世の中ではPS4が新発売されましたが、我が家ではワンチップMSXが大型液晶テレビにVGA接続され、コナミゲームがバンバン映っております。
しかし、寄る年波には勝てず。かつては「“10倍”とかつかう奴はヘタレだ!」とか言ってたのに、今ではかかせないアイテムに。というわけでコナミのゲームを10倍しゃぶりつくす好評連載、第3回目いってみようかの~。
■悪魔城ドラキュラ(1986年)
コナミ初となるMSX2用ソフトで、1メガビットロム第3弾である。MSX2は表現力が向上すると同時に要求されるデータ量も増えたため、メガロムによってようやくその能力を活かすゲームが作れるようになったと言ってよいだろう。
『悪魔城ドラキュラ』のオリジナルはファミコンのディスクシステム版であるが、発売日はMSX2版より1ヵ月早いだけなので開発は同時に行なわれていたようだ。基本的なコンセプトはMSX2版とファミコン版で変わりはなく、ムチ一丁でドラキュラ伯爵と愉快な仲間たちに立ち向かうアクションゲームである。
自キャラは体力制だが、敵の体当たりを食らうと吹っ飛ばされ、割とよく下に落ちて一発死する、当時としてもシビアなゲームバランスであった。さて、ここまではファミコン版との違いはあまりない。MSX2版はまずグラフィックが向上しており、冒頭の森のグラフィック、城の中の破れたカーテンなどは間違いなくMSX2の方が綺麗である。そしてパッケージの裏にもある、最後のドラキュラ伯爵の巨大な肖像画! いきなりラストを載せてしまうのは反則気味だが、「いつか生で見たい!」と思わせるニクい目標作りでもあった。
↑MSX1では考えられなかった美しい画面。キャラが多色だよ。夢のようだよ。ファミコンはスクロール、MSX2は画面切り替え。だけどそれを逆手に取るさまざまなアイディアが満載。どうだファミコン!(ってなんで威張る?) |
ゲーム自体も探索要素が加味されており、とにかく進めばよかったファミコン版と違って、ホワイトキーを探し出さないと先に進めず、城内を戻って自由に探索することができた。また、城内の老婆の持つアイテムと集めたハートの取引もできる……のだが、なぜかこの老婆との取引開始が“老婆をムチで叩く”ために、当時から盛大にツッコまれていたことは書いておかねばならないだろう。
子供の頃は「お婆さんを叩くなんてひどい」くらいに思っていたのだが、大人になると……うん、とってもマニアックですねシモンさん、まして相手はお婆さん、とちょっと違った目で見てしまうこと請け合いである。目に映るゲームは変わらずとも、自分が立派なオトナになってしまったことを実感する今日この頃だ。
■モン太君のいち・に・さんすう(1984年)
“教育シリーズ3”であり“I Love 算数”である。ここへきてやっと一般の方が思い描くような“教育ソフト”が出てきたような気がする。
レベル1は2ケタ同士の足し算、レベル2は2ケタ同士の引き算、レベル3は2ケタと1ケタの割り算、レベル4は2ケタと1ケタの掛け算、そしてレベル5はカッコつきの掛け算と、予想外に難しい計算を強いられる。「こんな小学生向けの計算なぞ、朝飯前じゃ!」などと言っている我々も、久しぶりにやってみると“脳の衰え”を強く感じざるをえなかったりしてトホホな気分になるMSX30周年のある日なのである。
最初に虫食い算の形で式が出てきた後に15秒の猶予……というか計算時間が与えられ、しかるのちにゲーム開始となる。画面のあちこちにあるブラインドにジャンプして引き下げると数字が書いてあり、それが正しいと思ったら“Bボタン”か“SELECTキー”を押す……のであるが、どこに正解があるのかはわからない。もちろん、間違った答えを選択した場合ペナルティがつき、同じ問題で3回間違えると1アウトとなってしまう。その他に、敵にぶつかってもアウト。3アウトでゲームオーバーとなる。
↑よ〜いドンで制限時間は5分。こんなの簡単だよと思っても答えは、いちいちべろ〜んと引っ張って探さなくてはならない。“2”はどこにあるの〜!? |
操作性は当時のコナミらしく非常にいいのだが、問題の難易度に結構なムラがある。まれにかなり難しい問題が出てくるため、いいトシこいた百戦錬磨のゲーム脳である我々でも苦戦してしまう、思いのほかに厳しいゲームでなのであった。
この作品は“教育シリーズ”の中でも割と見たまんまの教育ソフトであるためか、現在ではかなりのレア作品となっている。『けっきょく南極大冒険』、『わんぱくアスレチック』に比べて、教育ママの思惑がハッキリ見えてしまう、そこが子供のハートを掴みきれなかったのかもしれない。
ところで本作も“教育シリーズ”の冠を外したバージョンがある……らしいのだが、これがまた超レアで全く見つからない。情報求む! いやマジで。
■ぽんぽこパン(1984年)
『わんぱくアスレチック』、『けっきょく南極大冒険』、『モン太君のいち・に・さんすう』に続いて発売された、教育シリーズ第5弾である。4つしか出てないのに第5弾とはこれいかに、と思うのは当然なのだが、確かに“教育シリーズ5”と銘打たれている。教育シリーズは実は“4”が欠番になっているのだ。
その理由は今のところ明らかになっていないが、『ハイパースポーツ1』がNo.4になる予定であったことはわかっている。本作が“I Love 社会”なのに対して、『ハイパースポーツ1』が物理運動ということだからなのか“I Love 理科”になるはずだった……のだが、『わんぱくアスレチック』が“I Love 体育”だったので、無理があると感じたのかもしれない。今となっては真実は闇の中だ。とかっこつけて言ってみるが、事がMSXになると人生の役にたたない細かい事ばっかホント気にしているよなあ、と自分に呆れてみる30周年のある日だったりする。
さてようやく本題。『ぽんぽこパン』はMSXオリジナル作品で、パン職人ジョーがいたずらタヌキの妨害にメゲずにパンをひたすら焼いていくアクションゲームだ。製造ラインのそこここに現われるタヌキは機械のスイッチを切るわ、パンをシッポではたき落とすわと、どんな恨みがあるのかという勢いで仕事を妨害してくる。でも、焼きあがったパンには手を出さないのが可愛い。機械には“整形”とか“第二発酵”とか、子供向けとしては妙に細かい表示がされているのが面白い。やっぱ教育ソフトだからか?
↑平和なパン工場に、ななんとタヌキが! そりゃ普通に驚くって。んでMSXゲーム史上、最初に画面上に“!”マークを出したのは多分このゲーム。 |
ゲームはタヌキの妨害が凄まじく、かなりの忙しさだ。タヌキにぶつかるか、時間内に4つ以上パンが焼けなくてもアウト1回である。一応ジョーも催眠銃でタヌキに対抗できるものの、4つまでしか持てない弾は時間でしか回復せず、2面からはタヌキがフェイントで弾を避けるので相当に苦しい戦いを強いられる。テンポよく進む大変に熱いゲームなのだが、ある時ジョーは気がつくのだ。「俺はパン職人のはずなのに、やってることはタヌキ退治と機械のスイッチを入れることだけじゃないか……」そう、もしかしたらこのゲームの“教育”の目的は、そんなところにあるのかもしれない。いや違うかもしれない。
■コナミのゲームを10倍楽しむカートリッジ(1985年)
これも記事対象にするのかよ!?
無論である。
ということで、通称“10倍カートリッジ”である。
ちょっとほかとは違うこのカートリッジはゲームではなく、ゲームに機能をプラスするツールのようなものである。
MSXはほとんどの機種にカートリッジスロットが複数あるため、この“10倍カートリッジ”をスロット1に、普通のゲームカートリッジをスロット2に差し込むことでさまざまな“効能”が得られる、極めてMSXらしいソフトである。
その“効能”とは、ゲームのどこでもセーブ、コマ送り、スローモーション化、プレイヤー数設定、ステージ数設定、ハイスコア記録、画面をプリンターに出すことなどなのだが、もちろん、全てのゲームに対して全ての機能が使えるわけではなく、ある程度はゲームによってできたりできなかったりする。
↑ゲームのセーブや機能拡張だけでなく、画面の調整用カラーバーとかプリントスクリーン機能とかもあった。 |
MSXのROMカートリッジのゲームは基本的にこの頃はまだセーブができなかった……というより、ボリューム(ゲームの総プレイ時間等)が少なかったためにセーブする必要がなかったので、必要な人は買ってくださいね、という位置づけの商品なのだった。
しかし、メガロムの出現によるゲームの大容量化によってこれが問題になってくる。今回紹介した『悪魔城ドラキュラ』などは、真面目にプレイすると結構長い時間がかかる。ファミコン版ではディスクにセーブができたし、MSX版もこの“10倍カートリッジ”があればコンティニューやステージ数の選択ができたのだ。
だが、“10倍を持ってないとキツい”ゲームでは不公平になると感じたのか、コナミのMSXゲームはドラキュラの後に“コンティニュー標準装備”が普通になっていく。後に語られる“F5コンティニューがやめられない面白さ”へと繋がっていくのは間違いない。
その一方でこの“10倍カートリッジ”の元システムがMSX2に非対応なこともあり、後に“新10倍カートリッジ”にリニューアルして、さらなる機能追加がなされるのであった。ただしMSX1ソフトには律儀に対応し続け、『エルギーザの封印』(MSX1版)や『ゴーファーの野望 エピソードII』にも対応している。
ちなみにWindows用MSXPLAYer+ゲームリーダー×2でも、“10倍”は機能する。もちろんコナミゲーム2本差しもOKだ。っていうか絶対に対応しろってかなり言われたけど、やった人っているのかよ?
(C)Konami Digital Entertainment
-----
それでは以下、高齢のじゃなかった恒例のおたよりコーナーです。
たけやん@fish_heaven さん
イーアルカンフー、子供の頃夏休みに何日もかけて625面まで行ったところで親に電源を落とされた(泣/
――なんと! 625面とな!! MSXAでもそこまでやった者はいませんぜ旦那。たまにネット上でも何十万点までいったとか無駄に光り輝く栄光の青春の日が書いてあったりしますが、しかし決して簡単なゲームではありません。ホントみんな凄いよ。そこまで夢中にさせるコナミのゲームも凄いが。
けものびと@jyu_jin さん
それで1ボタン操作のが多かったのね。イーアルカンフーが上でジャンプだったりロードファイターがオートマだったり。
――そうなのよ。でも、そういう「制限」を逆手にとって面白くしちゃうのがコナミ流。そこから学んだものは大きい! と大きくなってからしみじみ思う今日この頃。
-
1,701円
-
4,600円
-
630円
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります