週刊アスキー

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130万契約突破の『dマガジン』誕生の裏側とこれからの課題を担当者に直撃

2015年02月10日 16時00分更新

 ドコモが昨年6月から開始し、『週刊アスキー』をはじめ雑誌120誌が読み放題の『dマガジン』。432円という低めの価格設定と、幅広いラインアップで、ドコモだけでなく他キャリアのユーザーからも支持を受けている。サービスを開始したきっかけから、現状、今後の展望までを、ドコモの古川学氏と笠原直和氏にお話をうかがってみた。

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↑ドコモ マーケットビジネス推進部 デジタルコンテンツサービス 書籍ビジネス担当課長 古川学氏(左)。同社同部 書籍ビジネス担当主査 笠原直和氏(右)。

■雑誌サービスで成功するのか疑問視されていた

──dマガジンのユーザー数が大変伸びているそうですが。

古川氏(以下、古川) 1月にdマーケット1000万契約突破したときに発表しましたが、1月11日時点でdマガジンは128万契約(2月10日現在では130万契約)に到達しました。ありがたいことに、100万契約超えるのは予想よりかなり早かったんですよ。サービス開始前は、今年度末までに40万契約ぐらいを見込んでいました。

──“40万契約”の予測は控えめな数字だったんでしょうか。

古川 今から見ると控えめに見えるかもしれないですが、それぐらいが妥当だと思ったんです。いろいろな市場を考えると。そこまで爆発するとは思ってなかったので。それが昨年のうちに40万を超え、非常にありがたいなと思っています。

──dマガジンが始まったきっかけは? dブック(ドコモの電子書籍サービス)が好調だったこともあるのでしょうか。

古川 dブックも好調ではありますが、dマガジンとはかなりユーザー層が異なっていますね。また、電子書籍のサービスと、電子雑誌の市場は“似て非なるもの”かなと思っています。

 実はdマガジンを始めるにあたって、色々な難関がありました。というのも、近年雑誌全体の売り上げが全体的に下がっており、その中で果たして雑誌だけにフォーカスしたサービスを行なっていいものか、疑問視する声が大きかったんです。

 でもやっぱり雑誌のコンテンツってすばらしいじゃないですか。内容もまとめられているし、写真もきれい。ネットの記事と比べて質も全然違うかなと。

 サービスを計画をする際は、ユーザーの利用シーンを当然考えます。たとえば、コンビニでは立ち読みしている人が多いなとか。また、私は旅行へ行きたいときなどは図書館で旅行雑誌をはしご読みしたり、時間つぶしに本屋に行って立ち読みしたりしていますが、この“立ち読み”のニーズは絶対あるなと思いました。

 なので、市場に参入するにあたって“簡単に雑誌のいろいろな記事を読めたり、今まで手にしたことのない雑誌を気軽に手にとれる”というところは多分当たるんじゃないかと思い、電子雑誌の読み放題サービスをやってみようと思ったのがきっかけですね。

 スマホで、いかに簡単に手軽に短い時間で読めるか。立ち読み感覚で、ネットの記事を検索するのと同じような感覚で“dマガジンを見てみようか”という思えるようにするにはどうしたらいいのか、そこをかなり議論しました。

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↑『dマガジン』月額432円、iOS/Android(キャリアフリー)対応。3月31日まで、初回31日間無料。

■ふだん雑誌を読まない人が読みたくなる工夫

──雑誌読み放題というサービスの成功例がほとんどないなかで、思い切った決断でしたね。

古川 そういう意味では非常に悩んだ経緯はありますが、やるからにはヒットさせなけれ
ばいけないので工夫をしました。また、競合のサービスについても徹底的に研究をしました。

 dマガジンには“雑誌ごとに読む”というメニューがあるんですが、それは他社にもあります。『週刊アスキー』をずっと読んでいる方が週アスが入っていると知れば入会するかもしれないんですが、雑誌買ってまで読まない方や立ち読みする方は、そこまで雑誌のタイトルを気にするかなぁと。

 ということで、“記事から読む”メニューをつくりました。これは他社にはない見せ方なんです。人にはそれぞれ趣味趣向があるじゃないですか。「雑誌を買ってまでは読まないけれど、旅行情報はほしい」とか「ビジネスの記事がちょっと気になるな」とか。そういう興味で立ち読みされて、記事が良かったらもっと読もうかなというシーンを想定しました。

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↑古川氏。

■あえてビジュアル重視のインターフェースに

──操作性やユーザーインターフェースで工夫した点は?

古川 タブレットで見るとかなり大画面で迫力があっていいんですけれど、やはりスマートフォンのユーザーが圧倒的に多い。

 私がメンバーに言ったのは「混んでる山手線で、片手で持って、もうひとつの手でピンチイン/アウトとかは無理だろう」と。そこで、つり革持ちながらでも、空いている片手で持ちつつ簡単に拡大/縮小できるようにしました。

 パターンは2つあり、ひとつは右利きでも左利きでも、両サイドのどちらかを0.5秒ぐらい押すと拡大/縮小ができます。また、ダブルタップで原寸大の大きさにできます。つまり雑誌のダイナミックな画面の大きさをすぐ簡単に操作できるわけなんです。

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↑左右の端を長めに押すと、拡大/縮小のバーが出てくる。

──メニュー上の文字が少ないですよね。

古川 わざとです(笑)。しんどくなりますよね、文字が多いと。やはりビジュアルで見せたいなと。

──なんか本屋さんで棚を見ている感覚に近いですね。平積みの。

古川 そういうところは意識しています。「たくさんあるよ」と。このUIについては賛否両論ありますが、良いと言ってくださる方も多く、僕らは気に入っています。

笠原氏(以下、笠原) ただ、当初より雑誌数が増えてきたので、探しやすさという点では限界に近づいてきているのかと思います。そのあたりは今後工夫していきます。

──週アスを探すのが結構大変でした(笑)。 どこだっけ……って。

笠原 『読み放題』というサービスも始まったばかりなので、やりながらというのが正直なところですね。

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↑笠原氏。

■ふだん読めない女性ファッション誌も堂々と読める!

──雑誌数も多いですよね。

古川 現在は120誌あります。スタート時は79誌でした。

 このコンテンツの量も他社サービスよりも充実しており、よく読まれている主要な雑誌を頑張ってそろえました。dマガジンの場合、初電子化であったり、初めて読み放題サービスに参加した雑誌もたくさんあります。出版社さんとともに、雑誌を読まれない方に雑誌のコンテンツを見ていただいて、良さを理解していただくことで「雑誌の新しい市場をつくりましょう」と頑張っています。

──サービス開始時から増えた雑誌は? 今後はどんなジャンルを充実させていく予定ですか。

古川 スタートでは間に合わなかった雑誌や、数が少なかった女性ファッション誌をだいぶ充実させました。ジャンルを増やすというより、基本的には、よく読まれている雑誌を選定し増やすようにしていますね。また、クルマや野球、プロレスといった趣味の雑誌も取り揃えています。

──ユーザーの方はどんな雑誌を読まれているんでしょうか。

古川 年齢層も幅広く、男女はほぼ半々なんですが、男性は主に週刊誌、女性はファッション誌が中心ですね。ただ、女性ファッション誌は年齢層や趣味趣向でたくさんあるためばらつきがありります。また、意外だったのが、女性が写真週刊誌を読んだりと、ふだん手にしない雑誌を読まれる方が多かったです。これは極端な例ですが、私が本屋でギャル系雑誌を見ていたら、ただの変態おやじなんですよ(笑)。でも、このサービスなら読めるんですよ。

──おふたりはどんな使いかたをしていますか?

古川 私は意外と料理をするので、『オレンジページ』などを見て、つくりたい料理をクリッピングして後で見たり、髪形などを美容院でオーダー用にクリッピングしたりと、割とプライベートな使いかたをしています。

笠原 私も週刊誌の気になる記事を切り抜きしたり、どこへ食べに行こうかというのは興味あるのでグルメ雑誌もクリップしますね。

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↑気になる記事は、タップで即クリッピングしておける。最大100件まで保存可能。

■インターフェースは日々改善中

──クリッピングを使ってみて思ったんですが、仕事用、物欲用などわけられるといいなと。

古川 そのあたりはやっていきたいですね。まだまだ未完成なサービスですので、そういう所の工夫とか、“マイページ”の機能をもっと充実させていきたいと思っています。

 私たちの想定と違っていたのは、お客さん自身が、今まではあまり雑誌にふれなかったけれど、「あ、この雑誌いいな」と“雑誌から選ぶ”を意外と使われるんですよ。でも、これだけ雑誌数が増えると、読みたい雑誌はどこにあるのかまだ探しづらい状況です。自分のお気に入りの雑誌がすぐ見つかるUI/UXにしていけるよう、もっと工夫が必要かと思っています。

──検索がないのは大きな特徴かと思いますが、あえてつけていないんでしょうか。

古川 そうですね。検索をつけだすと、色々な記事が出ているので逆に混乱するかなと。
検索するよりも、このような見せ方をすることで「あ、こういう記事もあるんだ」と発見してほしいなというのもあります。

■今後はバックナンバー閲覧などアプリの操作性を強化

──雑誌1冊のデータ量はどのぐらいなんでしょうか。

古川 雑誌はページ数もバラバラなので、1ページで換算するとだいたい1MBぐらいですね。

──私はダウンロードする設定にしてみたんですが、使っている間あまり負荷を感じなくて……読んでいる間もダウンロードしている感じなんですか?

古川 そうです。そのあたりもちょっとずつチューニングしており、サービス開始当初よりはだいぶ良くなっていると思います。

──アナウンスしている以外にもマイナーアップデートされているということでしょうか。

古川 そうです、実は結構頻繁にやっています。

──ユーザーからの声で上がってるものは?

古川 細かい話ですが、現状ではバックナンバーがアプリの中から読めない点ですね。アプリの中からいけるように、すぐ対応しなきゃいけないと思っています。また、雑誌タイトルをすぐ見つけられるような機能も近々に入れる予定です。

 あとは、自分のお気に入りの雑誌を設定しておけば、配信日にプッシュで“今日配信しました”とお知らせするような仕組みは入れる予定です。以上は、年度末までに行ないたいですね。

■2回利用したユーザーは継続率が高くなる

──現在は31日間無料というキャンペーン中ですが、反響はいかがですか。

古川 dマガジンは一回使うとなかなか止めないという傾向があります。私たちはユーザーが何回読んだかというデータを取っていて、どれだけ継続率が続くのかというのを見ているのですが、無料期間中に2回読むと継続率が格段に上がります。

──私は雑誌を紙で買う派ですが、場所もとるしお金もかかるのでそんなに大量には買えないんです。でも、あきらめていた雑誌がdマガジンに結構あるので、雑誌を買う人も利用しそうですね。

古川 私は阪神ファンなので、プロ野球のシーズンが始まれば野球雑誌を読む率がかなり上がりそうです(笑)。やっぱり趣味嗜好が強いですね。今の時期なら確定申告など……その時その時によって読む雑誌も変わると思うんです。そういうところをお客さん目線で、どう利用を促していくか。あるいはどう見せていくかが私たちの使命なので、日々精進していきたいと思います。

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↑2月28日までの各週ごとにdマガジンの雑誌を1冊以上読んだ1000名のユーザーに、抽選でドコモポイント500ポイントぶんをプレゼントするキャンペーンを実施中。

●関連サイト
dマガジン(PC向けページ)

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