10月25日にSurface 2が発売されてから、約1ヵ月が経過しました。先々週の記事の時点で2位にランクインしていた価格.comのランキングでは、原稿執筆時点で10位となり、代わりに『dynabook Tab VT484』や『ASUS TransBook T100TA』といったBay Trailタブレットが上位に入ってきました。
↑Surface 2。Windows RT 8.1世代のタブレットとして貴重な存在に。 |
果たしてSurface 2は、Bay Trailタブレットに取って代わられてしまうのでしょうか?
■ライバルがいなくなったWindows RT市場
初代Windows RTとなるRT 8.0世代では、ASUSやDELL、Lenovo、NEC、SamsungといったメーカーがWindows RTタブレットを次々と発売したのは記憶に新しいところです。しかしその売れ行きはいずれも芳しいものではなく、各メーカーは後継機の開発を断念。現在、Windows RT 8.1世代で製品をリリースするのはマイクロソフトとノキアだけになりました。
たとえばNECは『LaVie Y』について、既定の販売目標をクリアーしたと主張しています。しかしその価格変動を見る限りでは、大幅な値崩れにより、何とか在庫を処分できたという印象を受けます。最も成功したWindows RTタブレットと思われる『Surface RT』も、2013年第4四半期決算において値下げなどに伴う9億ドルもの“在庫調整費”を計上。その後Surface RTは第2世代Surfaceの登場に合わせて名前を『Surface』に改名し、現在も3万4800円で販売されています。
Windows RT 8.1世代で新たに参入した企業は『Lumia 2520』を発売したノキアです。しかし同社のマイクロソフトとの関係は、限りなくグループ会社に近い状態。2014年第1四半期と見られる買収成立後は、名実ともにマイクロソフトの一部となります。
↑米Verizon Wirelessから発売されたノキアの『Lumia 2520』。 |
こうしてWindows RT市場からはOEMメーカーが去り、マイクロソフトだけが残った状態となりました。
■Surface 2を仕事に活用できる3つのポイント
このようにWindows RTには大きな逆風が吹いているものの、Surface 2の発売後、売れ行きはそれほど悪くなさそうです。実際にヨドバシAkibaなどの大型店舗を訪れても、Surface売場はここ1ヵ月で拡大する傾向にあり、発売直後よりも存在感が増している印象を受けます。
↑Surface 2発売後、量販店におけるSurfaceの存在感は徐々に増している。 |
その背景には、CPU性能や画面解像度が向上したという基本的なハードウェア性能の向上と、タブレット市場自体の拡大があるものと思われます。さらにSurface 2は、以下のような点において、ほかのタブレットより優れている可能性があると筆者は考えています。
(1)PCクラスのWebブラウザー(Internet Explorer 11)を搭載
Windows RT 8.1における最も強力なアプリは、IE11ではないでしょうか。たしかにiPadやAndroidも最新のWebブラウザーを搭載しています。しかしWindows RTのIE11は、PCと同じ使い勝手を実現しているのが特徴です。Flashを搭載するため、“艦これ”だけでなく、Ustreamやニコニコ動画もブラウザーでそのまま閲覧可能。さらにWeb開発者向けの“F12 開発者ツール”を搭載しており、Webサイトのデバッグもできてしまいます。
↑Web開発者向けの“F12 開発者ツール”もPCと同じ機能をそのまま搭載。 |
(2)エクスプローラによるファイル操作が可能
PCにおいて当たり前すぎると言える機能が、ファイル操作です。しかしiOSやAndroidでは、ユーザーがファイルシステムを意識せずに済む設計になっており、ファイルを扱うことはできないか、面倒な操作が必要です。
その点、Windows8の忠実な移植であるWindows RTでは、エクスプローラもまったく同じように動作します。「IEでファイルをダウンロードする」、「USBメモリーやmicroSDカードからファイルをコピーする」、「メールアプリからファイルを送信する」といった基本的な作業が、PCとまったく同じ手順でできるのです。
↑Windows RTならストレスなくファイル操作ができる。 |
(3)Office標準搭載
タブレットユーザーのなかには、「タブレットにOfficeは不要」と考える人も少なくないでしょう。しかしOfficeがどうしても必要なため、これまでタブレットに移行できなかった人々にとっては、Windows RTが魅力的な選択肢となり得ます。マクロやアドインが使えないという制限は気になるものの、基本的なドキュメントはPCとまったく同じように表示・編集可能。さらに企業環境でよく使われるIRM(Information Rights Management)で保護されたドキュメントにも対応します。
■Bay Trailタブレットに対抗できるか
これらの3つのポイントは、一般的なタブレットとは異なる観点と言えます。ブライアン・ホール氏が「リビングで使うならiPad」と答えたように、Surface 2はエンタメ用途というよりも、ある種の業務利用においてハマる、ニッチなタブレットと言えます。
一方、Bay TrailタブレットはWindows 8.1を搭載しており、Surface 2でできることをすべてカバーしています。価格やバッテリー駆動時間にも大きな差はありません。そしてたしかに、東芝やASUSのBay Trailタブレットは売れており、AcerやDell、Lenovoの製品もそれに続くと見られています。
このようにSurface 2とBay Trailタブレットを詳細に比較していけば、Surface 2にはまったく優位性がないように思われるかもしれません。実際にその点こそが、OEMメーカーがWindows RT 8.1への参入を様子見する理由でもあると言えます。
ただ、これについては逆の見方もできるはずです。WebブラウザーとOffice、エクスプローラといった要素があれば仕事をこなせる人にとって、それ以外の機能は不要です。余計な機能がないというのは、安全であることを意味しています。実際にWindows RTの“デスクトップアプリが動作しないという不便さ”は、裏返せば“デスクトップアプリが動作しないという安心感”でもあるからです。
たしかにWindows RTは、本来であれば、Windowsストアアプリの充実により一般向けにも十分に訴求するタブレットになるはずでした。それはWindows RTが、当初個人ユーザーをターゲットにしており、法人用途を重視していなかったことからも明らかです。
しかしWindows RT 8.1では、いったん業務用途に大きくフォーカスを移すことで、iOSやAndroid、そしてBay Trailタブレットでもカバーできない、ニッチな領域を狙っていく作戦になるものと思われます。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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