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アップルが来週、iTunesの定額聴き放題に参入するならサービスはこうなる:WWDC 2015

2015年06月06日 14時00分更新

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 6月8日(現地時間)からはじまるアップルの世界開発者会議を目前に、発表されるであろうアップデートについて世界のテック系メディアがわいている。
 iOS9、OSX、Apple TVのアプデートなど話題の柱はさまざまだが、個人的には特にアップルの音楽配信事業再編に注目している。もし実施されるのならば、大規模なアップデートになるかもしれないからだ。
 ただ、本当に基調講演で発表されるのかはまだだいぶ怪しい。直前になって、発表がなくなるのでは?という噂も出てきている。

 個人的には、そもそもiTunesのアップデートについては、昨年のWWDC2014の時点で何かを発表する可能性があると思っていた。直前の5月28日にヘッドホンブランドで独自の音楽配信サービスのもつBeatsの買収していたのが、その前フリだとの見方だ。

 でも結果的には、昨年のWWDCでは音楽まわりの大きなアップデートはなく、消費者目線での様変わりは、アップルストア店頭の一等地にBeatsのヘッドフォンが鎮座するようになった、という程度だった。

アップルの苦悩 音楽セールス史上初、デジタル販売がCDを抜き去った
IFPIの最新レポートより。
アップルの苦悩 音楽セールス史上初、デジタル販売がCDを抜き去った
The Vergeの記事より(出典はIFPIのレポート)。2014年度のデジタル販売収益の各国の比較。ダウンロードが優勢な国はまだまだあるが、一部の国では逆転も始まっていることがわかる。

 直近2014年度の音楽市況をみると、北米において、サブスクリプション型、いわゆる聴き放題の音楽配信サービスはデジタル販売市場の23%。まだ1/4に満たないとはいえ、2013年→2014年の伸長率は、売上で約1.4倍成長、登録ユーザー数は約1.5倍成長と、明確な成長トレンドにある。回線品質の改善やスマホシフトは進みこそすれ廃れないわけだから、2015年は昨年と同じか、それ以上に成長すると見るのが当然だ。

 ちなみに、北米の音楽市場のダウンロード販売規模が数年間減少なく続くと仮定した場合でも、1.4倍成長を続ければ2018年にはサブスクリプション型の売上がダウンロード販売の金額に追いつく計算になる(そこまで市場が広がるかはもちろん別なわけですが)

 そうした音楽業界のトレンドを知った上でアップルのポートフォリオを眺めると、有料型聴き放題サービスに対する明確な打ち手を持てていないことは、僕でなくても気になってくる。iTunes Radioはサービスインしているものの、SpotifyやPandoraを脅かすような存在感はまったく示せていないからだ。

 このタイミングで、アップルが聴き放題音楽配信に本当に参入するとすれば、以下のような内容になるはずだ。

WWDC2013キーノート iOS7編

・価格帯 月額10ドル(1200円)以下
Beat Music 9.99ドル/月、Spotifyは9.99ドル/月。つまり相場的に10ドル前後なので、この価格帯になるだろう。音質を下げたり、プレイリストのスキップなどを機能制限した無料プランも用意するはず。勝負に出るのであれば、6.99ドルや7.99ドル/月など競合他社つぶしを仕掛けるプラン体系もありえる。

・サービスプラットフォーム
Beats Musicのプラットフォームをベースに、iTunesをアップデート。Spotifyのような聴き放題音楽視聴の機能をiTunesに融合させる。iTunes Radioとも統合されるのではないか。

・対応ハードウェア
iPhoneは当然として、新型が発表との噂が根強い新Apple TVが出るのだとすれば、対応させない理由はない。合わせて長らくアップデートされていないiPod touchも気になるけれど、こちらの可能性はなんともいえない。

・対応OS
これまでどおりiOSは当然として、Android版を用意する可能性もある。状況証拠として、Beats MusicがAndroidにも対応しているためだ。ちなみにBeats MusicはWindows Phoneにも対応しているのだが、参入となった場合こちらの提供がどうなるのかも気になる。

・楽曲数
Beat Musicの配信楽曲数が参考になる。Beats Musicの現時点の配信曲数は2000万曲を明言している

・音質
競合サービスに揃える形で、無料プラン64kbps程度、WiFi環境向けの高音質出力で300kbps前後

 さて、本当にこういった内容で参入してくるとしたら(重ね重ね、仮定の上の希望的観測だし、日本市場で開始されるかはまったく別の話ですが)、一方で「アルバム購入の価値の再定義」という要素も気にかける必要がある。
 サブスクリプション型、聴き放題が便利であればあるほど、アルバム購入の価値は相対的に下がる。バランスをとるためにその価値を何らかの方法で上に引き上げなければならない。最も簡単なのは、たとえばさらなる高音質化。つまりハイレゾ対応だ(アメリカでは日本以上にマイナーな存在ではあるけれど)。

 実は仕様上の話でいえば、すでにLightning端子は信号レベルではハイレゾ出力は可能な設計になっている。だから、いざハイレゾ対応をはじめたとしてもことiPhoneに関しては周辺機器は既に潤沢だ。
 ただし、データフォーマットは48kHz/24bitという「CDよりちょっと良い」レベルになってしまう可能性はあると思っている。洋楽のハイレゾ楽曲を見てわかるように、日本のような96kHz/24bitや192kHz/24bitのような高音質楽曲は、いまのところほぼないからだ。

 来週、アップルが音楽関連で本当に何らかの発表をするのであれば、この音楽配信事業再編という問題に積極的に取り組むということになる。何も発表しないのであれば、iTunesはジワジワとSpotifyやPandoraにユーザーを取られ続けることを容認する、ということを意味する。ティム・クックはどう舵取りするのだろうか?

●関連サイト
WWDC2015公式サイト(英語)

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