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「3Gに落ちないようLTEのエリア化が最優先」au中の人インタビュー

 KDDI(au)のLTEネットワークは、800MHz帯で面をカバーする“プラチナバンド”のLTEがベースとなっている。auは、とにかく「LTEを広げることを第一」(木下氏)にLTEエリアを構築していたため、他社に比べても広く、地下鉄トンネルを含めた広範囲のLTE化を進めてきた。2014年3月末には実人口カバー率で99%を達成しており、“速さ”と“広さ”をアピールしている。

800MHz帯のLTEは人口カバー率99%を達成

au LTE ネットワーク

 木下氏は、「エリアの拡大で重要なのは電波の飛び」と強調。auが利用できる周波数帯域は800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯だが、その中で800MHz帯は周波数特性として電波が長距離まで到達するので、エリア拡大のベースとして活用している。

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↑KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室長の木下雅臣氏。

 auは、800MHz帯で3G(CDMA2000)も運用しており、それに対して、1.5、2GHz帯はLTEにあわせたエリア設計をしており、とくにトラフィックの多い都市部は1.5、2GHz帯を重ねてユーザーを分散、増え続けるトラフィックをさばくという形になっている。

 基本的には、都市部でも800MHz帯をベースとしつつ、2GHz帯もそれに重ねるようにして都市部をカバー。1.5GHz帯は、都市部全体というよりも一部の高トラフィック対策として重ねる、という形のようだ。1.5、2GHz帯は、直進性が高く到達距離も短いため、ビル陰などの穴はベースの800MHz帯がカバーする。

 LTEエリア拡大を積極的に進めてきたauだが、その中でも通勤・通学で利用者の多い鉄道沿線には力を入れてきた。電車の中では、どうしても携帯電話の利用時間が長くなる。そのため、通勤・通学中に快適に使えるようなエリア設計にこだわってきたという。新幹線のような高速移動する電車内でも、「電車が速いから、品質はしょうがないかとは言われたくない」(宮尾氏)ことから、品質の確保のために日々チューニングを繰り返しているそうだ。

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↑KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室 1Gグループリーダーの宮尾良徳氏、

 auが利用する3つの周波数帯については、トラフィックの高いエリアのほとんどがすでに2GHz帯のエリアとなっており、更なるエリア拡大を進めているところ。とはいえ、800MHz帯のように“実人口カバー率99%”までを目指しているわけではないようだ。それでも、800MHz帯のトラフィック対策やiPhone5ユーザーの快適な利用という観点から、2GHz帯のエリア拡大は継続する。1.5GHz帯は、800MHz帯や2GHz帯にさらに重ねてトラフィック対策として利用する形で使い分けをしている。

 スマホによるトラフィックの急増が続いたことで、各社ともトラフィック対策に腐心しているが、auでは「トラフィックが混む場所は分かってきている」(木下氏)ため、いわゆるパケ詰まりのような状況が発生する前に対策をしているそうだ。こうした混雑対策は「ピンポイントでやっても意味がない」と木下氏。例えば新宿駅が混雑するからといって、そこに1.5GHz帯を重ねるだけではなく、新宿駅に向かう沿線である高田馬場駅からの導線にも1.5GHz帯を広げ、面としてトラフィック対策を行なう方針だという。

 こうしたトラフィックの予測には、“ミクロトラフィック管理”を利用。日本全国を100メートル四方のメッシュで区切り、そのメッシュ内のトラフィックが計測されており、それが高いメッシュにはピコセルを導入して分散するなど、トラフィックの低減を図る。過去半年のデータから将来のトラフィックを予測できるため、予測に従ってトラフィックの増加に先んじて対策を打っているという。

ミクロトラフィック管理

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 トラフィックは都市部の主要駅で朝夕のラッシュ時にピークとなり、オフィス街や工業地帯などでは、昼休みの時間帯に増加する。これもトラフィック管理で予測し、高いトラフィックが続くような場所には、新たに基地局を設置する、といった対策を行なうそうだ。

 住宅街のトラフィックは、基本的に夜23時ごろから増加するが、auでは無線LANルーターの『HOME SPOT CUBE』を配布。固定回線へのオフロードを図ることでトラフィック対策を行なっている。ただ、LTEが混雑していないエリアだと「LTEでの通信が快適なので、無線LANをオンにしていただけないお客様がいる」(木下氏)のが悩みだそうだ。それでもオフロード率は約56%で、トラフィック対策に大きく貢献している。

HOME SPOT CUBE

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 そのほかのパケ詰まり対策としては、基地局のセクターごとに統計情報としてスループットを取得しており、混雑しているエリアを把握。トラフィックの状況を監視しつつ、基地局の対策を行う。ただ、「LTEに関しては、今はそう言ったことはほとんど起きていない」(同)という。

 また、エリア内ながら通信ができないようなスポットは、au Wi-Fi接続ツールなどのauアプリに含まれるエリア品質情報送信機能を使って情報を収集。エリアの改善にも役立てている。

 こうした取り組みによって、品質の悪化している場所を特定して改善していることに加え、“au Wi-Fi SPOT”もトラフィック対策に威力を発揮しているという。

 喫茶店や待ち合わせスポットのような場所では、「すごくトラフィックを吸収する」(宮尾氏)。特に昼時に効果が高いそうだ。単に設置するのではなく、利用者のニーズの高い所に設置して利用率を高め、利用率の高いところでは、回線を有線にして対応しているという。

 auのエリアで理論値最速は下り150Mbpsだが、現時点で“住所の一部”でしかエリアを公開していない。そのため、実人口カバー率のような数字では公表されていないが、エリアに関しては順次拡大していく予定。しかし、3Gの帯域をLTEに振り分けて150Mbpsエリアとしているため、利用者の動向を見ながら、長期的な取り組みとしてエリアを拡大していく考えだ。

ホームページ上で150Mbpsエリアは順次公開

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 auでは、800MHz帯によるLTEが実人口カバー率99%を達成したが、“そこかしこで3Gになる”という状況だと、カバー率と利用者の実感に乖離が出てしまう、という認識で、対応エリア内であれば確実にLTEが継続するような対策をメインにしたエリア構築を行なっていく考え。

 ちなみに、現状でエリア構築が難しい場所としてはいくつかあり、河川に架かる橋のような開けた場所では、遠くの基地局と近くの基地局の電波の双方が届いてしまい、干渉を起こすために通信品質が悪化する。こうしたポイントでは、橋に向けた専用の基地局を設置するなど、順次解消しているそうだ。

 そうした中でも対策が難しいのが高層ビルで、商業ビルでは屋内基地局を設置するが、特に難しいのは高層マンションの高層階で、「対策に苦慮しているところ」(宮尾氏)。基地局はビルの屋上などに設置するが、それより高い所にある高層階を圏内にするのは難しく、対策としてはフェムトセルが有効そうだ。なお、「10〜11階より上の階になると、電波が入りづらいという問い合わせが多くなる」(同)という。

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●関連サイト
『au 4G LTE 800MHzプラチナバンド』特設ページ

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