音楽における物理フォーマット、すなわちCD販売は世界レベルでマイノリティになろうとしている。
IFPI(国際レコード産業連盟)がこのほど発表したレポート『Digital Music Report 2015』によれば、音楽のダウンロード販売とサブスクリプション(SpotifyやKKBOXなどが有名ですね)を合わせたデジタル販売収益が、史上初めて、グローバルで物理フォーマット販売を抜いた。物理フォーマットとは、もちろんレコードも含まれるがその大半がCDだ。
数字でいえば、具体的には2014年度の物理フォーマット販売は68.2億ドル(昨年比約8%減)に対し、デジタル収益は68.5億ドル(昨年比7%増)。ん?と思ったあなたは鋭い。昨年、つまり2013年度分の発表では、両者の差は10億ドルの差というレベルまで来ていて、抜かれるのは時間の問題だという観測はあった。そして、計算上"そうなりそうなこと"は大抵実現してしまう。
IFPIのレポートより。フィジカル(物理フォーマット)とデジタル(DLとサブスクリプション)のシェア、バリューの変化に注目。シェアはまだ50:50だが、販売収益ではデジタル販売が上回った。 |
デジタル販売収益を牽引しているのは、昨年からよく言われはじめたようにダウンロード販売じゃない。サブスクリプション型の聞き放題音楽ビジネスだ。アメリカなどではまだダウンロード販売のほうが市場規模は大きいが、サブスクリプションの収益ベースの伸び率は、昨年比で39%増の15.7億ドル。サブスクリプション型サービスの課金利用者数では、昨年比46.4%増(!)の4100万人。以上の数字は、単純計算で、1ユーザーあたり年間で38ドル=4560円ほどを聞き放題サービスに投じているという計算になる。
4100万人と聞くと少なく感じる人もいるかもしれないが、これはあくまで課金ユーザーの数だ。無料ユーザーはずっと多い。
たとえばSpotifyは、2014年の実績として有料会員1500万人、無料も含めたユーザー数は6000万人を超えると発表している。
まさに爆発的にという言葉がふさわしい伸張率。 |
The Vergeの記事より(出典はIFPIのレポート)。2014年度のデジタル販売収益の各国の比較。ダウンロードが優勢な国はまだまだあるが、一部の国では逆転も始まっている。この変化はトレンドだから、他国においてもサブスクリプションに市場を食われるのは時間の問題だ。 |
ここで気になるのは、'00年代は音楽ダウンロード販売の巨人だったアップルの存在だ。サブスクリプション型サービスが根付いていない日本ではともかく、グローバルにおける音楽市場トレンドを見る限り、iTunes Storeの傷みが進行していることは想像に難くない(日本にはSpotifyが上陸すらしていないというのは残念。ミュージックレーベルとの交渉がうまくいっていないという噂もある)
一方で、2013年のWWDC(世界開発者会議)で、サブスクリプション型の無料聞き放題サービスとしてデビューした『iTunes Radio』は苦戦が伝えられている。
2013年のWWDCで披露されたiTunes Radio。日本はまだサービス対象地域になっていない。 |
iTunesというサービスを今後も続けていくとすれば、大きな舵取りの変更はこの2015年を置いてほかにない。
布石はある。買収したbeatsの音楽配信サービス、beats musicとの統合がキーになるかもしれない。先日発表されたばかりのWWDC2015の日程は6月8日から。この初日基調講演で、ダウンロード音楽販売に対するアンサーがあるのだろうか? もちろん、用意周到なアップルのことだからプランは常に持っているはずだ。ただし、それを発表するのかどうかは、その日になってみるまでわからない。
●関連サイト
IFPI publishes Digital Music Report 2015
The Verge"Digital music revenue overtakes CD sales for the first time globally"
WWDC2015
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