週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

『聖剣伝説』生みの親と正統後継者に魅力を聞く(前編):召喚★アプリ神

2014年07月11日 15時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第2回目のゲストはこの人、スクウェア・エニックス『聖剣伝説RISE of MANA』のプロデューサー、小山田将さんです。さらに今回はスペシャルゲストとして聖剣伝説シリーズ生みの親である石井浩一さんにもお話を伺いました。(前編中編後編

『聖剣伝説 RISE of MANA』
アプリ神
アプリ神
↑左から安藤武博氏、小山田将氏(スクウェア・エニックス プロデューサー)、石井浩一氏(株式会社グレッゾ 代表取締役)。

■ 生みの親とシリーズ正統後継者に『聖剣伝説』シリーズの魅力を聞く!

安藤武博氏(以下、安藤):今日は”聖剣伝説とは何か”を聞いていくインタビューにしたいと思い、このお2人を召喚しました。『聖剣伝説 RISE of MANA(以下、ROM)』の小山田将プロデューサーと、聖剣の生みの親である石井浩一さんです。聖剣ブランドを引き継いだばかりの小山田はまだアプリ“神”とは言えないので(笑)、迫力をもたせるために聖剣伝説の創造神である石井さんにもお越しいただきました。RoMが出て約3ヵ月経ちますが、小山田の感触はどうですか?

小山田将氏(以下、小山田):はい、ユーザーの皆さんの反響に驚くと同時に、運営のいたらなさを反省しているフェーズです。

安藤:ゲーム自体は楽しく遊んでいただけているようで、ランキングの推移からも「もっと遊ばせて!」という、聖剣ファンの愛を感じますよね。

小山田:熱心なユーザーさんが多いので、完全に遊び尽くしていただいている印象を受けます。1日限定の降臨クエストを開催するとグッとランキングが上がったり、そういう動きを見ていると本当に皆さん待ってくれているんだなと思います。

安藤:RoMが出て3ヵ月が経ちますが、石井さんとお会いする機会も増えました。

石井浩一氏(以下、石井)そうですね、こういう絡み方も面白いなと思います。

安藤:小山田が自信を持ってタイトルにつけた“RISE”という言葉、これは聖剣ブランド復活ののろしを上げる気持ちがこもっている。聖剣を生み出された石井さんはRoMが出た後の動きをどう感じられていますか?

石井:実はまだ遊べていないからね、俺が持っている端末はAndroidだから(笑)(※インタビューを行った6月中旬時。現在はAndroid版も配信中)。でも、遊んだ人の感想はチェックしているし、つくり手側の目線で見てちゃんと準備してあるのかなとか、どういう計画を立てているのかなとか、どちらかというと心配する立場になっているね。

■ RoMの生い立ちと小山田氏の聖剣への愛

安藤:RoMが生まれた経緯をたどると、『聖剣伝説 LEGEND of MANA(以下、レジェマナ)』でドラゴンキラー編のシナリオを書いた八木正人と小山田から、聖剣をもう1回やりたいという話が偶然、同時期に別々にありました。そのとき僕は小山田に、聖剣をつくられた石井さんと『聖剣伝説2』と『3』をつくられた田中弘道さんに「新しい聖剣をつくります」と話をしてきなさい。それでオーケーであればやろうと指示したんです。その時点で石井さんも田中さんもスクウェア・エニックスを退社されています。杓子定規に著作権を解釈すると、タイトル自体は会社のものですから、勝手につくっても問題はない。でも気持ちの上で筋を通さないと、とてもつくれない大きなタイトルです。それで、お2人に承諾をいただいたら立ち上げようという話になったんですよね。

小山田:はい、そうです。

安藤:実際に話をしに行って、どんなことを言われましたか?

小山田:石井さんはすごく優しい方なので、「ありがとう」と。僕自身も、石井さんともう一度仕事ができるようにちゃんと聖剣を復活させたいと思っていたので、「つくっていいよ」と言っていただいて嬉しかったです。

安藤:小山田はフィーチャーフォンの時代からずっと聖剣を手掛けていて、石井さんと仕事をしていたこともありますよね。突然小山田が来たと思いますが、石井さんはどんな気持ちでしたか? 

石井:小山田君は俺がスクウェア・エニックスいたときから、聖剣に対する愛をもってちゃんとした形で作っていたじゃない。実績もあるし、どこを大事にすべきか解っているから、逆に「よろしくお願いします、つくってください」という気持ちだった。今まで聖剣を支持してくれた人が遊べなくることも心苦しかったから、そういう部分でも感謝してるよね。

安藤:フィーチャーフォン向けの『聖剣伝説 FRIENDS of MANA』のときには、専用ゲーム機とフィーチャーフォンとではスペック的に大きな開きがありました。スマートフォンが現れてその差がなくなったときに、小山田やコンソールのゲームをつくってきたスタッフが偶然同じタイミングで聖剣をつくりたいと思い、新たな聖剣がプロジェクト化した。まさに“RISE of MANA”という名前の通り、新しい形の聖剣伝説を立ち上げるにあたって無理な感じが一切無かった。必然的な流れでスタートしたし、今回も聖剣のことを深く考えてきた人間が携わっているので、新しいけど懐かしい感じもある。新スタッフによるRoMが聖剣かどうかといわれたら、まぎれもなく聖剣になっていると僕は思う。それが面白いですよね。

石井:遊んでいる人もつくっている人も、それぞれ「これが聖剣」というイメージのパーツをもっているから、そのいくつかが一致し始めると聖剣らしさがアップしていく。どれだけそのパーツをデータに入れられるかがポイントだと思うし、RoMは意外とファンが求めているものに近い気がするよね。

小山田:実は最初の聖剣の仕事も、ファン目線からの仕事の相談だったんですよ。

安藤:聖剣のレポートを書いたんだよね。

小山田:はい。聖剣の第1作、『聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~(以下、FF外伝)』を携帯電話でつくるときに、聖剣全シリーズの感想文を書きました。僕は小学校3年生の時にゲームボーイでFF外伝を遊んで感動して、聖剣伝説が大好きになったんです。だから当時FF外伝を好きだった人が『新約聖剣伝説(以下、新約)』で気になっていた部分を書いたうえで、FF外伝をつくらせてほしいと談判をさせてもらったんです。

石井:新約はFF外伝とは、ある意味で別物だからね。

安藤:つまりフィーチャーフォンでリメイクをするときに、新約ではなく、最初のFF外伝の方をやりたいと書いたんですね。

小山田:新約は聖剣伝説ではありますが、FF外伝として遊んだ聖剣伝説ではなかったんです。だから今はもうゲームボーイでしか遊べないFF外伝をなぜ遊びたいかを書きました。聖剣伝説2や3も本当はやりたいんですけど、ファン目線からするとまずFF外伝を待っていると思うので。

石井:FF外伝のリメイクで唯一ひっかかったのは、色が着くことだったかな。

安藤:なるほど、そうですよね。

石井:ゲームボーイは画面表示がモノクロで、ファミコンやスーファミと比べるとちゃちなイメージがあったけど、俺はそこを逆手にとって昔のサイレントムービーのような印象が与えられればと考えたんだ。それに色をのせるのはどうなんだろうと思ったけど、遊ぶ人が色をイメージする手助けになるのならありだなと思うし、逆に見てみたいと思ったね。

安藤:色を着けるときは、どういうことを心掛けたんですか?

小山田:当時プレイステーションでは、手書きで童話世界を表現したすさまじいグラフィックのレジェマナが出ていて、あたたかい聖剣伝説のイメージが確立していたんです。それを活かしつつも、自分としては1作目のFF外伝をつくりたい。FFと聖剣のイメージをどんな塩梅でやればいいのかが難しかった。

 実は最初、フィールドの岩壁をグレーの岩でつくったんですが、石井さんに「FFの世界の岩は白い岩だから、岩壁を全部白くしてくれ」と言われてそのとおりにしたら、一気にFF1~3の世界のイメージに近づいたんです。そこでFF外伝をカラーにする方法が解った気がしたんです。やっぱり石井さんは、高い次元で物事を見ていらっしゃいますね。

石井:岩壁は表面的には白い石なんだけど、割るとクリスタルが少し混じっていたり、ちょっとキラっとした石の結晶があるイメージなんだよね。クリスタルの力、その地脈が走っている世界だということがいろんなところで感じられなければ、寄せ集めの世界でしかない。岩壁のように表面しか見えないものでも、その奥がどうなっているのかをイメージする。例えば土や花、植物、そういったものに反映させておくと、説明はなくてもなんとなく世界としての一体感が感じられるんだよね。

安藤:以前もその話で盛り上がりましたね。ファンタジーを創作することは神話をイチからつくるということだと。石井さんが言われたように、なぜこの世界にクリスタルが存在していて、どのように地脈が走り、それをどのように手に入れるのか、それを生態系や自然の構造まで考えて構成していくと説得力が出るし、のめり込める世界がつくれるんですよね。

App Storeでダウンロード
AppStore アプリをダウンロード

Google Playでダウンロード
Google Playアプリダウンロード

●関連サイト
スクウェア・エニックス

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります