こんにちは。オーロラ生中継プロジェクト、Live!オーロラを主宰している古賀です。
シーズン中、24時間の生中継を続け、2015年で10年目を迎えました。エンジニア業を営みつつ、1年間のうち、3分の2ほどオーロラとリアルタイムで付き合いながら生活しています。経験から言えるのは、“自然現象に振り回されると生活のペースが乱れる”ということです。皆さんはホドホドに(笑)。
さて、私は9月、いつものように生中継の拠点である米国アラスカ州、フェアバンクス市郊外の観測所に向かいました。プロジェクトを始めた2006年から毎年向かっているのですが、アラスカには1993年から20回近く訪れていることになります。
(撮影:古賀 SONY α7s+Sigma15mm F2.8 + Metabones SpeedBooster SS3秒 ISO5000 F2.0) |
いつもならスタッフの國方くんと2人で向かうのですが、今回はフットサルチーム仲間でもあるグリオンFCの皆さんと一緒! 彼らはLive!オーロラ初年度から長年サポートしてくれる大切な人達なのです。
結論から言えば、初日からオーロラ爆発が宿の上空でおき、同行したメンバー達は大騒ぎ。私は現地でのオーロラ打率10割を継続することになりました! その模様は後ほど。まずはLive!オーロラ観測所がどこにあるのか、ご説明したいと思います。
■オーロラの街、アラスカへ!
日本からアンカレジ国際空港まで、今年はJALのアラスカ直行チャーター便で向かいました。ツアー専用の便ですが、近年のオーロラ・ブームを象徴するように、搭乗客の年齢層は高め。僕が初めてアラスカに訪れた1993年頃は、若者がバックパッカーとして訪れる場所でしたが、今では海外旅行先として定着してきた模様。JALのチャーター直行便以外ではシアトルなど米国本土経由で向かう方法があります。
アンカレジ国際空港から国内便に乗り換え、フェアバンクスの空港へ。観測所はこの街から車で1時間ほど走った山麓にあります。
もちろん、アラスカ以外にも北欧、カナダ、南極も候補地としてあがり、14年間のプロジェクト準備期間のなかで、通信や観測環境の調査、法律や労務関係の交渉などを重ねた結果、フェアバンクス郊外の観測所に決めました。何より、オーロラが上空に発生する頻度が高いということは、観測地としての第一条件ですからね。
↑オーロラは地磁気の極である磁北極・磁南極の周囲を楕円状に形成するエリア上空で輝きます。10年に1度くらい北海道でオーロラが観測されるときは、楕円が広がって南・北へ降りてくる時期にあたります。その場合、地平線上に薄っすらとオーロラが現われるのが見えます。 |
さて。今回のアラスカ渡航のミッションは2つあります。
ひとつは、Live!オーロラ史上最大となる、生中継システムのバージョンアップ作業。9割ほどの観測システムを作り替えるつもりです。2つ目は、長年サポートをしてくれた友人達に生のオーロラを初体験してもらうことです。もし、オーロラを観ることができたら、難しいといわれるデジカメ撮影(長時間露光撮影)にもチャレンジしてみたいところです。
■アラスカの人は、氷の家に住んでいる?
(撮影:イヅミ/グリオンFC) |
さて、無事にアラスカへ到着。アラスカ州最大の都市アンカレッジの国際空港は、人口30万人、世界有数の貨物空港でもあります。アラスカは1年中寒い時期が続いていると思っている人も多いようですが、真夏には20度を越えることもあるんです。
今回訪れた9月頭は、昼間は10度ほどで夜間は0度と、東京の真冬に近い環境です。紅葉やサーモンの遡上、冬眠前の動物たち。秋のアラスカは地球の鼓動がいっぱい詰まった素晴らしい時期です。
外に出てアンカレッジの街並みと大自然を満喫したい……はやる気持ちを抑えつつ、フェアバンクス行きの国内便へ乗り継ぎます。週間天気予報では、悪天候となっていましたが、見事なまでの快晴! 期待も膨らみます。
↑余談ですが、フェアバンクスへ向かう飛行機の座席は、北方向を眺められる位置をオススメします。昼間の便では雄大なマッキンリー山を抱くデナリ国立公園を眼下に、運が良ければ夜間の便で、北の空に浮かぶオーロラと遭遇することがあります。(撮影:『NIKON 1 V3』ムラオちゃん/グリオンFC) |
↑アラスカ鉄道でデナリ国立公園へ!(撮影:『Sony NEX5N』ガッキー) |
↑仲間たちはアラスカ鉄道に乗ってデナリ国立公園まで向かいました。(撮影:『NIKON D90』ナカヤマ) |
↑デナリ国立公園で雄大な自然を満喫。(撮影:『NIKON D5000』タッティ) |
■アラスカ上陸初日にオーロラ爆発!
さぁ、旅の最大の目的はオーロラ。それはアラスカ上陸初日の夜にやってきました。規模は小さめですが、まごうことなきオーロラ爆発。オーロラ発生源でもある太陽風のデータ(NASA)は、それほど良い条件を示していなかったので、幸運に恵まれたと言っても良いでしょう。20年余り前、僕も初めてのアラスカの夜にオーロラ爆発を体験しましたが、彼らも同じ体験をするとは……!
おかげで、ほぼ同じ瞬間をさまざまなカメラで切り取ることに成功しました。
参加したメンバーの職業はさまざまで、今回初めてデジタルカメラを購入した人もいます。インターネットなどでみかけるオーロラ写真の多くは、実は撮影後にソフトでレタッチやHDR処理が施されているものが多いですが、以下の写真はいわゆる撮りたての“生写真”です(編集部注:写真クリックで拡大します。Web用に解像度を下げて掲載していますがご了承ください)。
また、オーロラ光は緑色の波長が最も多く、写真では肉眼より緑色が強くなる傾向があります。カメラの撮像素子の特性やカメラメーカーによって色処理が違うので、カメラによる色の違いもあると思います(ホワイトバランスは、色温度3000-4000に設定)。
(撮影:『Fujifilm X-M1+XC』16-50mm F3.5-5.6 OIS/SS10秒 ISO3200 F3.5/イヅミ) |
(撮影:『Nikon 1 V3』+『1 Nikkor』6.7-13mm/SS20秒 ISO1600 F3.8/ムラオちゃん) |
『X-M1』で撮影したイヅミさんは、今回のためにカメラを購入した初心者です。『Nikon 1 V3』で撮影したムラオちゃんは日頃から趣味でカメラを使うことがあるようですが、オーロラのような星景を長時間露光撮影することは初めて!
2人とも三脚を使用しましたが、リモコン・レリーズは使っていません。さらに、X-M1はAPS-C、Nikon 1 V3は1インチサイズのイメージセンサー。センサーサイズが小さいとオーロラのように暗い被写体には不向きだと思われがちですが、露出をうまく設定してあげれば、このとおり、問題ありません。ただし、画角が小さいレンズでオーロラのレイ構造と言われる光の筋を撮影すると解像度や感度特性の差がでると思います。
次は、フルサイズセンサーを搭載し高解像度な『SONY α7R』で撮影された同時刻のオーロラです。
(撮影:『SONY α7R』+『Voigtlander ULTRON』21mm F1.8/SS5秒 ISO400 F1.8/ニーナ) |
α7Rで撮影したニーナは、Voigtlander ULTRON 21mm F1.8とマウントアダプターの組み合わせで撮影しました。この組み合わせはα7sで星景を動画撮影する人達にも好まれていますが、明るいレンズの効果もあり露光時間5秒+ISO400で、しっかりオーロラ光と星を捉えています。
この時はオーロラ爆発ですから、最も明るい部分で照度1ux程はあると思いますので、暗めでゆっくりした動きのオーロラを撮影するにはもう少し露光量を上げなければいけません。α7Rの高解像度を活かす上でノイズによる解像感の低下を防ぐ意味でもニーナが設定したISO400という感度値は正解だと思います。
ちなみにオーロラ爆発が収まって光が少し弱くなった時に長時間露光で撮影されたのが次の写真です。
(撮影:『SONY α7R』+『Voigtlander ULTRON』21mm F1.8/SS29秒 ISO400 F1.8/ニーナ) |
地上の風景も、オーロラも、どちらも明るく見える写真です。この写真からは、オーロラ爆発の時より素晴らしいオーロラがでていると思われがちですが、肉眼では逆の様子です。これがオーロラ写真の持つ“ギミック”であり“バイアス”ですが、一枚のキャンバスにオーロラと風景を美しく描く場合は、オーロラの光量と形、構図内の景色、月や人工物の明かりの組み合わせによって、適切なカメラ設定値は変わってきます。
一般的な撮影方法では、肉眼でもはっきり色合いまでわかるほど明るく、激しく動き回るオーロラは、露光時間は短め(1-5秒程度)で、ISO感度を調整しながら撮影します。一方、動きがあまりなく、暗めのオーロラはISO感度を低めにして長時間露光で撮影します。
さあ、いきなりオーロラ大爆発に出迎えられた一行ですが、2日目はLive!オーロラのアラスカ観測所へと向かいます。続くレポートは1月2日公開。また明日、『週アスプラス』でお会いしましょう!
■関連サイト
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