本日9月19日、NVIDIAはDirectX12に対応したハイエンドGPU『GeForce GTX980』および『GeForce GTX970』を正式にリリースしました。米国での予想価格はGTX980が549ドル、GTX970が329ドルとなっています。GTX980のサンプルボードを入手できたので、早速テストしてみたいと思います。
■TDP165WでSP数2048基へスペックダウンした?
それでは簡単にGTX970/980のスペックを確認してみましょう。
↑今回入手したGTX980のリファレンスボードの情報を『GPU-Z』で表示させてみたところ。 |
これまでGPUの性能はSP(CUDAコア)の数で決まるというのが定説でしたが、今回のGTX980はGTX780よりも256基も少ない2048基しかありません(GTX970は770より増えてますが)。そしてメモリーバス幅も384bitから256bitにダウン。唯一クロックが最低1126MHzと並外れて高いことと、TDPが165Wと低いことの2点。ここまでの数値だけを鵜呑みにすると、性能が低いように見えますが、GTX970/980はGTX750Tiで衝撃を与えた新アーキテクチャ“Maxwell”の進化版“第2世代Maxwell”を採用しているため、少ないSPでも高性能、というのが売りです。
↑TDP165Wと少ないため、補助電源は6ピンが2つ。推奨電源出力も500Wと使いやすくなっています。 |
第2世代Maxwellのスゴさに関しては、笠原氏が解説しているのでそちらをご覧ください。ざっと注目すべきポイントを列挙します。
・ハードウェアベースのメモリー圧縮技術でメモリーの実効帯域アップ
メモリーバスが狭くなっても、データを圧縮して取り扱うことで性能が稼げる、という技術です。
・HDMI2.0に初対応
4K液晶でリフレッシュレート60Hzを出すにはDisplayPortが必須でしたが、GTX970/980ならHDMIでも出せます。ただしディスプレー側もHDMI2.0対応が必須です。
↑ディスプレー出力はDVIが1系統に減りましたが、DisplayPortが3系統に増加。そしてHDMIはひっそりと2.0対応になっています。 |
・“DSR(Dynamic Super Resolution)”で軽いゲームが高画質化
画面を超高解像度で一度レンダリングして、液晶の解像度に合わせて縮小表示する技術。Macのレティナディスプレーと同じ理屈ですが、細い線を使った表現(草むら)などが特にキレイになります。DSRはゲーム側の対応は基本的に不要(ゲームの解像度上限が固定されていないことが条件)なので、古めのゲームでも使えます。
↑『ダークソウル2』でフルHD液晶に普通に表示した場合(左)と、DSRを使い4K相当の解像感にした場合(右)。細長い葉の表現が格段に向上しています。 |
・高品質でも軽いアンチエイリアス“MFAA”
既存のMSAAと同等の効果を約3割低い負荷で実現する新しいアンチエイリアス技術です。DSRが軽いゲームを高画質化する技術なら、MFAAは重いゲームを軽くする技術。ただし現在MFAAは対応ドライバ待ちです。
・VR酔いを防ぐ“VR Direct”
Oculus RiftのようなVRヘッドセットでは、視線の動きよりも描画が遅れやすいため“VR酔い”が発生します。NVIDIAの提唱する技術“VR Direct”を使うことで、低遅延のVR環境が得られる、というものです。上述したDSRやMFAAもVR Directの構成要素になっているため、VR環境にはGTX970/980が最適という訳です。
■検証環境は?
本題のベンチに入る前に、検証環境を紹介します。比較用のグラフィックボードはGTX680以降のハイエンドGeForceを準備しましたが、一部調達が間に合わずOC版を使っています。
●検証用PC
CPU:Core i7-4790K(4GHz、最大4.4GHz)、マザー:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)、メモリー:Corsair CMY16GX3M2A2133C11(DDR3-1600で使用、8GB×2)、SSD:Crucial CT512M550SSD1(512GB)、電源ユニット:オウルテック AU-850PRO(850W、80PLUS GOLD)、OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)
●比較用グラフィックボード
・GeForce GTX780Tiリファレンス、MSI N780GTX Twin Frozr 4S OC(GeForce GTX780)、GeForce GTX680リファレンス
■1枚でFire Strikeのスコアーが10000超え!
まずは『3DMark』の『Fire Strike』および『Fire Strike Extreme』のスコアーを比較します。
見事にFire Strikeのスコアーが10000を超えました。GTX780Tiを基準にすると2割も速くなっていませんが、GTX780より下のグラボを使っているなら、相当な性能アップになりますね。続いては、NVIDIAイチオシのゲーム『ウォッチドッグス』を使います。アンチエイリアスSMAA、テクスチャーと画質関係は全て“高”に統一。解像度はフルHDと4K解像度の2通りで試しました。市街地の一定のコースを走った時のフレームレートを『Fraps』で測定します。
GTX780Tiだと60fpsを割ることがありましたが、GTX980なら常時60fps以上をキープでき、平均してもGTX780Tiより7fps程度高いフレームレートで遊べます。さすがに4Kになるとフレームレートはガクッと下がりますが、それでも30fpsを死守しているのはさすが。GTX780/780Tiの最低fpsの落ち込み方が大きいのに、GTX980は最低fpsがあまり落ち込まないなど、パフォーマンスが改善された感がひしひしと感じられます。
最後に『Watts Up? PRO』を使ってシステム全体の消費電力を比べてみました。システム起動10分後をアイドル時、3DMarkの『Fire Strike』デモの同一シーンを高負荷時としています。
GTX780Tiの消費電力よりも高負荷時80W近くも低く、さらにアイドル時の消費電力もわずかですが下がっています。さすがワットパフォーマンスを売りにしたMaxwellアーキテクチャの最新版、といったところですね。ただTDP190WのGTX680よりもTDP165WのGTX980の方が消費電力が大きいため、TDP165Wという値はやや大げさかな、と感じざるを得ません。しかし1ワットあたりの性能はハイエンドGeForceの中でも格別に高くなっているのは確か。ゲームを始めたら5時間くらい一気にプレーしてしまう人なら、GTX980はまさに光熱費削減の神といえるでしょう。
■DSRは試す価値あり。ハイエンド好きなら買いだ!
駆け足でGTX980をチェックしてきましたが、ワットパフォーマンスの高さはさすがMaxwellといったところ。今までの経緯からこの後に“GTX980Ti”なんて上位版が出てきそうな気がしますが、RADEONがGCNで上位モデルをつくっても、今以上の爆熱&大飯食らいのGPUになるのは間違いなく、対抗馬となるGTX980Tiが出てくるタイミングはまだまだ後になりそうです。
そして何よりGTX980で面白いのは軽いゲームの画質をあげる“DSR”の存在。GTX970/980を組み込み、解像度設定を見直すだけで画質が上がるというのは、これまでのGPUになかった面白いフィーチャーです。
最大のネックは国内流通価格。米国価格を考えると為替レートの高さに泣きたくなりますが、ハイエンドGPU好きやコアゲーマーなら間違いなく買い。こんな面白いGPUは久しぶりといえるでしょう。
■関連サイト
NVIDIA
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