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銃だけじゃない 3Dプリンターでつくると逮捕されるモノ10

2014年05月13日 13時00分更新

3Dプリンター

 2014年5月8日に国内で初めて「3Dプリンターで銃を作成して逮捕される」というセンセーショナルな事件が発生した。この件で世間は騒然としているが、以前から3Dプリンターに注目していたフリークの間ではもともと懸念されており、「とうとう起きてしまったか……」という声の方が多く、筆者もそのひとりであった。

 事件発生時の報道を見ていた感じでは、その供述や発砲している動画を動画サイトにアップロードするといった行動から“法令遵守”という観念がいささか希薄であるように感じた。ものづくりと好奇心は自由であるべきだが、日本という法治国家で生活している以上はルールに従うべきである。

 そこで、今回は「3Dプリンターで出力してはいけないもの」を10項目ピックアップしたので紹介したい。


3Dプリンター

【レベル】
×:作成しただけで罪に問われるもの
△:私的利用は問題なくても、往来やインターネットなどパブリックスペースで公開すると問題が発生する可能性があるもの
?:不明

[1]×:銃
[2]×:貨幣
[3]×:特殊解錠用具
[4]△:爆発物(火薬抜き)
[5]△:公記号偽造に該当するもの
[6]△:印鑑
[7]△:鍵
[8]△:殺傷力のある刃物形状のものや鈍器など
[9]△:わいせつ物に相当するもの(フィギュアやグッズなど)
[10]?:情報漏洩した形状データ

<1:銃>
 銃とは実弾が発射可能な構造をもつ装置が該当する。国内においては許可無く製造および所持することが禁止されている。分解した状態でも、組み立て使用することが可能であれば罪に問われるので、出力した時点でアウトです。
 また、3Dプリンター単体での作成は難しい(バレルやバネなど金属部品が必要)が、いわゆるエアガンであっても一定以上の殺傷力を持つようであれば問題になる。

<2:貨幣>
 樹脂タイプの素材であれば質量までは表現できないが、外見がそっくりなものを出力すれば通貨偽造の罪に問われる。

<3:特殊解錠用具>
 特殊解錠用具とはいわゆるピッキングの道具で、これらも許可無く所持することが禁止されているので、同等の機能を持つものを出力すると罪に問われる。

<4:爆発物(火薬抜き)>
 ここでいう爆発物とは“対人地雷”や“手榴弾”などに相当するものである。火薬などが入っており、爆発物として機能する場合は銃と同様に完全にアウトである。しかし、火薬が入っていなくとも地雷としての構造/機能を持つものを作成した場合は罪に問われる可能性がある。

<5:公記号偽造に該当するもの>
 公記号とは、官公庁で使用される紋章や記号のことである。例えば、警察官や消防士が使用するエンブレムや議員バッジなどを偽造、使用した場合は罪に問われる。

<6:印鑑>
 個人用途の印鑑の複製などは問題ないが、他者や会社の印鑑を許可無く複製すれば罪に問われる可能性がある。

<7:鍵>
 こちらも前述の印鑑と同様である。

<8:殺傷力のある刃物形状のものや鈍器など>
 金属製ではなければ刃物として扱われないが、意図的に武器形状をしたものを持ち歩いていれば職務質問などを受けたときに罪に問われる可能性がある。

<9:わいせつ物に該当するもの>
 いわゆるフィギュアやアダルトグッズの類であるが、すでに海外のウェブサイトではアダルトグッズの形状データを配布しているところもある。こちらも前項と同じく個人的に楽しむぶんには問題は無いが、外への持ち出しには注意したい。

<10:情報漏洩した形状データ>
 例えば、とある企業から情報漏洩した発表前の製品の形状データなどが、何らかの方法で手に入ったとする。漏洩したデータを持っていること自体にも問題があるが、それを出力して友人にプレゼントすると問題が発生する可能性がある。このケースはまだ前例はないが、今後発生する可能性はあると考えている。


 以上の通り、今回は10項目リストアップしたが、実はこれらの中の半数程度はまだまだ非現実的な話であったりする。

 その理由としては、現在販売されている個人向けの3Dプリンターでは“精度”、“強度”、“出力可能サイズ”などの点で実現することが難しい、ということが挙げられる。

 例えばプラスチックフィラメントを溶かして積層するタイプの3Dプリンターでは、使用するノズルの径は0.1〜0.3mm程度であるので、貨幣や鍵といった精密な表現は無加工ではできない。シリコーンゴムなどで型取りし、液状のプラスチックを硬化させて作成するほうがよっぽど早いし精度も出る。他の加工機械なども使用すれば代案はいくらでもある。

 ただ、3Dプリンターの性能や構造は年々進化しており、最近では金属粉末を利用した3Dプリンターも開発されているため、これらの懸念事項は時間の問題であるという見方も否めない。また他の加工機械と比べた場合では、形状データがあればスイッチ一つで出力できてしまう“気軽さ”がアドバンテージになっていることも確かである。

 今回の一件で3Dプリンターの規制といった意見も出てきている。確かに3Dプリンタはとても便利で良くも悪くも大きな可能性を持っている。しかしそれ以前にただの道具である。道具という観点ではナイフやライター、工場の高価な加工機械と何ら変わらず、使用者のモラルによって益にも害にもなることを忘れないでほしい。

 今後も3Dプリンターが健全な方向に発展していくことを1ユーザーとして願う。

●5月19日18時30分 追記
本文中に一部誤字がありました。お詫びして訂正させていただきます。

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