5月25日、日本マイクロソフトがWindows Phone 8.1端末『Lumia 830』の社内利用を開始したことを発表しました。
Lumiaシリーズとして初めて日本の技適を通ったことで、いよいよ国内でも海外SIMなどの抜け道を使わずに利用できる“祭り”に発展するかと思いきや、事態はそう単純な話ではなさそうです。
『Lumia 830』(IFA 2014会場に展示された海外モデル)。角ばったデザインながら、ディスプレイ表面はカーブドグラスを採用した、Lumiaらしい斬新なデザインの端末だ。 |
■2011年のIS12Tに代わる社内端末として導入
最近、TwitterやFacebookなどにおいて、日本マイクロソフトの社員がLumia 830の写真を投稿したり、“諸問題をクリアした”とされるLumia 830が利用されているシーンを目撃したとの情報が相次いでいました。
これに対し、「日本で使えないはずのLumia 830を、どうやって利用しているのか?」との指摘があり、筆者を含む各方面から日本マイクロソフトに問い合わせがあったようです。
この点について日本マイクロソフトは、「特定の社員がLumia 830について話題にしたから、というわけではなく、会社として社内利用する準備が整ったため、発表を行なった」とコメントしています。
これまで日本マイクロソフトの社内では、2011年に発売したWindows Phone 7.8端末『IS12T』を業務端末として利用してきました。しかしIS12Tは3G(CDMA2000)にしか対応しておらず、KDDIのLTEを一切利用できないなど、不便な状況が続いていました。
さらに昨年秋にはWindows Phone OS 7.8のサポート期限が終了したことも、大きな問題となりました。日本全国に対し、Windows XPや2003 Serverからの移行を促してきた日本マイクロソフトにとって、サポート切れのOSを業務に利用していることは“不都合な真実”だったからです。
これについて同社は、「社内で特別なセキュリティ体制を構築して運用しているため、全く問題ない」などと強弁してきましたが、ついにLumiaシリーズの技適を通し、社内利用に踏み切ったものと考えられます。
Lumia 830の選定理由については、さまざまな憶測が飛び交っているものの、「総合的判断」との回答。一般的には、最近リリースしたモデルの中で、社内でまとまった数を調達しやすい端末がLumia 830だったのではないかと思われます。
『Lumia 830』は、Snapdragon 400搭載で、5インチの画面はHD解像度など、『Lumia 930』に比べれば性能は控えめ。背面の1000万画素カメラの周囲を取り囲む、黒い円形のパーツがデザイン上の特徴だ。 |
■一般ユーザーの利用を想定した発表ではない
この発表を受けて最も気になるのは、一般ユーザーがLumia 830を購入し、合法的に利用することが可能なのかどうかという点です。
この点について日本マイクロソフトは、「Lumia 830の導入は、あくまで社内利用を前提にしたものであり、発表した内容以上に公開できる情報はない」と説明しています。
Lumia 830には“RM-984”や“RM-985”といった複数の型番があるものの、その詳細については「発表した内容以上でも以下でもない」との回答。
技適マークの運用については、ソフトウェア的な表示ではなく“シール”としつつも、一般ユーザーが利用できるような手段を提供するかどうかについては、「発表した内容以上でも以下でもない」と、同じ回答となりました。
この発表を受けて、Lumia 830の購入を考えているユーザーも少なくないと思われるものの、「そういう用途を想定した発表ではない」という“空気”がひしひしと伝わってきます。
たしかにLumia 830は日本マイクロソフトが販売する商品ではなく、サポート体制などがないことは明らかです。少なくとも電波法の要件を満たせることが確実になるまでは、個人での購入は見合わせたほうが無難といえます。
一方、5月26日から開催予定の開発者向けイベント『de:code』など、プレゼンテーションの場において、Windows Phoneのデモ機としてLumia 830を使えることになるのは大きいといえます。
2015年2月の記者会見に登場したIS12T。日常業務にも利用されていた。新入社員向けに新たな端末を調達できないという問題もあったが、「退職する社員もいるので、当面は問題ない」と強気の姿勢だった。 |
■Lumia 830が国内Windows Phone市場に与える影響は?
一般に、企業が社内で業務利用するデバイスの置き換えにあたってプレスリリースを出すことはなく、今後の影響は未知数です。
Lumia 830を手にした日本マイクロソフト関係者が、意識的かどうかに関わらず、端末を周囲に“見せびらかす”ことで、一般ユーザーからの反感を買う可能性もあります。
また、マウスコンピューターは国内初のWindows Phone 8.1端末として、『MADOSMA』のブランドと仕様を発表したばかりです。なぜ、MADOSMAの発売を待つことができなかったのかという点も気になるところですが、日本マイクロソフトは「ノーコメント」としています。
マウスコンピューター正式発表した”MADOSMA”。ちなみに、明日、5月26日から開催の『de:code』において、ちょっとしたサプライズがあるとか。 |
IS12T以来、日本で久しぶりとなるWindows Phone 8.1端末の登場が期待される今夏に向けて、なんともタイミングの悪い発表になってしまった感は否めないところです。
■関連サイト
日本マイクロソフト 社員向けスマートフォンについて
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