週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。
ホワイトボード知的生産論
ホワイトボードは、2次元なのにマインドマップを描く人はあまり見たことがない。これは、人はホワイトボードの前ではすでに自分の脳からは解き放たれているからだと思う。コンピューターの歴史は、'38年にコンラッド・ツーゼが“Z1〟をつくった時代から人の知能を増幅させるためのものだった。しかし我々は、'68年にアラン・ケイが考えた“Dynabook”からどれほどのところまで来れているのだろう。パーソナルコンピューターにはすばらしい製品は多いが、ホワイトボードが提供するものはもう少し違うところにあるんじゃないか?
それは、ひと言でいえば“カオス”である。ホワイトボードの上では、人と人の組み合わせによって生じる化学反応や、はみ出した関連アイデアの書き付け、まとまりのない中間生成物などがぶちまけられていて、ほとんど堂々巡りのように考察が繰り返されている。ホワイトボードに描かれた図は、参加した人たちですら繁雑で見たくもないようなものになるが、これって、いまのネットの縮図みたいなソーシャルな創造性だからだ。
企業(まさにカンパニー)にとっては、ホワイトボードの宇宙の中こそクリエイティビティーがテンコ盛りになっているはずで、およそミーティングの結果つくられる企画書なんかは、その“しぼりカス”のようなものだ。
私のホワイトボードの12の使い方 |
↑メラニン樹脂板とアルコール系ドライインクの色彩的コントラストと滑らかなタッチが、ちょっとした筆記的麻薬でもあるのだが。 |
01. 先に立ちあがってホワイトボードのところにツカツカと行く(主導権をとる)
02. 左上からどんどん箇条書きで書き出す(コアダンプ)
03. 自分もネタを出すことで、参加者にも喋らせる(煽る)
04. とにかく3~4属性くらいの表にする
05. 事柄や会社や人物をアイコン化して線で結ぶ(構造理解)
06. とにかくベン図にする
07. XY軸・4象限・マンダラートなど(フレームワーク)
08. 中央にタテに1本線を引いて比較する(二元論)
09. 書き込んだ文字や絵に何度も戻って思考する(ループ)
10. オタ、非オタなどラベル付けすると違うものが見えることがある
11. 部分的に消すことで答えを求める(ちょっとした手品)
12. いまは草原の前に立っている感じなど絵を描く(情景)
ところが不思議なことに、このホワイトボードは、いまだにきちんとデジタル化されていないと思う。'90年代の米国のコンピューター見本市ではすでに、ホワイトボードをデジタル化した製品は展示されていた。シャープの巨大液晶タッチディスプレー“BIG PAD”は一定の完成度に達した製品なのだと思う。MetaMoJiの“ShareAnytime”はいまのところ1番ホワイトボードに近いソフトかもしれない(Windows8タブレットはこれのために買ってもよいかもしれない)。エプソンの投影面に文字が書き込める“インタラクティブプロジェクター”もなかなかである。もちろん、App Storeで“Whiteboard”と検索すると、何百個も出てくる。
ここまで来ているんだから、あとひと息、きちんとデジタル化してほしい。まずは最低限、四角なら四角、丸なら丸とラフに描いても認識する。ホワイトボードなんだから、これから描く図形を□や☆や△のパレットからあらかじめ選ぶなんてやヘンである。流れでわかるんだからレイヤーとかグループとかを明示的にやるのもナシである。そいつを描きながら名前をつけて、あとでそれを呼び出せると便利そうだ。あくまでシンプルに、自然に使えることが肝要ではあるが。
こんなチャンスが目の前に転がっているわけなので、GoogleがARメガネに、Appleが腕時計やテレビをやっている間に日本メーカーにぜひともつくってほしい。もしかしたら、その最終形は白い大きな顔をしたロボットのようなものかもしれないが。
【緊急告知】
神は雲の中にあれらるでお馴染み 遠藤諭が語る!
「デジタルと紙の間にチャンスがある~サイバーフィジカルな知的生産のススメ~」
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プログラミングの本をつくったときに「まず用意するモノは?」と著者に聞いたら、コンピューターではなく「ノートと鉛筆」と答えた。私の知っているデザイナーはもちろんプランナーも、自分の慣れたノートを必ずもってくる。クリエイティブな仕事をする人がノートを使うのなら、ノートを使うことでクリエイティブになれる。スマートデバイスが年間で3000万台も売れる一方、紙のノートが人気なのはなぜなのか? 月刊アスキー編集長をながくつとめ、「超」整理手帳やThinking Power Noteなど文具の企画までかかわっちゃう発想から、“デジタル”と“紙”の間にこそある知的生産とこれからについて語る。レア&愛用の文具も持ちこみます。
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