インテルは、IFA 2014で基調講演を開催し、コードネーム『Broadwell-Y』で知られる最新CPU『Core M』を発表するとともに、Core M搭載タブレットや2 in 1モバイルなどを披露した。
基調講演に登壇したのは、インテル上級副社長兼PCクライアント部門ジェネラルマネージャーのカーク・スカウゲン氏。基調講演でまず最初にスカウゲン氏が紹介したのは、デスクトップPCや低価格タブレットの進化や成長についてだ。
↑基調講演に登壇した、インテル上級副社長兼PCクライアント部門ジェネラルマネージャーのカーク・スカウゲン氏。 |
インテル製プロセッサを搭載するタブレットは堅調に推移しており、150を超える国で200を超える製品が発売されるまでに成長。また、最新のタブレットでは、119ドルからと非常に安価な製品が登場してきており、今後は低価格タブレットの分野でもインテルプロセッサ搭載製品の大きな成長が期待でき、年内4000万台の目標達成も問題なさそうとの認識を示した。
また、5モードLTE、最大300Mbps通信が可能なLTE Cat6、キャリアアグリゲーションなどに対応する次世代LTEモデム『XMM 7260』もOEMへの出荷が始まっており、LTE分野への注力も加速しつつ、タブレット市場を牽引していくと指摘した。
↑119.99ドルで発売予定の東芝7インチWindowsタブレット『Encore mini』を示しつつ、インテルプロセッサ搭載低価格タブレットの市場が大きく成長すると指摘。 |
↑次世代LTEモデム『XMM 726x』はOEMへの出荷が始まっている。 |
デスクトップPCについては、小型PCやオールインワンPC、ゲーミングPCなどで依然成長が続いているとし、今後もデスクトップPC分野への注力を惜しまないとした。そして、エンスージアスト向けの製品に力を入れている例として、デスクトップ向けCPUとして初の8コアCPUである、コードネーム『Haswell-E』こと『Core i7-5960X Extreme Edition』を取り上げ、2003年に登場したPentium 4と比べて40倍を超える性能を実現し、これこそがエンスージアストゲーマーに最適な製品と指摘。
基調講演では、Core i7-5960X Extreme Editionを搭載するデスクトップPCを利用し、4K液晶の3画面出力で3Dゲームがスムーズに動作する様子も披露された。加えて、ゲーミングノートについても、Iris/Iris Pro Graphici搭載CPUの採用により進化しているとした。
↑初のデスクトップ向け8コアCPU『Core i7-5960X Extreme Edition』は、2003年のPentium 4から処理能力が40倍以上が向上。 |
↑Core i7-5960X Extreme Edition搭載PCなら、4K液晶の3画面出力でも快適にゲームがプレーできる。 |
↑Iris/Iris Pro Graphics搭載CPUによって、ゲーミングPCも進化していると指摘。 |
ここでスカウゲン氏は、「何かが欠けているよね?」と会場へと問いかけた。スクリーンには“m”のみが強調された「What's been “m”issing」の文字。そして、この強調された“m”こそ、その欠けている部分を埋める重要なものであるとして、新CPU『Core M』を発表した。もちろん、欠けている部分とは、2 in 1や薄型軽量モバイルなど、現在最も成長している分野のことだ。
Core Mはコードネーム『Broadwell-Y』で知られる、低消費電力デバイス向けの新CPUだ。コードネームからもわかるとおり、第5世代Coreプロセッサと同じBroadwellアーキテクチャを採用し、プロセスルール14nmで製造される初のCPUとなる(Core Mに関する情報は、こちらの記事に詳しい)。
Core Mは、Coreプロセッサに匹敵する性能を備えるファンレスのタブレットや2-in-1を実現する、という目標のもとに開発されたCPUだ。実際に、基調講演で披露されたCore M搭載タブレットや2 in 1は、全てファンレス仕様。それでいて、性能面では4年前の超薄型モバイルノートと比較してCPU性能が2倍、グラフィックス性能が7倍になり、バッテリー駆動時間が2倍に延び、より薄く軽く、ファンレスになったと指摘。
その背景には、CPUの低消費電力化だけでなく、システム基板が小型化されたことも大きな要因であるとスカウゲン氏は指摘した。
↑ここで初めて『Core M』が正式発表された。 |
↑Core Mで、優れた性能とファンレス仕様の薄型軽量化を両立し、バッテリ駆動時間も延びる。 |
↑4年前の薄型ノートと比べ、Core M搭載製品はCPUは2倍、グラフィックスは7倍、バッテリー駆動時間は2倍となる。 |
↑Snapdragon搭載タブレットと比べても、Webアプリの処理速度は3倍、3Dグラフィックの描画能力は2倍優れ、マルチタスクでフルPCコンパチというアドバンテージがあると指摘。 |
基調講演で披露されたCore M搭載製品は、Acer、ASUS、Dell、HP、東芝、Wistronの6社9製品。形状は、2 in 1スタイルとクラムシェルスタイルがそろっていた。もちろん全製品がファンレス仕様で、“Bay Trail-T”Atomプロセッサを搭載するタブレットに匹敵する薄さを実現するものもあった。これらCore M搭載製品は2014年中に発売されるとし、さらに2015年初頭には第5世代Coreプロセッサが登場することも改めて指摘された。
↑Core M搭載システム基板(上)は非常にコンパクトで、ボディーの薄型化や小型化にも貢献。 |
↑基調講演で披露されたCore M搭載製品。ここには出ていないが、東芝のCore M搭載クラムシェルノートも披露された。 |
↑Core M搭載製品。上段左から、ASUS Zenbook UX305、HP ENVY X2の13.3インチモデルと15.6インチモデル、Lenovo ThinkPad Helix。下段左から東芝の未発表クラムシェルノート、Wistron N-Midas、ASUS Transformer Book T300FA、Acer Aspire Switch 12。 |
基調講演後半では、将来の技術についての紹介もあった。キーワードは“ワイヤレス”。現在のノートPCやスマートフォン、タブレットなどは、電源、LAN、USB、ディスプレーなど、様々なケーブルが接続されるが、それらを全てなくしてしまおう、というものだ。
ワイヤレスディスプレーの“WiDi”は、既に多数のPCやタブレットでサポートされており、2016年までに3億台以上の製品への搭載を計画している。ギガビットクラスの転送速度を誇る“WiGig”の普及も促進し、PC間で高速に無線データ転送を実現する計画。また、Open Interconnect Consortiumにおいて、ウェアラブルデバイスなど様々な通信対応機器との接続やデータ転送の互換性を取りまとめ、標準化の作業を進めているという。
さらに、ワイヤレス充電機能の実現に向けてAlliance for Wireless Powerに参画し、Rezenceというブランドのワイヤレス充電規格の普及に努めていくという。将来的には、スマートフォンやウェアラブルデバイスだけでなく、タブレットやノートPCへも搭載していく計画で、将来は充電パッドを仕込んだテーブル上にPCやスマートフォンを置くだけで充電可能になるとのこと。
↑第5世代Coreプロセッサはに2015年初頭に登場。 |
↑WiDiは2016年までに3億台以上の製品で対応。 |
↑WiGigでPC間の高速データ転送を実現。 |
↑Open Interconnect Consortiumではウェアラブル機器などとの間のデータ転送仕様の標準化に取り組んでいる。 |
そして、最後に披露されたのが、“RealSense Technology”に関するデモだ。カメラと深度センサーを活用し、対象物を映すだけでリアルタイムに3Dデータとして取り込む『RealSense 3D』のデモが行なわれた。実際に、深度センサーを搭載するタブレットPCの試作機を利用して、スカウゲン氏の上半身を様々な角度からカメラで捉えるだけで3Dデータが完成。その間わずか約20秒ほど。3Dプリンターとの組み合わせで様々な応用ができると考えられるため、注目のテクノロジーと言えそうだ。
↑Alliance for Wireless Powerに参画し、ワイヤレス充電規格Rezenceの普及にも努める。 |
↑『RealSense 3D』対応のタブレットPC試作機で、スカウゲン氏の上半身を取り込んでいるようす。 |
↑20秒ほどでスカウゲン氏の3Dデータの取り込みが完了した。 |
今後、Core Mによってタブレットや2 in 1は十分な性能を兼ね備えつつ、ファンレス、薄型軽量化が突き詰められ、薄さや軽さを魅力とするAndroidタブレットを凌駕するような製品が続々登場してくるはずだ。それに加え、各種ワイヤレス技術やRealSense Technologyが確立されれば、これまでの概念を覆すような製品も登場してくるだろう。そういった意味で、まだまだPC業界の未来は明るいと感じさせるに十分な内容の基調講演であった。
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