ドコモは7月25日、2014年度第1四半期の決算を発表した。営業収益は前年同期比3.4%減の1兆753億円、営業利益は同15.3%減の2096億円で減収減益。
新料金プランへの移行は好調で、純増数やMNPも改善したが、音声収入の減少や月々サポートによるマイナス影響をカバーできなかった。ただ、同社の加藤薫社長は「年間計画に対しては順調に推移している」としており、現時点では年間目標は据え置いた。
ドコモの加藤薫社長 |
決算のサマリー |
営業収益では、音声収入が同268億円減、パケット収入が同234億円増、d系のサービスなど新領域収入が同164億円増、端末販売収入が同55億円減で、これに月々サポートの影響で同458億円の減少となり、全体で営業収益は383億円減となった。
これに対して営業費用は、端末販売費用が同116億円減少し、償却費・除却費の同26億円増、新領域拡大のための費用などが85億円増加し、全体では4億円のマイナスとなった。このため、前年同期比2475億円だった利益は、379億円減の2096億円となった。
おもな指標 |
営業利益の内訳 |
減収減益となったが、契約数などは順調に増加。同期の純増数は、前年同期比5倍以上となる46万増となった。前期が9万増と苦戦したため、増加率は大きいが、純増数は50万を下回った。
ただし、新料金プランを発表した5月以降も順調に純増数を伸ばしており、改善傾向が見られる。新規の端末販売は同6万増の174万台と微増。
純増数の伸び |
純増数の傾向 |
解約率は、同0.19ポイント改善して0.67%。同社としては2年半ぶりの0.6%台への回復で、前期の1%に比べると大幅な改善。とくに若者の改善傾向が強いとのこと。前期はMNPによるキャッシュバック競争が激化し、転入転出が相次いだため解約率が増加したが、それが落ち着いたことも解約率の低下に貢献した。
新規に販売された端末数 |
解約率の動向 |
MNPは、今期もマイナス9万と転出超過だったが、前期比・前年同期比ともに改善しており、加藤社長は「MNP(転出が)ゼロ、(転入)プラスというのも夢ではない」と語る。MNPの月別の動向でも月を追うごとにマイナス幅は減少しており、新料金プランの発表が功を奏したと同社は見ている。
MNPの状況 |
MNPの動向 |
全体の端末販売は同23万台減の516万台で、そのうちのスマホは同29万台減の306万台と微減。スマホの販売比率は6割程度と前年の同水準だった。タブレットの販売数は、同約30%増の29万台。タブレットの低調傾向も伝えられているが、加藤社長は「タブレットは大丈夫だと思っている。Androidの新機種も好調に売れている」としており、とくにパケットシェアプランの導入で2台目需要がさらに増加すると見る。
スマホの総販売数 |
タブレットの販売数 |
全体のスマホ利用者は2534万契約に達し、LTE端末比率は83%。LTE対応スマホの増加はパケットARPUの増加に直結するため、順調な拡大をアピールする。LTE全体の契約数は2404万契約に達した。
スマホの利用者とLTE比率 |
LTE契約数の推移 |
ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は5120円で、同70円のマイナス。音声ARPUが160円減となり、パケットARPUの40円増、スマートARPUの50円増をカバーしきれなかった。
ARPUの傾向 |
5月15日から予約を開始した新料金プランである「カケホーダイ&パケあえる」は、6月1日のサービス開始時で208万契約。第1四半期末では467万契約に達した。7月24日には601万6000契約まで伸びて、「純増数に大きく寄与した」(加藤社長)。
音声定額制のカケホーダイは、通話の多いユーザーがまず移行する傾向があるため、音声ARPUを引き下がる。加藤社長は「想定よりも移行の数が多い」と話しつつ、予想を大きく外れてはいないことから「想定の範囲内」としている。今後、早期に1000万契約の突破を目指す。
新料金プランの推移 |
代理店手数料は同24%減となるなど、販売費用の適正化に向けて改善を続けており、加藤社長は「不健全なキャッシュバック」(同)によるMNP競争は避ける戦略は堅持していきたいと強調。全体として利益を拡大していく意向を示す。
6月24日から高音質なVoLTEを開始しているが、対応端末となる夏モデル4機種の販売は約60万台。iPadは6月10日から販売を開始しているが、第1四半期のタブレット販売数への貢献は軽微のようだ。
VoLTE対応端末は現時点で4機種 |
ネットワークは、LTE基地局が順調に拡大。第1四半期末時点で6万6300局となり、前期に比べて1万局以上を増やした。下り100Mbps以上の速度に対応した基地局も1万900局で順調に増加。年度末には全体で9万5300局、100Mbps以上の基地局は4万局を目指す。さらに、下り最大225Mbpsとなる“LTE-Advanced”も今年度内に開始する計画だ。
LTE基地局の拡大 |
新領域となるdマーケットの取扱高は同約30%増となる168億円。契約数は746万となり、前年同期比では増加したが、前期の769万に対しては減少。前期は恐らくMNP競争による大幅な増加があり、その反動で減少したとみられる。5〜6月にかけては回復傾向にあるが、それでも減少となった。
dマーケットの取扱高 |
dマーケットの契約数の推移 |
『dヒッツ』や『dマガジン』といった新サービスも順調に契約数を伸ばしており、1ユーザーあたりの利用料も950円となって拡大している。加藤社長は、これをさらに拡大し、年間の取扱高900億円の目標を達成したい考えだ。
dヒッツやdマガジンの動向 |
dマーケットユーザーごとの利用料の推移 |
そのほか、組織改革やセグメント変更による新領域事業の収支明確化なども実施し、体制を整えてたことで「成長軌道に向けて順調な滑り出し」(同)という認識だ。
加藤社長は、減収減益で、営業利益自体も低い水準とどまったことに対して危機感を示しつつ、年間計画に対しての進捗率は順調で、さらに契約数などの改善傾向や組織改編など、「今年度に成長についての礎をつくりたい」(同)と意気込む。
また、今後はSIMロック解除義務化、クーリングオフ制度の導入といった新たな動きが検討されており、さらにNTTの規制緩和による固定回線とのセット割に関して、NTT東西の提供条件を踏まえて、まずは料金の割引施策を提供し、その後新サービスの検討も行なうとしている。
こうした新たな動向に加えて、新料金プランの契約数をさらに伸ばし、コンテンツ系の新領域事業も順次拡大を図って収益を増加させるとともに、販売費用を適正にコントロールしてコストを削減するなど、利益の最大化を目指していく。
●関連サイト
ドコモ 発表会資料掲載ページ
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります