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ZenFone5投入で日本のSIMフリースマホ普及に舵をきったASUS会長を直撃(石野純也氏寄稿)

2014年10月31日 06時30分更新

 ASUSは、5インチのSIMフリースマホ『ZenFone 5』を発表した。LTEに対応し、シンプルなデザインを採用しながら、価格は16GBのストレージ容量でわずか2万8944円。32GBでも3万2184円と、機能と価格のバランスがよく仕上がった商品になっている。

『ZenFone 5』
↑LTE対応SIMフリースマホ『ZenFone 5』。

 “ZenFone”は、ASUSが立ち上げたスマホのシリーズで、アジア圏を中心に広がりを見せている。ASUSの会見では、同社会長のジョニー・シー氏が、月産100万台と高い需要があることを明かした。このヒット商品を、満を持して日本に投入するというわけだ。

 合わせてASUSは、9月にドイツのベルリンで開催された“IFA”に合わせて発表した、Android Wear採用のスマートウォッチ『ZenWatch』も発売する。同社としては初のウェアラブル製品となるZenWatchは、ケース部分に金属を、ベルト部分にレザーを使うなど、“本物志向”が特徴。カメラのシャッターになったり、スマホの置き忘れ防止ができたりと、ほかのAndroid Wearより独自に実装された機能も多い。

ASUS会長 インタビュー
↑Android Wear搭載『ZenWatch』。

 新たにZenFone5やZenWatchを投入するASUSだが、そもそも同社はPCメーカーとして有名だ。そんな同社が、なぜスマホの開発に舵をきったのか。そして、ASUSは日本のスマホ市場をどのように見ているのか。会長のジョニー・シー氏に単独インタビューをする機会を得たので、その模様をお伝えしよう。

ASUS会長 インタビュー
↑ASUSTeK Computerのジョニー・シー(Jonney Shih)会長。

——最初に、ASUSがなぜスマホの開発を始めたのか。その経緯を教えてください。

シー氏:会社というものは、直近だけを見ていては駄目です。EeePCを出したときもそうでしたが、新時代が来ていることを、いち早く察知しました。それは、PCが大きなクラウドコンピューティングの一部になるということです。どんどんモバイル化が進んでいくと、スマホになりタブレットになり、その先には“IoT(Internet of Things)”の時代が待っています。ユビキタスコンピューティングに向かうということです。

 私たちは、10年前に研究チームをつくり、3Gや4Gの研究をしてきました。IP(特許)の数を見ていただければわかりますが、今ではクアルコムやノキア、モトローラと肩を並べて、トップ10に入っています。最初はPCメーカーでしたが、新たな時代はやはりスマホで、これがもっともホットなトピックです。

 さらにIoTの時代が来れば、それがホームオートメーション、スマートシティ、スマートホーム、スマートウェアラブルになっていきます。これが、今回ZenWatchを出した理由でもあります。

 スマホ市場には、2〜3年前から参入しました。PadFoneから入りましたが、市場にはああいったイノベーションが必要でした。PadFoneに関しては北米のAT&Tと一緒に調査もしています。iPhoneに比べ、PadFoneだとタブレットもついてくる。そういうと、80%の人がこちらを選ぶという結果も出ています。

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↑日本では『Pad Fone2』を2013年1月に発売。

 (製品開発において)重要なのはカスタマーエクスペリエンスです。美しさ、電波特性、タッチレスポンスと、どのような項目であれトップを目指すことです。また、タイミングも重要で、さらにはハイエンドでも、“誰もが手軽に堪能できるワンランク上の贅沢”にしなければなりません。

 日本でもSIMフリースマホ市場が盛り上がってきていますが、これはとてもいいタイミングでした。普通の人が、手ごろな価格で、しかも高品質なスマホを使うことができるからです。

——とは言え、スマホメーカーはすでにいくつも存在します。ASUSならではの強みは、どこにあるのでしょう。

シー氏:エンドユーザーの目から、物事を見ることです。正しい穴を開け、そこを突くことが重要です。たとえば、“防水”という機能がありますが、これが本質的なニーズと言えば、必ずしもそうではありません。たとえば、iPhoneには防水に対応していませんが、皆さん買いますよね? 必要なパラメーターとそうでないパラメーターは、きちんと区別しなければなりません。これが、私たちの“Design Thinking”という考え方です。難しいことですが、非常に重要だと考えています。

 また、私たちには技術の蓄積があります。ブランドスピリットとして“In Search Of Incredible(挑め。想像を超えたその先へ)”があり、イノベーションを生みだすことを掲げています。そのためには、色々なパラメーターを見て、ブレイクスルーを起こす必要があります。そういうブレイクスルーにたどり着くのは、夜2時ぐらいになることも往々にしてありますが(笑)。

ASUS会長 インタビュー
↑ASUSのブランドスピリット“In Search Of Incredible”を紹介するシー氏。

 日本企業は、品質管理がすばらしいと思います。私たちはトヨタのTPS方式のような日本の管理手法を取り入れ、西洋のシックス・シグマを組み合わせて、品質を高めてきました。もちろん、品質だけがあってもダメで、パフォーマンスも同時に必要になりますが、品質から入るのは非常に重要です。

 そういったこともあり、KDDIのプロジェクト(『MeMO Pad 8 AST21』)では、海外メーカーでも、きちんとしたものをつくり、納期を守り、性能も出せたという評価をいただいています。これは日本企業の強みですが、私たちはそれをもっと先に進めていきます。

 すべてを組み合わせて、正しいポイントを突くこと。そして、“In Search Of Incredible”を内面化しくことが、私たちの強みになります。

——ASUSとして、日本のスマホ市場をどのように見ているのでしょう。

シー氏:市場のボリュームをほかの国と比較すると、少し違ったことが見えてきます。それは、高齢者の方がまだフィーチャーフォンを使っていることです。これはあまりよくない傾向だと思います。新しい時代は来ていて、世界はグローバル化してクラウドベースになりつつあります。そこにリアルタイムに、いつでもどこでもアクセスできるのがユビキタスです。PCの時代のように、ローカルだけを見ているのはいいことではありません。生産性という点でも、グローバルな競争という点でもそうです。

 私たちは、プレミアムな端末からスタートして、そこからコストを落としてより多くの人に広げていきます。日本でもSIMフリーがどんどん出てきていて、より多くの人がスマホを使えるようになっています。

 スマホが重要なのは、それがユビキタスコンピューティングの一部だからです。日本のユーザーが、フィーチャーフォンのままというのはよくないですね。しかし、これは私たちにとって、チャンスでもあります。今までのスマホは非常に高価な端末か、安いが見た目がイマイチな端末しかありませんでした。ですから、今が日本のスマホ市場に入る、いいチャンスだと考えています。ちょうど日本政府もSIMフリーを推進しているところですしね。

——先ほどMeMO Pad 8のお話が出ましたが、KDDIとの協業で、何か得たものはありますか。

シー氏:日本の企業は全体的にそうですが、KDDIは非常に要求が厳しい。そのため協力を通じて、多くのことを学べました。それは仕事に取り組む態度であったり、“品質”、“システム”など、多岐に渡ります。一方で彼らは私たちがよくやったと、きちんと評価もしてくれてもいます。

 KDDIは非常に先進的な技術を使う会社ですから、私たちも新しいCPUの『Atom Z3580(Moorefield)』をいち早く使いました。以前と比較しても、CPU、GPUともに高いパフォーマンスを達成し、信頼性や品質が出たという評価もいただいています。こうした高いレベルのチャレンジをして、問題解決することも学習しました。

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↑Moorefield搭載のLTEタブレット『MeMO Pad 8 AST21』。

 品質、スピード、パフォーマンスは、険しい道を通ってでも達成する必要があります。日本だと稲盛さんが非常にすばらしい。彼は京セラをつくり、KDDIをつくり、JALも復活させましたが、やはり同じような精神を持っているのだと思います。

——日本では『ZenFone 5』が発売されます。一方海外では、『ZenFone 4』や『ZenFone 6』などのモデルもあります。なぜ、今回は『5』だったのでしょうか。

シー氏:(キャッチコピーにある)“誰もが手軽に使えるワンランク上の贅沢”を提供するためで、LTEに重きを置いています。ZenFone 5を提供したのもそういった理由で、4や6の投入は考えていません。

 一方で、(今開発を進めている)“次のZenFone”は、フルスペックでLTEにも対応しています。これからも日本の皆様にはサプライズをお届けしていきたいと思っていますので、ぜひご期待ください。

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●関連サイト
ASUS
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