「ひと山いくら」の抱き合わせゲーム販売は、大抵いらないハズレを押しつけられるのが常だが、合わせるゲームもコナミのMSXゲームとなると事情が違う。なにしろどれも面白くて、ハズレが無い上に、SCC音源に対応というプラス要素があった。そんな『コナミのゲームコレクション』を今回はドドンと紹介するぞ。
■コナミゲームコレクション
1988~89年に順次発売された『コナミゲームコレクション』シリーズは、レトロゲームの詰め合わせパックMSX版といったおもむきのソフトである。とはいえMSXそのものが今ではレトロPCな扱いとなっているので何だかよく分からない説明ではある。
つまりこれは発売時点から3~5年しかたっていない、実売4000円以上もしたゲームを5本ずつセットにして安価(定価4800円)に提供しようというなかなかに太っ腹な企画であったのだ。今でこそ“ベスト版(=廉価版)”や“レトロゲームコレクション”みたいなものも珍しくなくなったが、要するにこれはその走りだったわけだ。
わずか3年でゲームの値段が5分の1になってセット販売される状況というのは、今日の視点からはちょっと考えづらいかもしれないが、当時はゲームやゲーム機の進歩が今よりもえらく急な時代であった。見た目も音もどんどん進化していくこの当時の感覚としては、わずか3年前のソフトの色あせぶりは物凄いもので、だからたった3年前のソフトを堂々と“レトロ”とうたっているのである。
MSX最初期の1983年末からわずか3~5年程度で本体のRAMは4~8倍も増え、16色のカラーは256色(MSX2)とか1.9万色(MSX2+)になり、音もPSG音源だけだった仕様からFM音源やSCC音源が登場し、ゲームの規模も最初期の数十キロバイトから2DDディスク(720キロバイト)複数枚組にまで大きくなったわけであり、単純にプログラム規模=ゲームの価格というわけではもちろんないが、それにしても5本で1本分程度の価格設定が不自然ではないところまで一気にゲームの規模が拡大したのだった。改めて振り返れば恐ろしい勢いでコンピューターゲームの規模は巨大化していったのである。MSX最初期のMSX1用ゲームとMSX2用の『METAL GEAR 2: SOLID SNAKE』とではもう見た目も音も全然違うレベルにまで進化しているのだ。この“進歩のはやさ”もまた我々がワクワクしながらPC雑誌などを夢中で読んだ一因なのかもしれない。
そんな情勢下発売された『ゲームコレクション vol.1』~『同 vol.4』および『同 番外編』は全て定価は4800円と、当時のソフト1本分。元はROMカートリッジであったところをフロッピーディスクで提供している。ようやくフロッピーディスクがMSX界においても普及機に入ったということの表れだった。いずれのタイトルも『スナッチャー』の同梱品である付属ROMカートリッジ(SCC音源)があると「ゲーム中の音楽がSCCサウンドで楽しめる!」というのが売りであった。とはいえゲーム冒頭でただジングルが鳴るだけみたいなソフトも初期のものには多いので、ゲーム中ずっとSCCサウンド鳴りまくるようなタイトルは限られてはいるのだが。
ちなみに収録ゲームのうち既にこの連載において紹介済みとなっているタイトルもあるので、連載バックナンバーもご覧頂きたい。今回は特にコレクションならではの特徴と、これにだけ収録されたタイトルを紹介していこう。
■コナミゲームコレクション Vol.1 アクションシリーズ
箱に書かれているのは『魔城伝説』、『イー・アル・カンフー』、『けっきょく南極大冒険』、『イーガー皇帝の逆襲』、『王家の谷(ディスク版)』の5本。最初だけあってコナミMSXゲームの歴史を代表するタイトルが揃っている。
最も目を引く特徴は、この号だけがフロッピーディスク2枚組であり、その2枚目に『秘蔵版・王家の谷』(これはメニューでの表記)が収録されていることだろう。
この“秘蔵版”とは何なのか? 『王家の谷』はROMカートリッジで発売されていたが、初期のコナミMSXゲームの一部タイトルに封入されていたカタログに、フロッピーディスク版『王家の谷』が発売予定のゲームとして載っていたのである。ところが、ディスク版『王家の谷』は結局発売されることなくお蔵入りとなっていた。それを掘り出して収録したのがこの“秘蔵版”なわけである。当時はディスクがまだまだ高価だったので発売を見合せていたのだろうか、事情のほどはよく分からないが、何にせよここに陽の目を見たのはファンにとって幸いであった。ROM版との違いは面数が増えていることと、エディット機能がついたことである。シンプルなパズルゲームとしての圧倒的な面白さには全く変わりない。
■コナミゲームコレクション vol.2 スポーツシリーズ
収録タイトルは『コナミのボクシング』、『コナミのテニス』、『ビデオハスラー』、『ハイパースポーツ2』、他1本である。『ビデオハスラー』は既に紹介済タイトルだ。低性能なMSXで実在するスポーツをゲーム化するのは結構大変である。その辺りはまた今後の連載中で解説していこうと思う。
■コナミゲームコレクション vol.3 シューティングシリーズ
こちらには『グラディウス』がそのまま収録されている。厳密には『ネメシス』という海外版なのだが、タイトルが違うだけである。ちなみに実は日本語版のROM版にも『ネメシス』のタイトルは元々こっそりと入っており、MSX本体の国籍コードを読むことで自動的にタイトルが切り替わるのである。ということは逆に、海外版として発売されたものにも日本版のタイトルが仕込まれているのだ。
さてグラディウスはメガROMであるため、本作だけはステージの切れ目でディスクアクセスが入る。だが内容は全くもってグラディウスそのものである。『グラディウス2』から採用された音源チップ“SCC”は当然前作であるグラディウスにはなく、PSG音源のみの曲であった。それが全曲SCCでアレンジされて聴けるのであるからして、このシューティングシリーズは今でも大変人気が高い。SCCアレンジ版での曲はアーケード版とも異なり、かなり豪華な感じになっており高い評価を得ている。MSXユーザーたるもの、このためだけに入手しても損は無いと言えるぞ。
他に入っているのは『ツインビー』、『スーパーコブラ』、『スカイジャガー』、『タイムパイロット』となっている。ツインビーはよく知られた印象的なBGMがあるが、スカイジャガーはゲーム開始時の短い曲と、と敵の浮遊要塞を破壊した時の妙に陰気なファンファーレしかない。しかしこの陰気なファンファーレまでがちゃんとSCCで鳴るのがコナミの音楽ファンにとって感涙ものなのである。単に前に出したタイトルをまんまセットで出せば良いなどとは思わない、付加価値たっぷりのコナミの心意気にも感動したものである。ああ、それにしてもSCC音源……イイ。
■コナミゲームコレクション vol.4 スポーツシリーズ2
繰り返すがMSXに実在するスポーツゲームをやらせるのは、そもそも性能的に無理っぽい。にも関わらず、コナミは創意と工夫でなんとか次々とゲーム化し、ついにはスポー
ツコレクションも“その2”となるのである。
収録タイトルは前回紹介した『コナミのサッカー』、そして名作『コナミのピンポン』、『コナミのゴルフ』、『ハイパースポーツ3』、他1本である。
ん!そういえば今気がついたのだが、『ハイパースポーツ2』と『同3』は収録されているのに『同1』はどこにも見当たらない。それぞれ5タイトルずつなのであぶれてしまったのだろうか?
■コナミゲームコレクション 番外編
なぜかこれだけがMSX2用。と、言ってもここまでのシリーズもMSX1対応とはいえ、RAM64K+ディスクドライブが必要、とMSX1で遊ぶには結構ハードルが高かっただけに、ほとんどの人はMSX2以降の機種で遊んでいたことと思う。
収録されたレトロゲームは『ピポルス』、『ロードファイター』、『ハイパーラリー』の3本。分類が難しいのを“番外”に追いやった感じがしなくもないが、実はどれも完成度の高いお勧めソフトである。
↑『ピポルス』お花畑はメルヘンチック路線でカワイくて女の子にも受けるかもだけど、モアイ畑は誰向けなのよ。この頃のコナミはモアイがよく出てくるなぁ。 |
注目は、ここにしか入っていない“一発ゲーム”である『つるりん君』と『はいぱーそーめん』だ。あと“パーティゲーム”と称する『タイトルあわせ』と『アゴボード』の4本で、合計で7本が収録されている。
『つるりん君』は山寺の小坊主つるりん君となって、和尚様に気づかれないようお供え物の餅を盗み食いするというモノ。後にゲームセンターやスーパーのゲームコーナー、町のオモチャ屋の店頭などに置かれた、っていうか今もごくまれに見かけるらしい。最新情報、ご存じでしたらツイッターなどで教えてくださいませ。
『はいぱーそーめん』は説明書にも2行しか説明がない。ひたすら左右から流れてくるそーめんを食べ続けるゲームだから説明不要と言えなくもないが。たまに餅が流れてきて、ウッカリ食べると喉に詰まってしばし動けなくなる。あと、おにぎりを食べると“お手つき=ミス”が回復する。
いずれも3回アウトでゲームオーバー。しかしコンティニューがないのにも関わらずスコアが8桁もある! 餅もそーめんも1点ずつしか入らないこのゲームたちだが、8桁目を見た人はいるのか!? あなたのハイスコアをぜひ教えて欲しい。
『タイトルあわせ』神経衰弱。ただしその対象はコナミMSXのカートリッジ、2人~4人の対戦専用ゲーム。
『アゴボード』はルールを変えて遊べる、これまた対戦専用ゲームである。家族や友人と遊ぶパーティーゲーム系の走りと言える。
↑『つるりん君』当たらなければどうということはな…‥痛てっ! 和尚さまはニュータイプか! と何度思ったことか。まさかカンストさせた人とかいませんよね!? |
↑『はいぱーそめん』ハイパーシリーズ最終作は、スポーツ物でも乗り物系でも無く、流しそう麺という意表を突くジャンルに進出するコナミであった。ゲームウ〇〇チ系の香りがレトロっぽくもある。 |
↑『タイトルあわせ』年取ると記憶力がちょっとねぇ……。 |
↑『アゴボード』MSXでは意外に見かけない“対戦専用ゲーム”というジャンル。 |
さて、このゲームコレクションシリーズ、vol.1以外は中古市場においても手に入りづらい。特にvol.4は見つけるだけでもかなり大変だろう。もしかすると単独にROMで揃えるほうが楽かもしれないほどだ。
ということで、できれば全部バーチャルコンソールなどで復活して頂きたいと思う今日この頃です。もちろんMSXアソシエーションも協力を惜しみませんぞ。
ゲーコレという都合上まだ単品で紹介していないソフトがいくつかありましたが、今後それぞれフォローしていく予定ですのでお楽しみに!
それと、さまざまな大人の事情が加わり、どうしてもフォロー不可能なタイトルも出てきました。これはレトロゲーム全体にわたる共通した問題でもあります。例えば過去のMマガを全部電子化して復刻するとかだって、広告とか肖像権の問題とか商標権とかで難しいのよ。お互い歳食ったの~、ということでご了承のほどを。
(C)Konami Digital Entertainment
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ここで、おたよりという名のツイッターコメント紹介コーナー!
タイニーP @Kenzoo6601 さん
「家庭用ゲーム機にも移植されず」? PV-1000をゲーム機でないと申すか(ドンッ
――うううう、ええ~とあのその、カシオのアレですよねアレ……カシオのファミコン。あああ、ごめんなさいごめんなさい。
けものびと @jyu_jin さん
スーパーコブラは他に学研がFLゲーム機が。サッカーとハスラーはIラブシリーズになれそう。
――FLゲーム機? ああ!『ゲーム&ウォッチ』をはじめとする携帯電子ゲーム機のうち、蛍光表示管(FL管)を使ったやつ(いまググりました)。ありましたね、そういうの。そっち方面のレトロゲームも懐かしくていとおかし。
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