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ソフトバンクが電波を有効的に利用するための実験を公開

2014年03月14日 08時00分更新

 ソフトバンクモバイルは、LTE Advancedの環境で、基地局間の干渉を抑えて電波の利用効率を向上させる実験を報道陣に公開した。

 この研究の背景は、増加するスマートフォンのトラフィックに対応する効率のいいネットワークを開発することにある。「2020年ごろには2013年の200倍以上になる」(ソフトバンクモバイル 研究開発本部 本部長 藤井輝也氏)という通信量に対し、有効になるのが「新たなセル構成技術の開発」だという。

ソフトバンクモバイル

↑実験の概要を解説した、ソフトバンクモバイルの藤井氏。

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↑研究の背景には、急増するトラフィックにどう対処していくかというキャリア共通の課題がある。

 LTE Advancedやその先の5Gといった技術や、新たな周波数帯の使用によっても、電波の利用効率は2~10倍になる。一方で、200倍に対処するためには、利用効率をさらに上げ、トータルで20~100倍にしなければならない。そこで利用したのが“極小セル”と同社が呼ぶ小型の基地局を多数配置する技術だ。

 ただし、同じ周波数帯を使って小さな基地局を設置していけば、何も対策をしなければ干渉が起こってスループットも下がる。

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↑同じ周波数を使うため、マクロセルと極小セル、極小セルと極小セルでそれぞれ干渉が起こる。これを防ぐのが今回披露した実験だ。

 これに対して同社は、総務省の助成を受けながら、大きく分けて3つの技術を新たに実験している。ひとつめは、基地局間をネットワークで結んで制御する“連携eICIC”という仕組み。時分割で基地局どうしが干渉しないよう、リソースを分け合うというのが主な考え方になる。屋外ではGPSによって、GPSの電波が届かない屋内では基地局に備えた“リスニング機能”によって、それぞれの基地局が同期しこのタイミングを調整する。

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↑マクロセルと極小セル、それぞれの時間を同期させ、片方が開いているときに通信を行なうように協調させた。

 平たく言えば、お互いの基地局が空いている時間を使えるよう、相談して“かぶり”をなくすということだ。さらにわかりやすくするために多少の誤解を覚悟でたとえ話を用いると、同じ部屋で仕事をする2人の人がいたとした場合、2人同時に作業をしたらお互いが気になったパフォーマンスを発揮できない。これに対して、2人で相談して作業時間を決め、部屋に同時にいないようにすれば仕事に集中できるというようなシチュエーションに近い。

 ふたつめが、マクロセルと極小セルが近いときに起こる干渉を排除する“連携セル間の干渉キャンセラ”。こちらは、マクロセル基地局から極小セル基地局に対して干渉信号の送信方式情報を送り、ふたつのセルからの信号を受けた際に、マクロ側の干渉を端末側で除去して極小セルで通信を行なう仕組みとなる。簡単に言えば、本来であれば干渉してしまうところを、基地局からもらった情報でマクロセルの電波を分別して、極小セルのみでスムーズに通信する技術だ。

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↑マクロセルと極小セル、それぞれの基地局が協調し、干渉を取り除く信号を送る仕組み。

 こちらは、AさんとBさん、2人の部下のどちらに仕事を頼むのかを迷った上司という状況にたとえてみると少しだけ分かりやすくなるかもしれない。AさんとBさんどちらも優秀だが、Aさんはたまたま今回の仕事にピッタリ合ったスキルを持っていたとする。一方で、AさんとBさんはどうも反りが合わない。どちらも会社にとっては必要な人材だが、近づきすぎるとお互いが反目してうまくいかないというわけだ。上司としては2人同時に仕事をさせたいが、現場が混乱してしまうためそうはいかない。

 では、どちらに頼んだらいいのだろうか。Aさんが仕事に向いたスキルを持っていると分かればAさんに頼むのが当然だ。ただし、上司にはそれがよくわからない。そこで、Bさんから聞いていた情報を元に、Aさんが「今回は自分の方が向いています」と上司に志願をして採用される。ものすごくザックリ言ってしまえば、こんな感じの技術になるだろう。もちろん、ここでいうAさんは極小セル、Bさんはマクロセル、上司は端末だ。

 そして、3つ目の技術が、干渉しない向きに電波を送る“ビームフォーミング”だ。極小セルを多数配置すると、干渉が起きる。その際に、どこにどれだけ干渉が発生するかをデータとして持っておき、干渉が起きない方向に向けて電波を送出するというのがビームフォーミングの考え方になる。この技術に関しては下手なたとえ話よりも、下の図を見てもらうのが一番理解しやすいだろう。一言でまとめると干渉しないように、電波を送る向きを変えるということだ。

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↑干渉が起きづらいよう、端末の位置に合わせてそれぞれの基地局が電波を送出する方向を変えるというのが、ビームフォーミングの基本的な考え方になる。

 このような技術を使って、ソフトバンクモバイルは各実験を報道陣に公開した。ひとつめの連携eICICについては、マクロセルと極小セル、極小セルと極小セルという2つのパターンを披露。ともに、新技術を適用した方がスループットが上がることが実証された。
 次の技術についても同様で、2つの基地局が干渉してほぼ通信できない状態に対して、“連携セル間の干渉キャンセラ”を適用したとたんに通信が可能になった。最後のビームフォーミングについても、屋内で実際に人が端末を動かし、基地局が電波を送信する向きや強さを変え、スループットが上がることを確認できた。

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グラフの水色の線は、極小セル単体で干渉がない状態。ここで干渉を発生させると青色の線のようにスループットが不安定になり、連携eICICを入れるとその割合に応じてスループット上がる。

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↑“連携セル間の干渉キャンセラ”を利用した場合と、しなかった場合。干渉が大きい場所でも、通信できていることがわかる。

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↑ビームフォーミングの実験。左が端末で、右が基地局。人(端末)の動きに合わせて電波を送出する位置を変え、スループットを上げている。

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↑走行実験も行われた。200メートルごとにリソースの割り当て方を変え、その都度、即時にスループットが変わる様子も確認できた。

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