「話を聞きに行きたいボタン」設置の新機能

 19日、ウォンテッドリーが開催した『Wantedly Award 2015』にて、同社は新たな事業戦略を発表。6月10日には日本経済新聞から約1億円の資金調達、採用支援事業での業務提携が発表されたばかり。4月に発表していた新機能『Sync』の本格始動など、次のステージへと舵を切った。

『Wantedly』(ウォンテッドリー)は、約60万人の月間アクティブユーザー、約1万社の登録企業をもつ採用プラットフォーム。登録事業者に対する月額課金型のBtoBビジネスだ。

 同社内で”Visit”と呼ばれる、興味のある会社へ遊びに行ってもらって、採用を活性化させる事業がビジネスとしてのコア。当初はスタートアップ企業が中心だったが、現在は約6000社もの中小も含めた一般企業のほうが多くなっている。

 発表となった新たな取り組みは、主にWantedlyでの新機能やサービスの取り組みが中心。なお、詳細は発表されなかったが、国内屈指の約43万人の電子版有料会員を抱えている日経新聞との取り組みでは、それぞれの得意領域を活用したコンテンツ連携や新規事業などが進むという。

 日経新聞としてはスタートアップ支援という一環での投資取り組みとのことだが、『日経電子版』での連携などは想像するに難くない。すでに『Evernote』と連携して“仕事をサポートしている”ニュースプラットホームとの相性は良いのではと推測できる。

ビジネスSNS『Wantedly』の独自プラットフォームをオープン化

 発表されたなかでも大きなものは2つ。事業の大元であるVisitのインフラ化、そして4月に発表されたSyncの強化だ。

 インフラ化では、人材を募集したい企業が自社サイト上にWantedlyのプラットフォームさながらに「話を聞きに行きたい」ボタンを設置可能にするようなAPIの開放を実現。いわばビジネスSNSとしての『Wantedly』がもっていた独自プラットフォームをオープン化する流れだ。

 もうひとつが、SNSに連携した個人のつながりを可視化させるサービス『Sync』に追加される本格的なメッセンジャー機能だ。これまでブラウザ上の検索・メッセージだけだったものがより使いやすくなって登場するという。19日よりベータ版登録の受け付け開始となる。

「採用領域を超えた働くすべての人向けのインフラという想定」だという同社の狙いは何か。仲暁子代表取締役CEOに聞いた。

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ウォンテッドリー 仲暁子代表取締役CEO

狙いは浅いコンバージョン

 WantedlyのAPI開放は、サイバーエージェント、ヤフー、クックパッド、DeNA(ディー・エヌ・エー)の4社から始まる。「負荷のチェックもあるので4社のみだが、秋口にはどの会社や個人でもできるようにしたい」(仲代表)

 ボタン設置で狙っているのは「気軽な、浅いコンバージョン」だ。「一般的な入力となると、プロフィールを入れて、希望職を入れて、さらにいろいろ用意して……と重くなってしまう。本来企業の自社サイト上は潜在転職希望者を獲得するチャンスを持っている場所。離脱率が低く、カジュアルに話を聞きに行けるためのWantedlyのボタンを提供する」と仲代表。

 実質的にWantedlyでの登録求職者は企業ごとの応募フォーム記入の労力が不要となる。また同じく用意された「会社フィードボックス」では、フォローした企業の日常の様子を受け取ることができ、企業側も社内の雰囲気を潜在候補者に対してカジュアルにアピールできるようになるという。

「話を聞きに行くまででない場合でも、気になった会社のフォローもそのままできるようにした。求人獲得のためのアピールの場というのも、一般的にこれまでなかった。例えば企業側のブログやFacebookなどで情報は発信できても、告知などと混同してわかりにくい。プロモーションのための場と人材獲得の場は本来異なる」

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企業サイト上で直接エントリーが可能に。

意識しているのは「Facebookの思想」

 サービス実現のヒントは、Facebookにある。「プラットフォーム上だけでない形で、より社会に解放することによって逆に安全な場所になる流れをWantedlyでも実現したい。Facebookが登場する以前は、ウェブは匿名が当たり前だったが、今ではリアル寄りになっている。このような動きはすごいこと」

 もともとFacebook Japanに在籍していたというのもあるが、それ以上に仲代表は「Facebookの思想が好き」だという。ログインの仕組みから「いいね!」ボタン、友達のアクションが見えるところまで、オープンソースのマインドがあると語る。

「(外部サイトに連携して認証情報やデータを利用できるようにした)Facebookコネクトは特にすごかった。実際、ログインした瞬間に共通の友人が見えるということは、データサーバー負荷も上がってしまうということ。自社だけの視点ではありえない発想。私の単なる思いだが、同じようにWantedlyも社会インフラ化したかった」

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「会社フィードボックス」もJavaScriptを1行加えるだけでホームページに設置でき、自社の採用広報やブランディング、気軽に候補者に出会う手段として企業は利用できる。

「Slackは社内向け。ビジネス用途ではない国内のFacebookをリプレイスする」

 ブラウザベースでのビジネス連絡先管理ツールとして4月に始まったSyncだが、その目的は、単なるビジネスネットワークの可視化にとどまらない。

 今回発表となったメッセンジャー機能でSyncが実現するのは、会社の外とつながるためのプロジェクト推進だ。「プロジェクトを進めたい人、そもそも法人でなくてもいいが、仕事のためのメンバーを集めることができ、集めたあとの仕事のコミュニケーションを可能にしたかった」

 想定するのは、1対1ではない社外も含めた複数メンバーでのチームコミュニケーションだ。例えばメールのみの場合でも、『件名でスレッドが分かれてしまう/検索かけても引っかからない/ドキュメントの位置がわからない/連絡先を打ち込む手間』など、真にビジネスを効率化させる取り組みにはなっていない。

 開発中のメッセンジャー機能については、4月に始まったばかりのSyncチームを率いる同社CTOの川崎禎紀氏が答えてくれた。読んでいただければなぜ今メッセンジャーなのか、取り組みへの理解がより深まるはずだ。

――ほかのメッセンジャーソフトとの差別化は?
『チャットワークス』など、いわゆるチャットというくくりではライバルが多い。だがSyncが想定する一番のキーは、”社外とコミュニケーションをする”こと。ここは今、やっているところが少ない。数多くの営業管理ツールや、スタートアップで話題のSlackもあくまで社内用途。社外の人と気軽に始めるには向かない。
 日本の場合、そこにビジネス名刺代わりのFacebookが入っているが、プライベートなものとして混ぜたくないという人もいる。また、営業職になると、一気に用途での壁が上ってしまう。友達ではないお客さんからいただいた申請をブロックするのはNG。さらに、システム上行動が可視化されてしまうので使いにくいことこのうえない。
 スタートアップ界隈やウェブ業界にいるとピンとこないが、実際に困っている人はいる。今回Syncを始めるにあたりヒアリングをやって気がついた。その肩代わりではないが、仕事でのコミュニケーションにつながればいい。
――エンジニアリング面の苦労は?
 技術的には困難なことだらけ。チャットはシンプルなので、つくるのは簡単に思われるかもしれないが、実はリアルタイムでいろいろな情報が更新される。メッセージの送受信、平行して複数のメンバーから話しかけられるなど、フロントエンド・バックエンドともに快適に動くようにしなくてはならない。
 また、ネットワーク環境が悪いところで使うものなので、送れなかったらそのままにならないような処理をしている。話しかけている人のプロフィールもリアルタイムで確認できるなど、共通の知人確認なども含めてビジネスプロフィールを均一化したい。
 製作しているチームは4名。ウェブから始まり、現在アプリを手がけて1ヵ月半。目標はもっともっと高いところにあるが、まずはさわってみてほしい。

 本番は7~8月を想定。このほかビジネスサービスとの連携も視野にあり、グーグルドキュメントやOfficeなども含めて、ビジネス用途になっていない国内のFacebookの代替手段を提供するつもりだ。

「本質の時代を後押しする」

 60万人・1万社を超えたなかでの仕事のつながり、そして日経新聞との提携を結んだ先にあるのは、「働くことにおける自動化の促進、企業だけでないところでの“人のやり取り”の加速」だというが、いったいどういうことなのか。

 仲代表は「近づきつつある本質の時代を後押ししたい」と語る。たとえば働きたいと思う人を口先でだましてブラックな企業が人を採用することも、その企業や中の人の評判がより可視化されることで難しくなってくる。

 Wantedlyおなじみの求人ページのフォーマット「なにをやっているのか/なぜやるのか/どうやっているのか」が浮き彫りにするのは、本質的な、企業・個人それぞれにとっての働く理由だ。

「『人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされる』とサイモン・シネックがTEDで言っていた言葉に大変共感を得て、最初期のサービスに取り入れた。働く側でいえば、仕事のキャリア、外部とのつながり、それらが重視され可視化される時代。Wantedlyのインフラ化で、そのような仕事における本質的な力をベースに、より生産的な活動を促進したい」

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引っ越ししたばかりのオフィスにて。「『仕事でココロオドル』と言っているくらいなので、『働かされている』ようにならない設計を心がけた。評判は上々。日経の提携ニュースよりも、新オフィスのビジュアルへのいいね!数が多かったのがうれしい(笑)」

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