ラクスル代表 松本恭攝(やすかね)CEO |
「先月40億円を調達した。未上場のIT企業として最大規模だ」
印刷サービス・ラクスルの成長が止まらない。同社代表の松本恭攝CEOは3日、記者会見で冒頭のように述べ、チラシの印刷やポスティングを中心とした今後の成長戦略を説明した。顧客は現在約10万社だが「100万社を目指したい」と抱負を述べる。
ラクスルは印刷所のクラウドソーシング企業。複数の印刷所を束ねることで、普通なら1000枚で6000円かかる印刷費が2000円台に下げられる。印刷所も紙やインクのような原料をラクスルを経由することで安価に購入できるモデルになっている。
「印刷業界は非常に巨大で、非効率で、いびつな形。長らくイノベーションが起きていない。業界の構造を変えれば産業が変わるんじゃないか、という思いから会社を設立した」(松本代表)
遠藤憲一、要潤が主演のテレビCMも先月から放映
1000部で1万円、1万部でも5~10万円
オプト、ウィルなど10社から先月に合計40億円の投資を受け、戦略事業に掲げたのは新サービス「チラシラクスル」だ。
チラシのデザインから効果検証、印刷、家庭へのポスティングまで一気通貫で注文できる。デザインができた段階で数百人〜数千人規模のアンケート調査をして有効なデザインを絞りこめるのも特徴のひとつだ。
1000部のチラシの印刷・ポスティングを依頼した場合1万円から、1万部でも5〜10万円ほどでまかなえるそうだ。価格はもちろん「小ロット対応」が強みだと松本代表は言う。
「代理店は(営業コストがかさむため)小ロットの注文を受けたがらない。人が介在しない、ウェブ上でコミュニケーションをとることで小ロットでも使えるようになった」
デザインやポスティングは当面、クラウドソーシングのリアルワールドと提携。対面ではなくオンラインのコミュニケーションにより低コスト・短納期の受発注を実現する仕組みだ。
チラシの配布エリアはウェブで決められる |
ネットによる「リアル広告」の改革を
狙いは事業者数にして国内企業の99%を占めるといわれる中小企業。現在ウェブマーケティングに注目が集まっているが、中小企業の8割は公式ウェブページの更新を多くて数ヵ月に一度しかできていない状態だ。
状況を見るだに未だ「リアル広告であるチラシの需要が大きいのではないか」と述べ、「中小企業の商売をラクにスル」という事業の方向性を説明した。同事業を武器に世界展開も狙いたいという展望についても語った。
「集客・広告というと、グーグル、ヤフー、DSPなどインターネットに注目が集まっている。たしかにインターネット広告はすごい勢いで進化してきたが、チラシは何十年も進化していない。今の集客ツールにイノベーションを起こしていく。『商売革命』を起こしていきたい」(松本代表)
グーグルというよりデジタルマーケティングに力を入れるアドビに近いアプローチにも感じるが、ウェブ技術を使って既存のマーケティングツールを革新するアプローチは新鮮だ。40億円の投資をしっかり利益につなげ、日本の印刷業界を活性化させてほしい。
写真:編集部
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