関東地方のベンチャーによる事業プレゼン大会“全国スタートアップデイin関東”が、2014年11月8日に埼玉県大宮市で開催された。トーマツベンチャーサポート、サムライインキュベート共催による。東京やシリコンバレーとは一味ちがう地方ならではのユニークなベンチャーが集まり、プレゼンのグランプリとして埼玉県松伏町のテコ社が表彰された。(関連記事)
■洋裁パターンのクックパッド
O2Oアパレル“フクル(fukule)”
クックパッドの洋裁版をうたう手芸・洋裁レシピの投稿サイト“フクル”。登壇した木島広社長はコム・デ・ギャルソンの元チーフパタンナー。和洋裁の趣味人口は731万人、国内のコスプレイヤーは10万人と言われている。しかし手芸雑誌に掲載されているパターンやレシピはわずかで、手軽に洋裁を試すには、パターンが無料・格安で手に入るサイトが必要と考えた。競合となる“ステッチステッチ”はアマチュア向け。
フクルはすでにアパレルのパタンナーを始めとしたプロ向けのパターン・仕様書ダウンロードサイト“フローディング”を運営しており、今後フクルを通じて一般個人にターゲットを広げていく。収益はデザインパターンの有料販売、ミシンの販売代行、洋裁の動画指導などを予定する。完成した衣類のサイト公開を通じて一般個人に“見せるよろこび”を提供したいという。
■保育園向け写真販売代行サービス
ハッピースマイル“みんなのおもいでドットコム”
保育園向けのオンライン写真販売代行を展開。佐藤堅一社長は元自衛官。「写真に対して未知なる可能性を感じ」(佐藤社長)退官し、2008年に起業した。保育園児の保護者は「ふだんの子供たちの様子が見たい」という要望があり、一方の保育園には「たくさん写真を展示したいがコストがかかる」という悩みがあった。 埼玉県で800人対象のアンケートを実施したところ、保護者の8割がネットで写真を買いたいと回答したという。使い方は保育士がデジカメやスマートフォンで園児の写真を撮影してアップロードするだけ。競合との違いは現像・仕分けが内製である点。契約件数を3年以内に現在の500箇所から2000箇所まで増やし、2020年まで上場が目標。
■イベント告知から受付までを簡単に
ネットスケット“イベントクリエイト”
告知サイトの作成から自動返信フォーム、タブレットを使った受付管理サービスを提供し、イベント会社の告知から受付までの流れを支援するサービス。イベントの告知はもちろん、参加希望のFAXやメールの確認・管理、当日の受付まで人件費がかかるという悩み、「イベント頑張り病」(同社)にかかっている会社は多いという。イベント会社のセミナーや勉強会はもちろん、大学やNPO、小売事業者のファミリーブランドセール告知などにも使えるという。現在β版をリリースし、受注件数はおよそ70件。同社ではコミュニティーサービス“イベレボ”も運用中。
■新聞配達に電動バイクを
“業務用電動バイクTeco(テコ)”
配達業者向けに電動バイク、LPガスとのハイブリッドバイクをリース販売する。環境に良い・騒音が少ない・経費がおさえられるといった利点のほか、災害時のガソリン不足を見越したBCP(事業継続計画)活動をニーズとして全国展開。新聞配達に強みがあり、読売・朝日・中日など大手新聞社の販売店で採用されている。最近では警備会社アルソックにも採用された。事業者の用途に合わせて車体、大型の電池を自社で設計・開発できる技術開発力が強み。業務バイクの市場規模は国内36万台、世界3600万台以上。2020年をめどに海外展開をはかり、上場を目指す。
■心筋梗塞の患者をITで救いたい
株式会社C&T 医療用通訳支援サービス
医師向けの通訳支援アプリを開発し、現在試験的に提供中。対応言語は29ヵ国語。病院と医師に取材し、必要な単語を詰めこんだ。オフラインでも動作するためICU(集中治療室)や手術室でも使用できる。現在は医療従事者向けだが、今後は個人にもアプリを提供し、対応言語を増やす計画だ。
■ナンバーワン裏原宿系ブロガーのメディア
株式会社ステイゴールド“Leaddy”
ライフスタイルに特化したメディア「“Leaddy(リーディー)”を運営する。高級ラインではなく「ちょっといいな」と思うサービスやモノ、コトを紹介する。サイト規模は月間25万PV、ユニークユーザー6万人。収益源はアフィリエイト広告がメイン。今後はバナーや記事広告、有料記事による収益増を予定。「日本のブランド、メーカー、工場の価値を守る」が企業のビジョン。代表の北條真之はブログ格付けサイトで6年連続1位を獲得していたストリートファッションブロガー。“裏原宿”ブームは原宿の小さなショップから始まった文化だが、外資系のファストファッションブランドの流入によって、日本で生まれた裏原宿のブランド価値が下がってしまいかねないと危機感を覚えた。日本のライフスタイルを海外に紹介できるグローバルメディアを目指す。
■炎上抑止メールシステム
インゲージ“リレーション”
顧客が会社に送った要望のメールをLINEのようにタイムライン表示するメーラー“リレーション(Re:lation)”を展開。問い合わせの背景や、担当者のやりとりを把握しやすいという。また登録したキーワードからツイッターの書き込みを抽出し、やりとりに表示する機能もある。最近は消費者がクレームを“問い合わせ”ではなく直接ソーシャルに上げることがあり、新たな対応策が必要になっているという。
■ポイントカードをITで便利に
ジード“ポコカ”
ポイントカードやクーポンの仕組みをIT化する、成功報酬型のクーポンシステム“ポコカ”を10年以上に渡って運営している。基本無料で、クーポンを通じて売り上げが出たときに広告費が発生する。売上発生までの流れを分析することで、ブログやポータルサイトからクーポンへのリンクを貼るなど、クーポン流通に関わった関係者に謝礼を払う仕組みも備えている。小売店では紙のポイントカードを発行したがる場合も多いが、紙カードとの併用で進めたいと考えている。
■位置情報で従業員のムダを減らす
インフォキューブLAFLA“サイトストラトス”
出光やロッテなど大手が導入するウェブページ行動解析基盤“サイトストラトス”を運営、同技術を活かした位置情報解析プラットホームを開発。WiFiやBluetoothのような無線経由でスマートフォンやタブレットなどのGPSデータをリアルタイムで取得。地図上にデータをマッピングし、導線を見える化・分析する。現在は製造業や商業施設における従業員の作業導線改善向けに展開しており、具体的には星野リゾートが従業員の掃除やシーツ交換などの動きにムダがないか確かめるため試験導入中。まずは社内利用を中心に、最終的には利用者の理解を得た形で、クーポン配信のようなマーケティング活動への導入も狙う。クラウドビジネス基盤を活かし、月額5000~5万円の比較的安価な商品を開発。近距離無線通信ZigBeeも使えるため、iBeaconのように特定のビーコンデバイスに限定されないのも強み。
■町工場が本気でiPhoneアクセサリーを開発
NITTO“くるみる”
ヌンチャク状のiPhoneケース『iPhone Trick Cover』、iPhoneカメラで360度から商品写真を撮れる回転台『くるみる』を開発する。創業数十年の町工場であり金型メーカー。後継者がいなくなった中小企業3社を買収、従業員の雇用を守る形で事業を拡大している。iPhone Trick Coverは2年前、国内中小メーカーとして初めてクラウドファンディングを活用。200人から130万円を集めて製品を開発、現在までに累計1万3000台を売るヒット商品になった。ものづくりの過程を秘匿せず、インターネットやYouTubeなどに公開していくオープンイノベーションを社是とする。“くるみる”はクラウドソーシングのランサーズでネーミングやロゴ、クラウドファンディングで開発資金をそれぞれ募集して、9月に発売した。撮影した回転画像から3Dモデルを作り、3Dプリンターで出力する機能もつけている。今後はIT企業と中小企業の連携を支援するブリッジ役としても市場に貢献していきたいという。
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