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Windows情報局ななふぉ出張所

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?

2014年06月11日 17時00分更新

 台北で開催された『COMPUTEX TAIPEI 2014』(6月3日~7日開催)で発表された製品のなかで、個人的に最も衝撃を受けたのが、東芝による7インチのWindowsタブレットでした。

 6月4日に開催されたマイクロソフトの基調講演では、未発表のWindowsタブレットの1つとして簡単に紹介されただけで終わりましたが、その実態を詳しく見ていくと、かなり異色の低価格タブレットであることがわかります。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑東芝の7インチWindowsタブレット。110ドルというAndroid版と同等の価格帯を狙う超低価格モデルだ。

 今回は、この超低価格Windowsタブレットについて、COMPUTEXでの展示機をもとにファーストインプレッションをまとめてみたいと思います。

■WindowsとAndroidのハードウエア共通化が実現するまで

 これまで、WindowsタブレットとAndroidタブレットの間には、ハードウェアに大きな違いがありました。そこでインテルは、Atomプロセッサー『Bay Trail』をWindowsとAndroid(とChromeOS)に対応させ、2月のMWC2014では、WindowsとAndroidを同じタブレットから起動するという、デュアルブートのデモを披露しました。

 このように、WindowsタブレットとAndroidタブレットでハードウエアを共通化するために、技術的なハードルは着々と下がってきてはいたものの、実際に両OSでハードウエアを共通化したタブレットを実現するにあたっては、各メーカーのさまざまなコラボレーションが必要不可欠だったのではないかと考えられます。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑Windowsボタンも廃止し、Androidとの間で完全なハードウエア共通化を成し遂げた。

 興味深いのは、このような共通ハードウェアのタブレットを開発した東芝の目的が、“低価格化”にあるという点です。たしかにプレミアムクラスのタブレットであれば、Windowsボタンを実装する程度のコストは無視できるほど小さいといえます。

 しかし前述の記事でも説明した通り、東芝はAndroid版と同じ液晶パネルにWindowsの画面を縮小して描画するというかなりの荒技を駆使して、低価格を追求しています。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑Android版と同じ1024×600ドットのパネルに1280×768ドットの画面を描画しているという。コストダウンを最優先した設計という印象だ。


■タブレットとしてのユーザー体験は限定的

 しかし、そのようなコストダウンの結果、仮にAndroidタブレットと同等の110ドル程度という価格を実現できたとしても、使い勝手には不安が残ります。そもそも画面を縮小して描画することで、視認性は確保されているのでしょうか。

 COMPUTEXにおける展示機は開発中のものであり、製品版までに改善される可能性はあります。しかしWindowsのスタート画面を見ただけでも、タイルの文字の一部が潰れていることが分かります。Internet ExplorerでWebページに日本語を表示してみると、全体的に滲んだような表示となっていました。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑スタート画面ではタイルの文字の一部が潰れており、見づらい部分がある。
100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑日本語のWebページを表示してみた。なかなか“微妙”な描画だ。

 一方、“等倍”表示であるはずのAndroid版がキレイかというと、決してそうでもないのが悩ましいところです。そもそも液晶パネル自体に、非常に安価なパネルを用いているという印象を受けます。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑Windows版と全く同じハードウエアのAndroid版だが、1024×600ドットの画面解像度をそのまま使用している。
100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑それでも高品質なディスプレイとは言いがたい描写だ。

 以上、開発機を見た感想としては、日本のWindowsタブレットユーザーが期待する「艦これは快適に遊べるのか?」といった疑問以前に、Windowsタブレットとしての基本的なユーザー体験に支障があるのではないか、と感じてきます。少なくとも、Excelのワークシートに表示された細かな文字を見ながら仕事をする、といった用途には向いていないという印象です。

■海外市場でAndroidタブレットに対抗する製品か

 特に日本のユーザーは、日頃から圧倒的に高品質なディスプレイを搭載したスマートフォンを見慣れており、目が肥えています。それだけに、日本市場に投入するには厳しいレベルのタブレットと言わざるを得ません。むしろ日本では、8インチ版が199ドルと低価格な『Encore 2』の日本向けモデルに期待したほうが良いでしょう。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑Encore 2。こちらも低価格だが、日本のユーザーが東芝製品に期待する品質はしっかりクリアしている印象だ。

 もちろんこれらの問題は、圧倒的な安さとのトレードオフであることは言うまでもありません。そしてこの100ドルWindowsタブレットが見据えているのは、安価なAndroidタブレットが売れている市場といえます。Windowsタブレットが例外的に売れている日本から見れば信じがたいことですが、海外でWindowsタブレットは苦戦が続いている状況です。

 本来であればWindowsタブレットは、ストアアプリが充実し、Officeやデスクトップアプリ、周辺機器との組み合わせにより、総合力ではAndroidを上回る魅力を備えているはずでした。しかし現実的には、価格を切り下げることで対抗するという方向にシフトしつつあります。

 横に並べてみれば、7インチと8インチのサイズ差はわずかなものです。しかしその製品に込められた意味は大きく異なるといってよいでしょう。

100ドルWindowsタブレットの使い勝手は?
↑約110ドルを狙う7インチ版(左)と、199ドルの8インチ版(右)。サイズの違いはわずかだが、その位置付けは大きく異なる。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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